新規開拓のどこを見ればよいか 中国工場の品質改善(その68)

更新日

投稿日

中国

 前回のその67に続いて解説します。

【第4章】中国新規取引先選定のポイント

◆ 契約書

1、契約書に盛り込む内容

 中国企業から材料・部品・製品を購入するまたは生産委託をする場合に「購入契約書」や「生産委託契約書」を結ぶことになります。これら契約に記載する内容としては、次のような項目があります。

・価格(支払条件を含む)
・発注から納入までの期間
・仕様(別に仕様書を取交す場合もあり)
・原材料/部品の支給有無
・製品の輸送先
・不良品が納入された場合の対応
  返品(返品費用の負担)
  手直し(手直し費用の負担)
  選別して使用(選別費用の負担)
・不良品にかかる代金の弁済
・納期遅延にかかる損害金

 契約を取り交わす際には、次の内容についても検討します。

・機密保持契約の締結(提供する設備や金型、図面に含まれるノウハウ)
・相手に対して技術供与の契約の要求
・法的トラブルの回避あるいは発生した際の解決手段
・違約金条項、競合避止条項、仕様書等の一方的変更条項など

2、契約書に対する意識

 ここでは契約に対する中国人と日本人の意識の違いを比べていきます。

(1)契約を守るという意識の欠如

 中国人は基本的に契約や約束を絶対に守るという意識は欠如していると考えてよいでしょう。出来ればやるが出来なかったら仕方ないというような感じです。守ってもらわなくては困る契約がいつの間にか努力目標になっています。

 一方で中国は欧米に近い感じで契約書ベースのドライな対応をします。何か要求をしても契約にないので対応できないなどと普通に言ってきます。言ってみれば2面性を持っていて、自分の都合の良いように捉えて使っている感覚です。

【中国取引に苦労していた日系企業からの相談と回答】

 N社は国内外でも取引先とは取引基本契約を締結しているのですが、取引開始しようとしている中国企業から「中国ではその都度個別契約をしているので、取引基本契約を締結して注文書で物品購入契約することはない」と言われました。一般的にこのようなものなのでしょうかとの相談がありました。

 これには次のように回答しました。

 N社取引予定の中国企業の回答は、的外れなものではないと思います。その根拠として、二つの事例を紹介します。筆者が以前いた会社では、部品や材料の購入先となる中国企業に対して、日本企業向けに使用していた取引基本契約書を中文訳したもので取交すようにしていました。ただし、す...

中国

 前回のその67に続いて解説します。

【第4章】中国新規取引先選定のポイント

◆ 契約書

1、契約書に盛り込む内容

 中国企業から材料・部品・製品を購入するまたは生産委託をする場合に「購入契約書」や「生産委託契約書」を結ぶことになります。これら契約に記載する内容としては、次のような項目があります。

・価格(支払条件を含む)
・発注から納入までの期間
・仕様(別に仕様書を取交す場合もあり)
・原材料/部品の支給有無
・製品の輸送先
・不良品が納入された場合の対応
  返品(返品費用の負担)
  手直し(手直し費用の負担)
  選別して使用(選別費用の負担)
・不良品にかかる代金の弁済
・納期遅延にかかる損害金

 契約を取り交わす際には、次の内容についても検討します。

・機密保持契約の締結(提供する設備や金型、図面に含まれるノウハウ)
・相手に対して技術供与の契約の要求
・法的トラブルの回避あるいは発生した際の解決手段
・違約金条項、競合避止条項、仕様書等の一方的変更条項など

2、契約書に対する意識

 ここでは契約に対する中国人と日本人の意識の違いを比べていきます。

(1)契約を守るという意識の欠如

 中国人は基本的に契約や約束を絶対に守るという意識は欠如していると考えてよいでしょう。出来ればやるが出来なかったら仕方ないというような感じです。守ってもらわなくては困る契約がいつの間にか努力目標になっています。

 一方で中国は欧米に近い感じで契約書ベースのドライな対応をします。何か要求をしても契約にないので対応できないなどと普通に言ってきます。言ってみれば2面性を持っていて、自分の都合の良いように捉えて使っている感覚です。

【中国取引に苦労していた日系企業からの相談と回答】

 N社は国内外でも取引先とは取引基本契約を締結しているのですが、取引開始しようとしている中国企業から「中国ではその都度個別契約をしているので、取引基本契約を締結して注文書で物品購入契約することはない」と言われました。一般的にこのようなものなのでしょうかとの相談がありました。

 これには次のように回答しました。

 N社取引予定の中国企業の回答は、的外れなものではないと思います。その根拠として、二つの事例を紹介します。筆者が以前いた会社では、部品や材料の購入先となる中国企業に対して、日本企業向けに使用していた取引基本契約書を中文訳したもので取交すようにしていました。ただし、すべての取引先と取り交わせたわけではありません。取引基本契約書の内容を杓子定規に解釈すると、取引先からするととても取り交わしをできる内容ではない部分があります。契約書の内容をきちんと確認した取引先ほど取り交わしに難色を示しました。そうした取引先とは取引基本契約書を取り交わすことができないまま形の上では交渉中として、購入をしていた実態がありました。

 次回も他社の事例から解説を続けます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
絶対に行ってはいけない改善 儲かるメーカー改善の急所101項(その13)

  2.モノづくり〈現場改善の基本〉 ◆ 絶対に行ってはいけない改善  今回から2章に入ります。現場改善の基本の章です。どうぞよろしく...

  2.モノづくり〈現場改善の基本〉 ◆ 絶対に行ってはいけない改善  今回から2章に入ります。現場改善の基本の章です。どうぞよろしく...


小さな改善の効果とは:改善のヒント(その13)

【改善のヒント連載目次】 1. 儲かる現場づくりとは 2. チームとして改善を進める 3. 現場から人を抜く 4. からくり改善とは 5...

【改善のヒント連載目次】 1. 儲かる現場づくりとは 2. チームとして改善を進める 3. 現場から人を抜く 4. からくり改善とは 5...


「C型PDPC」とは(5) 【快年童子の豆鉄砲】(その87)

  3.「C型PDPC」の使い方 3)各ステップの進め方:【快年童子の豆鉄砲】(その86)からのつづき   【この連載の前...

  3.「C型PDPC」の使い方 3)各ステップの進め方:【快年童子の豆鉄砲】(その86)からのつづき   【この連載の前...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その16)

    前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その15)に続けて解説します。 国内最多のものづくりに関す...

    前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その15)に続けて解説します。 国内最多のものづくりに関す...


信号を守らない-これも色管理ひとつ 中国企業の壁(その42)

        前回、色を識別表示の手段として工場内で統一して使うことが出来ていなかった中国工場を例に挙げ、色の意味の理解を深めるために信号の色の意...

        前回、色を識別表示の手段として工場内で統一して使うことが出来ていなかった中国工場を例に挙げ、色の意味の理解を深めるために信号の色の意...


金型改修の後にとるべき処置とは

        今回は、すでに量産体制に入った金型において、例えば故障や製品不良が起こった際に行う金型改修の...

        今回は、すでに量産体制に入った金型において、例えば故障や製品不良が起こった際に行う金型改修の...