中国工場の実状を知る、日本人駐在員について 中国工場の品質改善(その16)

更新日

投稿日

 

中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

 

【日本人駐在員について】

 前回のその15に続いて解説します。

(3)部長・科長として駐在

 中国工場のこれらの役職には、日本ではまだ管理職ではない係長や主任の人、場合によっては、まだそうした肩書のない人が就くことが少なくありません。当然のことながら日本ではマネジメント経験はありません。しかし、中国工場では、数十人、時には数百人の部下をいきなり持ち、マネジメントすることになります。これは言う程簡単なことではありません。

 また、これらの人たちは自身の専門分野の業務・部門を担当する訳ですが、海外工場においては、場合により日本では経験したことのない業務・部門も任されることがあります。それぞれの分野ごとに駐在員を送り込める企業はよいですが、そうでない企業においては、海外工場に行ったら何でもやらなくてはならない傾向があります。

◆ 中国工場で日本人育成の是非

 筆者が中国駐在中に日系の取引先で、日本人駐在員が1年で帰任したことがありました。

 どうも本社と工場とで駐在員に対するスタンスが異なることが、原因だったようです。工場側は即戦力となる人材の駐在を求めていたが、本社側はその意向をあまり理解しておらず、工場で勉強して力が付けばよいと考えていたのでした。ですからその人に即戦力としての力はなく、結局、工場に育成するだけの余裕がなかったこともあり、総経理の判断で日本に返すことになったのです。

 駐在員を選ぶ本社は、どのような人材を送り込むのかをよく検討すべきです。以前と違い中国工場で日本人駐在を育成できる余裕のある工場は少ないのではないでしょうか。力のない日本人社員を中国に送り込んで力を付けさせるのではなく、力のある社員に中国で経験を積ませ更に力を付けてもらうように考えるべきだと思います。

 中国駐在には技術的な力量も当然必要ですが、管理職としての研修も行ってから送り込むべきです。なぜなら、日本では平社員でも中国工場に行けば課長など...

 

中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

 

【日本人駐在員について】

 前回のその15に続いて解説します。

(3)部長・科長として駐在

 中国工場のこれらの役職には、日本ではまだ管理職ではない係長や主任の人、場合によっては、まだそうした肩書のない人が就くことが少なくありません。当然のことながら日本ではマネジメント経験はありません。しかし、中国工場では、数十人、時には数百人の部下をいきなり持ち、マネジメントすることになります。これは言う程簡単なことではありません。

 また、これらの人たちは自身の専門分野の業務・部門を担当する訳ですが、海外工場においては、場合により日本では経験したことのない業務・部門も任されることがあります。それぞれの分野ごとに駐在員を送り込める企業はよいですが、そうでない企業においては、海外工場に行ったら何でもやらなくてはならない傾向があります。

◆ 中国工場で日本人育成の是非

 筆者が中国駐在中に日系の取引先で、日本人駐在員が1年で帰任したことがありました。

 どうも本社と工場とで駐在員に対するスタンスが異なることが、原因だったようです。工場側は即戦力となる人材の駐在を求めていたが、本社側はその意向をあまり理解しておらず、工場で勉強して力が付けばよいと考えていたのでした。ですからその人に即戦力としての力はなく、結局、工場に育成するだけの余裕がなかったこともあり、総経理の判断で日本に返すことになったのです。

 駐在員を選ぶ本社は、どのような人材を送り込むのかをよく検討すべきです。以前と違い中国工場で日本人駐在を育成できる余裕のある工場は少ないのではないでしょうか。力のない日本人社員を中国に送り込んで力を付けさせるのではなく、力のある社員に中国で経験を積ませ更に力を付けてもらうように考えるべきだと思います。

 中国駐在には技術的な力量も当然必要ですが、管理職としての研修も行ってから送り込むべきです。なぜなら、日本では平社員でも中国工場に行けば課長などになるヶ-スが多くあり、突然大勢の部下を持つことになるからです。即戦力を期待するなら、管理職としての役割も事前研修で身に付けさせた方がよいでしょう。知っているのと知らないのとでは大違いです。

 次回は、(4)日本人駐在員は常に見られている、から解説を続けます。

【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行   筆者のご承諾により、抜粋を連載

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術士第二次試験対策:予想問題を考える

1. 技術士第二次試験対策:予想問題について 【特集】技術士第二次試験対策:技術士第二次試験に関する記事まとめページはこちら!口頭試験や論文対策などのポ...

1. 技術士第二次試験対策:予想問題について 【特集】技術士第二次試験対策:技術士第二次試験に関する記事まとめページはこちら!口頭試験や論文対策などのポ...


中国工場の実状を知る 中国工場の品質改善(その7)

  【第2章 中国工場の実状を知る】   【作業者について】  中国工場で働いている作業者とは、いったいどんな人だちなので...

  【第2章 中国工場の実状を知る】   【作業者について】  中国工場で働いている作業者とは、いったいどんな人だちなので...


技術企業の高収益化: 目先の課題に対応する愚かさ

◆ 低収益経営者が目先の課題に対応するのをやめた例  「勝手に何をやってるんだ!!」  A社では社長のこんな言葉を恐れて社員が萎縮していました。私...

◆ 低収益経営者が目先の課題に対応するのをやめた例  「勝手に何をやってるんだ!!」  A社では社長のこんな言葉を恐れて社員が萎縮していました。私...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
人的資源マネジメント:実行力の鍛え方 (その4)

  6. やった後は習慣化    どうですか? 何だか取りかかれそうな気がしてきませんか?明日からやろうではダメですよ。今からは...

  6. やった後は習慣化    どうですか? 何だか取りかかれそうな気がしてきませんか?明日からやろうではダメですよ。今からは...


インドネシアの工場での人財育成の事例

 シンガポールの工場のクリーン化指導の時に、インドネシアのバタム島の工場にも寄ることにしていました。ここにも日系企業が集まる工業団地があります。今回はこの...

 シンガポールの工場のクリーン化指導の時に、インドネシアのバタム島の工場にも寄ることにしていました。ここにも日系企業が集まる工業団地があります。今回はこの...


人的資源マネジメント:建設的、積極的な話の聞き方とは

 誰かが嬉しそうに話をしてきたとき、あなたはどのように反応していますか?人が自分に起きた良い出来事をあなたに伝えるときのあなたの姿勢によって、その関係を深...

 誰かが嬉しそうに話をしてきたとき、あなたはどのように反応していますか?人が自分に起きた良い出来事をあなたに伝えるときのあなたの姿勢によって、その関係を深...