中国企業改善指導のポイント 中国工場の品質改善(その76)

更新日

投稿日

中国

 前回のその75に続いて解説します。

【第5章】中国企業改善指導のポイント

1、取引先に動いてもらうには

 (1)(2)は、その75に記載しています。

(3) キーマンを見つける

 品質改善を進めるには、こちらから様々な要求や依頼をすることになります。こうした要求や依頼をする時に先方の誰に対して言うのかが重要となります。先方の中で力のある人、権限のある人と話をする、交渉を行う必要があります。要はキーマンを押えることです。

 実際に対策をするのは現場のスタッフであっても、打合せは現場の責任者クラスを交えて行います。その責任者から現場スタッフに実施の指示をさせることがポイントです。

(4) 信頼関係を築く

 中国人は、個人的な関係を大事にする人たちですから、信頼関係を築くことを意識してください。購入量が少なくても継続して取り引きしているのであれば、なおさらこれが大事になります。先方と一緒に食事をしたりお酒を飲んだりすることも信頼関係を築くために必要なことですが、それだけではありません。やはり、仕事を通して信頼関係を築くことが大事です。

 【日本企業側も即断即決できること】

 先方のキーマンを押えるといいましたが、逆にいえば、こちらも即断即決できる人でないとダメだということです。先方が示した回答内容でよし良しとするのかしないのか、その場で判断できる人であることが必要です。自分では判断できないから日本本社に持ち帰って検討するというのでは、相手からすれば「この人と話しても意味がない」となってしまい信頼関係は築けません。

 【こちら側の真剣さを行動で示す】

 「我社は、御社から本当にいいものを買いたいんだ」という思いを伝えることです。例えば、機械部品からプラントまで中国調達をしている岩城氏は、仕様書だけでなく指導書というものを中国企業の工場に送るようにしました。これは、図面に重要ポイントを記入したもので、岩城氏は中国語は片言しか話せないのですが、必死に辞書で調べたつたない中国語で書いています。何とか作る時に注意してもらいたいポイントを伝えようとしていますが、こうした必死さは相手に伝わります。

 【取り引きが双方にとってメリットになるという認識を持たせる】

 日系企業側のメリットは、何といってもコストでしょう。一方で中国企業側のメソッドには、何があるでしょうか。取り引きをすることで利益は得られますが、厳しいコスト要求の中ではボロ儲けとはいきません。中には、日系企業と取り引きしても要求ばかり厳しくて、全然儲からないと考えている中国企業もあります。

 「我々日系企業と取り引きをする、要求に応えることで、中国企業の技術レベルや品質レベルの向上につながる」というように考えてもらうことが大事です。要は、自社の成長につながると認識させることです。

 信頼...

中国

 前回のその75に続いて解説します。

【第5章】中国企業改善指導のポイント

1、取引先に動いてもらうには

 (1)(2)は、その75に記載しています。

(3) キーマンを見つける

 品質改善を進めるには、こちらから様々な要求や依頼をすることになります。こうした要求や依頼をする時に先方の誰に対して言うのかが重要となります。先方の中で力のある人、権限のある人と話をする、交渉を行う必要があります。要はキーマンを押えることです。

 実際に対策をするのは現場のスタッフであっても、打合せは現場の責任者クラスを交えて行います。その責任者から現場スタッフに実施の指示をさせることがポイントです。

(4) 信頼関係を築く

 中国人は、個人的な関係を大事にする人たちですから、信頼関係を築くことを意識してください。購入量が少なくても継続して取り引きしているのであれば、なおさらこれが大事になります。先方と一緒に食事をしたりお酒を飲んだりすることも信頼関係を築くために必要なことですが、それだけではありません。やはり、仕事を通して信頼関係を築くことが大事です。

 【日本企業側も即断即決できること】

 先方のキーマンを押えるといいましたが、逆にいえば、こちらも即断即決できる人でないとダメだということです。先方が示した回答内容でよし良しとするのかしないのか、その場で判断できる人であることが必要です。自分では判断できないから日本本社に持ち帰って検討するというのでは、相手からすれば「この人と話しても意味がない」となってしまい信頼関係は築けません。

