中国工場の実状を知る 中国工場の品質改善(その42)

更新日

投稿日

中国

 前回のその41に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

【3.10 品質課題解決の順序】

(1)中国工場での品質改善の順序

 品質改善を進めるときに多くの方は「工程の作り込みで不良の発生をなくすことをやる」といいます。間違ってはいないのですが中国工場の場合、必ずしもそうではないと考えています。工場の品質改善は、次の二つの観点から考えることができます。

  • ① 不良の流出を止める
  • ② 不良の発生をなくす

① 不良の流出を止める

 これは工場で発生させてしまった不良品を工場で検出して止め、顧客には渡さないということです。対顧客という観点では非常に重要かつ有効な手段です。こちらでいくら不良を作ってしまったとしても、顧客に出荷しなければクレームになることはありません。顧客からすれば表面上は優良な取引先ということになります。正直、顧客の本音部分として購入先の工場でいくら不良が出ようが、自分のところに良品だけ納入してくれればそれでよしという思いがあります。

 ただし、それでは工場は不良品であふれることになります。目の前で不良品が山積みとなれば、それを減らそうと考えるのが自然です。また不良を流出させてしまっていると、工場には不良品が溜まらないので工場の人間が不良を作っていることに気が付かないことがあります。これこそが問題なのです。

② 不良の発生をなくす

 これは品質改善の本質的な部分であり、最終的に取り組まなくてはなりません。不良の発生自体を減らせれば流出減に繋がります。

 このどちらを優先するかは、工場のレベルによって決まるものと考えています。

 顧客クレームが頻発しているような工場では、まず不良の流出を止めることを行わなければなりません。その理由は中国系、日系を問わず多くの中国工場の実状は発生させてしまった不良品を工場で検出できず、顧客に渡して迷惑をかけてしまっているので、その状態から抜け出すことが最優先事項となるからです。時間的な問題もあります。不良の発生をなくすことがすぐ対処できればよいですが、時間がかかるとすれば対策実施までの間、全数?検査で不良品を検出することが必要となるからです。

 また、顧客クレームが頻発していては、その対応に追われ本来やるべき業務に手が付かない状態になります。顧客クレームが起きるということは、工...

中国

 前回のその41に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

【3.10 品質課題解決の順序】

(1)中国工場での品質改善の順序

 品質改善を進めるときに多くの方は「工程の作り込みで不良の発生をなくすことをやる」といいます。間違ってはいないのですが中国工場の場合、必ずしもそうではないと考えています。工場の品質改善は、次の二つの観点から考えることができます。

  • ① 不良の流出を止める
  • ② 不良の発生をなくす

① 不良の流出を止める

 これは工場で発生させてしまった不良品を工場で検出して止め、顧客には渡さないということです。対顧客という観点では非常に重要かつ有効な手段です。こちらでいくら不良を作ってしまったとしても、顧客に出荷しなければクレームになることはありません。顧客からすれば表面上は優良な取引先ということになります。正直、顧客の本音部分として購入先の工場でいくら不良が出ようが、自分のところに良品だけ納入してくれればそれでよしという思いがあります。

 ただし、それでは工場は不良品であふれることになります。目の前で不良品が山積みとなれば、それを減らそうと考えるのが自然です。また不良を流出させてしまっていると、工場には不良品が溜まらないので工場の人間が不良を作っていることに気が付かないことがあります。これこそが問題なのです。

② 不良の発生をなくす

 これは品質改善の本質的な部分であり、最終的に取り組まなくてはなりません。不良の発生自体を減らせれば流出減に繋がります。

 このどちらを優先するかは、工場のレベルによって決まるものと考えています。

 顧客クレームが頻発しているような工場では、まず不良の流出を止めることを行わなければなりません。その理由は中国系、日系を問わず多くの中国工場の実状は発生させてしまった不良品を工場で検出できず、顧客に渡して迷惑をかけてしまっているので、その状態から抜け出すことが最優先事項となるからです。時間的な問題もあります。不良の発生をなくすことがすぐ対処できればよいですが、時間がかかるとすれば対策実施までの間、全数?検査で不良品を検出することが必要となるからです。

 また、顧客クレームが頻発していては、その対応に追われ本来やるべき業務に手が付かない状態になります。顧客クレームが起きるということは、工場で不良が発生しそれを流出させたということです。まずは不良の流出を止めて、顧客の信頼を取り戻し以降は不良発生をなくすことに取組む事が正しい順序であるといえます。

 顧客クレームが少ない工場では、工程改善などで不良発生をさらに減らすとともに、生産性向上などの課題に取り組んでいけばよいのです。

 次回は、(2) どの不良から手をつけるか、から解説します。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
見える化の意味 儲かるメーカー改善の急所101項(その39)

3.仕組みを改善する基本 ◆ 見える化の意味  2020年、新型コロナウィルス感染拡大で多くの企業の方々がとても大変な思いをされていると思います。...

3.仕組みを改善する基本 ◆ 見える化の意味  2020年、新型コロナウィルス感染拡大で多くの企業の方々がとても大変な思いをされていると思います。...


習熟曲線効果からみるコストダウンの着眼点(その1)

  【習熟曲線効果からみるコストダウンの着眼点 連載記事】 1.習熟曲線効果は効果的なコストダウンツールか 2.習熟曲線効果とコス...

  【習熟曲線効果からみるコストダウンの着眼点 連載記事】 1.習熟曲線効果は効果的なコストダウンツールか 2.習熟曲線効果とコス...


P/L再生(収益性向上)の具体的手法 (その1) スループットバランス分析とは

 金融関係者や会計士が主体で行われる企業再生では、B/S面でのデューデリジェンスをベースにした資産や債務の処理が優先されることが多いようです。B/S面での...

 金融関係者や会計士が主体で行われる企業再生では、B/S面でのデューデリジェンスをベースにした資産や債務の処理が優先されることが多いようです。B/S面での...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
赴任者のために 中国工場管理の基本事例(その5)

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その3)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その2)に続いて解説します。 ◆...

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その3)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その2)に続いて解説します。 ◆...


生産管理ソフトの選択とは

        今回は、次の事例から、自社の生産システムにあった生産管理ソフトの選択をどうすべきかを解説します。 1. 想定事例  電気...

        今回は、次の事例から、自社の生産システムにあった生産管理ソフトの選択をどうすべきかを解説します。 1. 想定事例  電気...


作業者をどう捉えるか

◆中国人作業者はまじめ、それともいい加減  今回は、中国人作業者をどう捉えるかを考えてみることにします。これに関して以前相談をいただいたのでアドバイ...

◆中国人作業者はまじめ、それともいい加減  今回は、中国人作業者をどう捉えるかを考えてみることにします。これに関して以前相談をいただいたのでアドバイ...