中国工場の実状を知る 中国工場の品質改善(その37)

更新日

投稿日

生産マネジメント

 前回のその36に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

 

【3.6 中国工場での人材マネジメント】

◆ それぞれの役割と評価

 工場従業員を区分してそれぞれについて、役割と評価を見ていきます。

(1)作業者

 実は、作業者も単純作業者とスキルを持った作業者の二つに区分して見ていくことが必要です。

① 単純作業者

 単純作業者の役割は何でしょうか。それは、ルールを守り不良品を作らないこと、不良品は取り除くことです。これをしっかりやってもらうのです。

 率直に言って単純作業者は、ある程度の入れ替りがあるという前提で考えるべきだと思います。ただし、そのような状況でも作業はきちんとやってもらうことを考えなくてはいけません。そのためにはやはりモチベーションを与えることが必要で、表彰制度を設けるなどして優秀な作業者、頑張った作業者を表彰して表彰金を与えることが方法としてあります。

② スキルを持った作業者

 スキルを持った作業者(生産に必要な難易度の高いスキルを習得した作業者)には、何としても定着してもらいたいので、そのための制度を考えます。スキルを資格認定して、それを給与に反映します。従って、これら作業者には相応の給与を払うことになります。現在の中国で、労働者を安く使うことだけを考えるのは無理です。例えば、スキルを修得した作業者にある程度の給与を払うことで、この作業者が転職してもそのスキルが使えない場合、それまでと同じ給与は取れないので、簡単には辞めなくなります。

 また、スキルを認定されることでプライドもくすぐられ、それが仕事へのモチベーションにもなります。

(2)管理者

 現場を管理する班長や組長は、自分が作業者を束ね生産品の品質や納期の責任を負っているということにやりがいを感じています。もちろん作業者よりも高い給与もモチベーションになっています。

 科長になると、そのやりがいやモチベーションは、班長や組長のそれに加えて自分の成長(スキル、出世など)も大事な要素になります。一方で、成果を評価することも大事なことです。科長クラスであれば、成果を出すことが求められますので、成果が出ていない場合は、マイナスの評価とします。

(3)幹部(部長クラス)

 このクラスになると、給与の他に与えられている権限の有無が関係してきます。中国人は権限や裁量権を持ちたがります。日系企業の場合、名ばかりの役職で権限を与えていないケースが多くあります。また、権限を与えない代わりに責任もあいまいにしています。

 中国人...

生産マネジメント

 前回のその36に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

 

【3.6 中国工場での人材マネジメント】

◆ それぞれの役割と評価

 工場従業員を区分してそれぞれについて、役割と評価を見ていきます。

(1)作業者

 実は、作業者も単純作業者とスキルを持った作業者の二つに区分して見ていくことが必要です。

① 単純作業者

 単純作業者の役割は何でしょうか。それは、ルールを守り不良品を作らないこと、不良品は取り除くことです。これをしっかりやってもらうのです。

 率直に言って単純作業者は、ある程度の入れ替りがあるという前提で考えるべきだと思います。ただし、そのような状況でも作業はきちんとやってもらうことを考えなくてはいけません。そのためにはやはりモチベーションを与えることが必要で、表彰制度を設けるなどして優秀な作業者、頑張った作業者を表彰して表彰金を与えることが方法としてあります。

② スキルを持った作業者

 スキルを持った作業者(生産に必要な難易度の高いスキルを習得した作業者)には、何としても定着してもらいたいので、そのための制度を考えます。スキルを資格認定して、それを給与に反映します。従って、これら作業者には相応の給与を払うことになります。現在の中国で、労働者を安く使うことだけを考えるのは無理です。例えば、スキルを修得した作業者にある程度の給与を払うことで、この作業者が転職してもそのスキルが使えない場合、それまでと同じ給与は取れないので、簡単には辞めなくなります。

 また、スキルを認定されることでプライドもくすぐられ、それが仕事へのモチベーションにもなります。

(2)管理者

 現場を管理する班長や組長は、自分が作業者を束ね生産品の品質や納期の責任を負っているということにやりがいを感じています。もちろん作業者よりも高い給与もモチベーションになっています。

 科長になると、そのやりがいやモチベーションは、班長や組長のそれに加えて自分の成長(スキル、出世など)も大事な要素になります。一方で、成果を評価することも大事なことです。科長クラスであれば、成果を出すことが求められますので、成果が出ていない場合は、マイナスの評価とします。

(3)幹部(部長クラス)

 このクラスになると、給与の他に与えられている権限の有無が関係してきます。中国人は権限や裁量権を持ちたがります。日系企業の場合、名ばかりの役職で権限を与えていないケースが多くあります。また、権限を与えない代わりに責任もあいまいにしています。

 中国人は、名ばかりの部長では納得しませんので、ある程度の権限を与えてください。その代わりに結果を出すことを求めます。成果を出さないとその地位は安泰ではないということです。

 部長クラスの人たちは、給与はそれなりにもらっています。ですから本当に実力のある人でないと他に転職して同じ額の給与を取るのは難しいと言えるので、転職率はそれほど高くありません。

 次回は、定着している人を有効活用する。から解説を続けます。

【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
イノベーション成功のプログラム IPI詳細解説(その1)

 筆者が提唱しているIPI(Integrated Process Innovation)(統合型プロセス革新法)は、次の6ステップから成り立っています。 ...

 筆者が提唱しているIPI(Integrated Process Innovation)(統合型プロセス革新法)は、次の6ステップから成り立っています。 ...


在庫を利用して購入コストを下げるには(その3)

 前回のその2に続いて解説します。   1.負荷調整によってスループットを稼ぐ    スループットを稼ぐには、下図のように生産...

 前回のその2に続いて解説します。   1.負荷調整によってスループットを稼ぐ    スループットを稼ぐには、下図のように生産...


小さなことでも徹底的に形にしてみる 現場改善:発想の転換(その11)

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
現場主義の一例 技術者の対応

 現場主義に関するお話、今回は技術者(技術・品質等)の対応の事例を紹介します。  現場で技術的な問題や品質問題が発見され、技術者(技術、品質)に連絡が入...

 現場主義に関するお話、今回は技術者(技術・品質等)の対応の事例を紹介します。  現場で技術的な問題や品質問題が発見され、技術者(技術、品質)に連絡が入...


赴任者のために 中国工場管理の基本事例(その4)

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その2) ◆ 赴任直後にすべきこと  企業がグローバル化して海外展開を加速させている中で海外拠点...

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その2) ◆ 赴任直後にすべきこと  企業がグローバル化して海外展開を加速させている中で海外拠点...


現場情報自動収集により現場マネジメントの壁を崩すとは

        今回は、中小製造業を対象として、現場マネジメントの壁と現場情報自動収集の意義について解説しま...

        今回は、中小製造業を対象として、現場マネジメントの壁と現場情報自動収集の意義について解説しま...