 【こちら側の真剣さを行動で示す】

 「我社は、御社から本当にいいものを買いたいんだ」という思いを伝えることです。例えば、機械部品からプラントまで中国調達をしている岩城氏は、仕様書だけでなく指導書というものを中国企業の工場に送るようにしました。これは、図面に重要ポイントを記入したもので、岩城氏は中国語は片言しか話せないのですが、必死に辞書で調べたつたない中国語で書いています。何とか作る時に注意してもらいたいポイントを伝えようとしていますが、こうした必死さは相手に伝わります。

 【取り引きが双方にとってメリットになるという認識を持たせる】

 日系企業側のメリットは、何といってもコストでしょう。一方で中国企業側のメソッドには、何があるでしょうか。取り引きをすることで利益は得られますが、厳しいコスト要求の中ではボロ儲けとはいきません。中には、日系企業と取り引きしても要求ばかり厳しくて、全然儲からないと考えている中国企業もあります。

 「我々日系企業と取り引きをする、要求に応えることで、中国企業の技術レベルや品質レベルの向上につながる」というように考えてもらうことが大事です。要は、自社の成長につながると認識させることです。

 信頼関係は一朝一夕で築けるものではありません。長い時間をかけて培うものですが、一度信頼関係が築ければ、品質や納期などで「こちらの面子を潰すな」と言うこともできます。中国人の面子を重んじる気質を逆手に取る訳です。もちろん、先方の中国人の面子を潰すことのないように、こちらも気を遣うことは必要ですが、先方の人間に「あの人の面子を潰してはいけない」と思ってもらえるようになりたいものです。

 次回は、2、どこまで要求し、どこまで指導するのか。から解説を続けます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
SQHKライン戦略とは(5) 【快年童子の豆鉄砲】(その79)

  3.SQHKライン戦略の総括 1)はじめに 生産ライン設計時、SQHKライン戦略を極めれば、中小企業でも、画期的な成果を手にするこ...

  3.SQHKライン戦略の総括 1)はじめに 生産ライン設計時、SQHKライン戦略を極めれば、中小企業でも、画期的な成果を手にするこ...


中国企業改善指導のポイント 中国工場の品質改善(その77)

 前回のその76に続いて解説します。 【第5章】中国企業改善指導のポイント 2、どこまで要求し、どこまで指導するのか  取引先の指導はいい品物を...

 前回のその76に続いて解説します。 【第5章】中国企業改善指導のポイント 2、どこまで要求し、どこまで指導するのか  取引先の指導はいい品物を...


発想の転換を現場改善に生かすには 【連載記事紹介】 

発想の転換を現場改善に生かす、連載記事が無料でお読みいただけます! 【特集】連載記事紹介の一覧へ戻る ◆発想の転換を現場改善に生かすとは 工場の...

発想の転換を現場改善に生かす、連載記事が無料でお読みいただけます! 【特集】連載記事紹介の一覧へ戻る ◆発想の転換を現場改善に生かすとは 工場の...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
システムトラブル、誰に相談したら良いか

 最近は、以下のように情報システム開発にかかわるトラブルに悩まされる企業が急増しています。ところが、トラブルが起きた時に誰に相談したらいいかわからなくて困...

 最近は、以下のように情報システム開発にかかわるトラブルに悩まされる企業が急増しています。ところが、トラブルが起きた時に誰に相談したらいいかわからなくて困...


中国工場と省力化

1. 中国工場の省力化  中国の最低賃金の大幅な上昇を続けている状況は、まだ終わりそうになく、中国に工場進出した企業は、対応に追われています。以前は...

1. 中国工場の省力化  中国の最低賃金の大幅な上昇を続けている状況は、まだ終わりそうになく、中国に工場進出した企業は、対応に追われています。以前は...


ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その8)

前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その7)に続けて解説します。   ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトル...

前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その7)に続けて解説します。   ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトル...