中国工場の実状を知る、日本人駐在員について 中国工場の品質改善(その18)

更新日

投稿日

 

中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

 

【機械・設備について】

 前回のその17に続いて解説します。

 3Mの二つ目は、設備・機械です。失敗事例で紹介したように日本と同じ設備を持っていっても同じ品質のものが作れるとは限りません。どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。その理由としては、同じ設備を持ち込んでいても設備のオペレーションノウハウを持ち込めていない、落し込めていないからです。中国工場の設備・機械に関する典型的な問題点は、次のようなものです。では、オペレーションノウハウとはいったい何でしょうか?

 【問題点】  
  ・オペレーションノウハウが不十分。
    機械の微調整、消耗品や摩耗品の管理、メンテナンス管理。

(1)機械の微調整

 当然のことながら手順書などには、機械の条件設定や調整の方法が書かれていますが、手順書に書くことが出来ない「カンとコツ」の世界があります。いわゆる暗黙知、職人技などと言われる部分です。この部分の落し込みが不十分で問題が発生しているのです。

(2)消耗品や摩耗品の管理

 筆者の中国駐在員時代の仕事は、購入部材の品質管理責任者として購入部材の品質改善を進めることでした。仕入先で発生した不具合の原因を調査した報告書を読むと、消耗品や摩耗品の管理が不十分であったことによるものが多くありました。特に摩耗品の管理が不十分で不良を発生させているケースは多かったと記憶しています。

 日系中国工場でもこの管理が不十分で不良を発生させているケースは少なからずありました。日本工場の生産ではしっかり管理できている会社でも中国工場では、管理が不十分になっているのです。摩耗品管理による不良品では、発生と流出のそれぞれに原因があります。

① 発生原因

 摩耗品を生産に使っている場合、通常は生産数量を決めて、それに達したら摩耗品を交換します。生産数量を設定するのが難しい場合は、生産した製品の状態を確認して、摩耗品を交換するかどうかを判断します。中国工場の場合、設定した生産数量が守られていないケースがあります。規定の生産数量になっても製品に問題がない、摩耗品の摩耗状態から見てまだ生産できると判断してしまうのです。生産数量を設定して交換するケースでは、当然のことながら製品に影響が出る前であり、摩耗品もまだ使える状態のはずです。その時点で交換するからこそ摩耗の影響による不良品の発生を防げるわけです。

 ところが中国の人たちは、問題が発生していないからまだ使えると考えてしまうのです。交換する生産数量を決めたのですから、それに達したらある意味機械的に交換しれくれればよいのですが、余計な判断を加えてしまうのです。その結果、摩耗によって製品に影響が出るまで、不良品になるまで生産を続けてしまうのです。

② 流出原因

 前述のように不良品になるまで生産を続けてしまいますが、検査をしていますので、それに気が付かずに不良品を流出させてしまうことはありません。不良品が出れば摩耗品を交換しなくてはいけないので、摩耗によって不良品が発生したことには気が付いています。では何が悪いのでしょうか。それは、不良品が発生した範囲の特定が甘いのです。摩耗による不良品の発生があった場合、どの時点から不良になったのかを特定し、その時点から生産したものは保留しなくてはいけません。しかし、この、どの時点から不良になったかの特定は結構厄介です。...

 

中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

 

【機械・設備について】

 前回のその17に続いて解説します。

 3Mの二つ目は、設備・機械です。失敗事例で紹介したように日本と同じ設備を持っていっても同じ品質のものが作れるとは限りません。どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。その理由としては、同じ設備を持ち込んでいても設備のオペレーションノウハウを持ち込めていない、落し込めていないからです。中国工場の設備・機械に関する典型的な問題点は、次のようなものです。では、オペレーションノウハウとはいったい何でしょうか?

 【問題点】  
  ・オペレーションノウハウが不十分。
    機械の微調整、消耗品や摩耗品の管理、メンテナンス管理。

(1)機械の微調整

 当然のことながら手順書などには、機械の条件設定や調整の方法が書かれていますが、手順書に書くことが出来ない「カンとコツ」の世界があります。いわゆる暗黙知、職人技などと言われる部分です。この部分の落し込みが不十分で問題が発生しているのです。

(2)消耗品や摩耗品の管理

 筆者の中国駐在員時代の仕事は、購入部材の品質管理責任者として購入部材の品質改善を進めることでした。仕入先で発生した不具合の原因を調査した報告書を読むと、消耗品や摩耗品の管理が不十分であったことによるものが多くありました。特に摩耗品の管理が不十分で不良を発生させているケースは多かったと記憶しています。

 日系中国工場でもこの管理が不十分で不良を発生させているケースは少なからずありました。日本工場の生産ではしっかり管理できている会社でも中国工場では、管理が不十分になっているのです。摩耗品管理による不良品では、発生と流出のそれぞれに原因があります。

① 発生原因

 摩耗品を生産に使っている場合、通常は生産数量を決めて、それに達したら摩耗品を交換します。生産数量を設定するのが難しい場合は、生産した製品の状態を確認して、摩耗品を交換するかどうかを判断します。中国工場の場合、設定した生産数量が守られていないケースがあります。規定の生産数量になっても製品に問題がない、摩耗品の摩耗状態から見てまだ生産できると判断してしまうのです。生産数量を設定して交換するケースでは、当然のことながら製品に影響が出る前であり、摩耗品もまだ使える状態のはずです。その時点で交換するからこそ摩耗の影響による不良品の発生を防げるわけです。

 ところが中国の人たちは、問題が発生していないからまだ使えると考えてしまうのです。交換する生産数量を決めたのですから、それに達したらある意味機械的に交換しれくれればよいのですが、余計な判断を加えてしまうのです。その結果、摩耗によって製品に影響が出るまで、不良品になるまで生産を続けてしまうのです。

② 流出原因

 前述のように不良品になるまで生産を続けてしまいますが、検査をしていますので、それに気が付かずに不良品を流出させてしまうことはありません。不良品が出れば摩耗品を交換しなくてはいけないので、摩耗によって不良品が発生したことには気が付いています。では何が悪いのでしょうか。それは、不良品が発生した範囲の特定が甘いのです。摩耗による不良品の発生があった場合、どの時点から不良になったのかを特定し、その時点から生産したものは保留しなくてはいけません。しかし、この、どの時点から不良になったかの特定は結構厄介です。なぜなら、それ以降の生産品すべてが不良品になるとは限らないからです。特に不良が出始める初期段階では、そうした傾向にあります。特定した範囲外に不良品があり、それが顧客に行ってしまいクレームになっているのです。

 ですから、不良品になる前に摩耗品は交換することが大事なのです。原因となった管理については、当然生産を移管した際に導入しているのですが、その理解が十分ではないために起きています。日本人は指導したことで安心して、このような細かい部分まで常に見ることはありません。顧客からクレームが来て初めて気が付くのです。

 次回は、(3)メンテナンス管理から、解説を続けます。

【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
請負費用の工場間比較

 同じような製品を作り、同じような作業を請負させている工場が複数 ある場合(セメント、紙業、建設資材などの複数工場持つ専業メーカー が該当すると思いま...

 同じような製品を作り、同じような作業を請負させている工場が複数 ある場合(セメント、紙業、建設資材などの複数工場持つ専業メーカー が該当すると思いま...


製造作業の見える化 儲かるメーカー改善の急所101項(その40)

3.仕組みを改善する基本 ◆ 製造作業の見える化  私は2020年、新型コロナウィルス感染拡大対応でずっと家にいます。そこで久しぶりに自分の部屋の...

3.仕組みを改善する基本 ◆ 製造作業の見える化  私は2020年、新型コロナウィルス感染拡大対応でずっと家にいます。そこで久しぶりに自分の部屋の...


生産性と効率の違い、個人の仕事効率と会社の生産性との間のギャップ

  日本では「生産性」向上の話で持ちきりです。しかし、今行われている議論はそのほとんどがイメージ先行で、実際の取り組みに繋がらず効果を出す...

  日本では「生産性」向上の話で持ちきりです。しかし、今行われている議論はそのほとんどがイメージ先行で、実際の取り組みに繋がらず効果を出す...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
中国人と日本人の感覚の違い、外観に対する認識 中国企業の壁(その32)

       外観検査と寸法・特性検査との違いは、寸法・特性検査では図面や検査基準書に従って合否を判断しますが、外観検査の場合、検査員が自分の判断基...

       外観検査と寸法・特性検査との違いは、寸法・特性検査では図面や検査基準書に従って合否を判断しますが、外観検査の場合、検査員が自分の判断基...


金型メーカーの診断事例:原価管理・会社全般

 筆者が金型メーカー向けに行っている企業診断の内容について解説します。この診断は金型メーカーで行われる作業工程の流れに合わせ、項目を分けて行っています...

 筆者が金型メーカー向けに行っている企業診断の内容について解説します。この診断は金型メーカーで行われる作業工程の流れに合わせ、項目を分けて行っています...


マシニング加工の人的ミスのあるあると対策の考え方

        今回は、マシニング加工の人的ミスと、その対策の考え方について解説します。まずマシニング加工の人的ミスですが、ざっと挙げてみると次のよ...

        今回は、マシニング加工の人的ミスと、その対策の考え方について解説します。まずマシニング加工の人的ミスですが、ざっと挙げてみると次のよ...