中国工場の実状を知る、経営層について 中国工場の品質改善(その11)

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中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

【経営層について】

 前回のその10に続いて解説します。

(1)中国工場の良し悪しはトップの方針・考え方で決まる

 中国の工場運営において、そのトップの方針や考え方は非常に重要です。日本の中小企業を見てみると、社長の方針や考え方がそのまま会社の方針や考え方となっています。実は中国の工場というのは、日本の中小企業の形態と類似している点が非常に多く、大手企業の中国工場でも、その点は同じと言えます。

 中国工場の方針や考え方は、トップのそれと一致するのです。中国工場でトップというのは、総経理や工場長と言われる人たちが相当します。中国工場の総経理が品質重視、品質第一の姿勢を打ち出せば、従業員もそれに沿った行動をするようになってきますが、別の方針、例えば、利益を重視したとすれば、従業員もそれに沿った行動をするでしょう。

 特にどちらかと言えばボトムアップに馴染んでいる日本人とは違って、中国人はトップダウンに馴染んでいますからトップの言うことは、そのまま受け入れることになります。

 どこの会社や工場にも、その会社や工場が持っている文化や風習、雰囲気というものが存在しています。実は、中国工場運営においては、その工場の持っている文化や雰囲気が大切になります。それは、後から入った(入社した)従業員は、その会社や工場の持っている文化や雰囲気に倣ってくるからです。

 例えば、ある工場では規律を守ることに対して全体的に緩い雰囲気があったとします。朝、始業のベルが鳴ったにも関わらず作業者がまだ更衣室にいたり通路を歩いていたりしています。入社した作業者は、ちゃんと仕事をしなくてはいけないと思って入ってきていますが、前からいる作業者がこうした行動をしていると、「この工場はそれでいいんだ」と思い段々と自分もそうした行動、つまり始業のベルが鳴ってもすぐに作業を開始しない、通路を歩いている、といったような行動を取るようになるのです。

 逆に、別の工場では始業のベルが鳴ると作業者全員が作業を開始している。このような雰囲気を持つ工場であれば、後から入った作業者もこうした規律を守ることが当たり前と考え、それに倣うようになります。

 こうした会社や工場が持つ文化や雰囲気というのは、トップ(総経理、工場長)の考え方や想いが反映されると考えてください。 トップの想いを従業員に浸透させるのは、最初の刷り込みが大事なのです。ですから、本当は工場を立ち上げたときに、目指すべき方針を示し、それをトップの想いとして伝えることがとても大事になるのです。

 逆の言い方をすると、一度出来上がってしまった文化や雰囲気を途中で変えるのは非常に難しいと言わざるを得ません。それでも変えなければならない場合、トップが交代した時が一つのチャンスでしょう。ただし、繰り返しますが簡単なことではありません。 トップの本気度、覚悟、そしてパワーが必要となります。

(2)中国企業

 中国企業の場合、当然のことですが中国人が経営者(トップ)です。その中国人トップが日系企業との取引を増やして会社を大きくしたいと考えれば、日系企業の要求に何とか付いて行こうと頑張ります。仮に、その時点であまり品質がよくなかったとしても、1...

 

中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

【経営層について】

 前回のその10に続いて解説します。

(1)中国工場の良し悪しはトップの方針・考え方で決まる

 中国の工場運営において、そのトップの方針や考え方は非常に重要です。日本の中小企業を見てみると、社長の方針や考え方がそのまま会社の方針や考え方となっています。実は中国の工場というのは、日本の中小企業の形態と類似している点が非常に多く、大手企業の中国工場でも、その点は同じと言えます。

 中国工場の方針や考え方は、トップのそれと一致するのです。中国工場でトップというのは、総経理や工場長と言われる人たちが相当します。中国工場の総経理が品質重視、品質第一の姿勢を打ち出せば、従業員もそれに沿った行動をするようになってきますが、別の方針、例えば、利益を重視したとすれば、従業員もそれに沿った行動をするでしょう。

 特にどちらかと言えばボトムアップに馴染んでいる日本人とは違って、中国人はトップダウンに馴染んでいますからトップの言うことは、そのまま受け入れることになります。

 どこの会社や工場にも、その会社や工場が持っている文化や風習、雰囲気というものが存在しています。実は、中国工場運営においては、その工場の持っている文化や雰囲気が大切になります。それは、後から入った(入社した)従業員は、その会社や工場の持っている文化や雰囲気に倣ってくるからです。

 例えば、ある工場では規律を守ることに対して全体的に緩い雰囲気があったとします。朝、始業のベルが鳴ったにも関わらず作業者がまだ更衣室にいたり通路を歩いていたりしています。入社した作業者は、ちゃんと仕事をしなくてはいけないと思って入ってきていますが、前からいる作業者がこうした行動をしていると、「この工場はそれでいいんだ」と思い段々と自分もそうした行動、つまり始業のベルが鳴ってもすぐに作業を開始しない、通路を歩いている、といったような行動を取るようになるのです。

 逆に、別の工場では始業のベルが鳴ると作業者全員が作業を開始している。このような雰囲気を持つ工場であれば、後から入った作業者もこうした規律を守ることが当たり前と考え、それに倣うようになります。

 こうした会社や工場が持つ文化や雰囲気というのは、トップ(総経理、工場長)の考え方や想いが反映されると考えてください。 トップの想いを従業員に浸透させるのは、最初の刷り込みが大事なのです。ですから、本当は工場を立ち上げたときに、目指すべき方針を示し、それをトップの想いとして伝えることがとても大事になるのです。

 逆の言い方をすると、一度出来上がってしまった文化や雰囲気を途中で変えるのは非常に難しいと言わざるを得ません。それでも変えなければならない場合、トップが交代した時が一つのチャンスでしょう。ただし、繰り返しますが簡単なことではありません。 トップの本気度、覚悟、そしてパワーが必要となります。

(2)中国企業

 中国企業の場合、当然のことですが中国人が経営者(トップ)です。その中国人トップが日系企業との取引を増やして会社を大きくしたいと考えれば、日系企業の要求に何とか付いて行こうと頑張ります。仮に、その時点であまり品質がよくなかったとしても、1年2年で急速に品質がよくなることが期待できます。数は多くありませんが、実際にそのような中国企業を見ました。

 逆に、「今、儲かりたい」というように目先の利益にこだわる中国人経営者が多いのも事実です。 トップが目先の利益にこだわれば、やはり工場全体がそのような意識で動くことになり、品質改善に前向きではなくなります。

 新規取引先の選定の章でも述べますが、工場のトップがどのような考え方を持って、どのような方針を出しているかは、取引先選定においてとても重要な要素となります。

 次回は、(3) 日系中国工場から解説を続けます。

【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行   筆者のご承諾により、抜粋を連載

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

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