新規開拓のどこを見ればよいか 中国工場の品質改善(その65)

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 前回のその64に続いて解説します。

【第4章】中国新規取引先選定のポイント

◆ 新規開拓・工場のどこを見ればよいか

 ここでは新規開拓で工場を訪問した時に、どこを見ればよいのかを書きたいと思います。

  1. 工場基本管理 → 5S、識別管理、不良品の処置
  2. 部品や製品の扱い → 部品や製品をぞんざいに乱暴に扱っている工場は危ない
  3. 現場の管理状況(生産するための管理) → 作業標準書・手順書、設備条件表
  4. 検査が機能しているか(生産されたものの管理) → 不良品を検出できるか、測定器・検査機器の校正管理
  5. 工場の雰囲気 → 作業者の態度(きびきび度、おしゃべり)、時間に対する感覚

1、工場基本管理

  •  5S
  •  識別管理
  •  不良品の処置

 工場基本管理とは、工場がやるべき最低限の管理と考えてください。(1)~(3)ができているかチェックします。詳細については、この連載で後述します。

2、部品や製品の扱い

 工程の部品や製品のハンドリングが雑になっている、倉庫で部品や製品が入った箱を投げるなどしていてはダメです。筆者の知人で中国調達の専門家である岩城真氏は「新規取引先のレベルを判断するには、倉庫作業者のレベルを見るのが一番良い」と言っています。倉庫作業者は、工場の中でも末端の作業者なので、そこまで教育や意識が行き届いているかどうかで、その工場のレベルが分かるとしています。ですから、倉庫作業者が部品や製品を丁寧に扱っているのか、それとも粗末に扱っているのかを見るのです。

3、現場の管理状況

(1)作業標準書の有無と更新の状況

 生産現場の管理状況を確認する訳ですが、現場で絶対に必要なのが作業標準書(作業指導書・作業手順書)です。中国企業でも現場に作業標準書はあると思いますが、もし、これがないようでしたら取引先としては、不適当と判断します。作業標準書がないということは、作業が標準化されていないということで、バラツキの大きな要因となります。また、作業が標準化されていなければ作業の見直しも改善もできません。

 作業標準書の内容もチェックして、作業者がそれを見れば正しい作業ができるかどうか、工程自主検査などもきちんと明記されているかなどを確認します。また、作業標準書の改訂履歴もチェックしましょう。改訂履歴がないということは、最初に作成してから一度も改善がなされていないということで、まったく進化していないことを示しています。

 同様に設備条件表も絶対に必要です。作業標準書の中に設備の設定条件を記載している場合もありますが、設備の設定条件を明記したものがないようなら、取引先として不適当と考えた方がよいでしょう。

(2)特殊工程の管理状況

 特殊工程は、プロセスの結果の良否をその製品を見ても判断できないものや、その製品を使用した後...

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 前回のその64に続いて解説します。

【第4章】中国新規取引先選定のポイント

◆ 新規開拓・工場のどこを見ればよいか

 ここでは新規開拓で工場を訪問した時に、どこを見ればよいのかを書きたいと思います。

  1. 工場基本管理 → 5S、識別管理、不良品の処置
  2. 部品や製品の扱い → 部品や製品をぞんざいに乱暴に扱っている工場は危ない
  3. 現場の管理状況(生産するための管理) → 作業標準書・手順書、設備条件表
  4. 検査が機能しているか(生産されたものの管理) → 不良品を検出できるか、測定器・検査機器の校正管理
  5. 工場の雰囲気 → 作業者の態度(きびきび度、おしゃべり)、時間に対する感覚

1、工場基本管理

  •  5S
  •  識別管理
  •  不良品の処置

 工場基本管理とは、工場がやるべき最低限の管理と考えてください。(1)~(3)ができているかチェックします。詳細については、この連載で後述します。

2、部品や製品の扱い

 工程の部品や製品のハンドリングが雑になっている、倉庫で部品や製品が入った箱を投げるなどしていてはダメです。筆者の知人で中国調達の専門家である岩城真氏は「新規取引先のレベルを判断するには、倉庫作業者のレベルを見るのが一番良い」と言っています。倉庫作業者は、工場の中でも末端の作業者なので、そこまで教育や意識が行き届いているかどうかで、その工場のレベルが分かるとしています。ですから、倉庫作業者が部品や製品を丁寧に扱っているのか、それとも粗末に扱っているのかを見るのです。

3、現場の管理状況

(1)作業標準書の有無と更新の状況

 生産現場の管理状況を確認する訳ですが、現場で絶対に必要なのが作業標準書(作業指導書・作業手順書)です。中国企業でも現場に作業標準書はあると思いますが、もし、これがないようでしたら取引先としては、不適当と判断します。作業標準書がないということは、作業が標準化されていないということで、バラツキの大きな要因となります。また、作業が標準化されていなければ作業の見直しも改善もできません。

 作業標準書の内容もチェックして、作業者がそれを見れば正しい作業ができるかどうか、工程自主検査などもきちんと明記されているかなどを確認します。また、作業標準書の改訂履歴もチェックしましょう。改訂履歴がないということは、最初に作成してから一度も改善がなされていないということで、まったく進化していないことを示しています。

 同様に設備条件表も絶対に必要です。作業標準書の中に設備の設定条件を記載している場合もありますが、設備の設定条件を明記したものがないようなら、取引先として不適当と考えた方がよいでしょう。

(2)特殊工程の管理状況

 特殊工程は、プロセスの結果の良否をその製品を見ても判断できないものや、その製品を使用した後でないと不具合の有無が判明できないものです。ですからプロセスの管理がとても重要になりますので、厳しい管理が求められます。仮にその管理が不十分であったとすれば、ものづくり全般に対する認識が甘い、不足していると考えられます。そのような企業と取引をするかどうかは、慎重に判断する必要があります。

 次回は、立派な作業指導書には要注意。から解説を続けます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

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