中国企業改善指導のポイント 中国工場の品質改善(その81)

更新日

投稿日

中国

 前回のその80に続いて解説します。

【第5章】中国企業改善指導のポイント

4、不良を外に出さない仕組みづくりを

【工場基本管理】

(2) 識別管理

 次の2点は工場管理において基本中の基本です。

 識別:ものの区分、ポジション

    エ場内にあるものが何か、どのポジションのものか、すべて区分されていること
    例えば、検査前・検査後、加工前・加工後、良品・不良品など

 表示:識別できるように明示する

    例えば、部品表、置場表示、立札など

 これらが出来ていないと、不良品が良品と混ざったり、流出させたり、工程飛ばしが起きます。レベルの低い中国企業の工場でも、この識別管理はそこそこ出来ています。しかしそこそこではダメで、これは100%を求めます。一つ識別できていないものがあるとそれが不良品になり、流出につながるからです。

 読者の方が中国企業の工場を監査すれば、一つ二つは識別が不十分だったり、表示が漏れているものを見つけると思います。先方は「たまたまこの一つだけです」と言い訳するでしょうが、取引先で見つけた一つの識別管理不具合を許してはいけません。

 また、このような事例もありました。
 ある工場で現場に仕掛品置場があったのですが、何がどこに置いてあるかちょっと見ただけでは分からない状態でした。分かりにくいと指摘すると先方は「工場の慣れた作業者ならすぐ分かります」と回答してきました。これはダメです。工場で作業しているのは、慣れた人ばかりではありません。特に中国工場は人の流動性が高く、常に新人がいるのですから。

(3) 製品の扱いによる検査後の不具合

 中国工場の倉庫作業現場にずっといると、かなりの確率で箱や製品などを投げる光景を見ることができるのではないでしょうか。このように倉庫で製品や部品を乱暴に扱っていると、それによる不具合が発生する可能性があります。厄介なのは、倉庫にある出荷待ち品は既に出荷検査が終わった品物であるということです。倉庫での乱暴な扱いのせいで不良品になったとしても、取り除かれることなく顧客の手元に届くことになります。

 丁寧な荷扱いをしてもらうために必要なのは、そこで作業している人たちの仕事と品質に対する意識があるかということです。そして自分たちが扱っている製品がどのようなものなのか、乱暴な扱いをしたらどうなってしまうのかを知ってもらうことも重要です。ここでも管理者がキーパーソンと...

中国

 前回のその80に続いて解説します。

【第5章】中国企業改善指導のポイント

4、不良を外に出さない仕組みづくりを

【工場基本管理】

(2) 識別管理

 次の2点は工場管理において基本中の基本です。

 識別:ものの区分、ポジション

    エ場内にあるものが何か、どのポジションのものか、すべて区分されていること
    例えば、検査前・検査後、加工前・加工後、良品・不良品など

 表示:識別できるように明示する

    例えば、部品表、置場表示、立札など

 これらが出来ていないと、不良品が良品と混ざったり、流出させたり、工程飛ばしが起きます。レベルの低い中国企業の工場でも、この識別管理はそこそこ出来ています。しかしそこそこではダメで、これは100%を求めます。一つ識別できていないものがあるとそれが不良品になり、流出につながるからです。

 読者の方が中国企業の工場を監査すれば、一つ二つは識別が不十分だったり、表示が漏れているものを見つけると思います。先方は「たまたまこの一つだけです」と言い訳するでしょうが、取引先で見つけた一つの識別管理不具合を許してはいけません。

 また、このような事例もありました。
 ある工場で現場に仕掛品置場があったのですが、何がどこに置いてあるかちょっと見ただけでは分からない状態でした。分かりにくいと指摘すると先方は「工場の慣れた作業者ならすぐ分かります」と回答してきました。これはダメです。工場で作業しているのは、慣れた人ばかりではありません。特に中国工場は人の流動性が高く、常に新人がいるのですから。

(3) 製品の扱いによる検査後の不具合

 中国工場の倉庫作業現場にずっといると、かなりの確率で箱や製品などを投げる光景を見ることができるのではないでしょうか。このように倉庫で製品や部品を乱暴に扱っていると、それによる不具合が発生する可能性があります。厄介なのは、倉庫にある出荷待ち品は既に出荷検査が終わった品物であるということです。倉庫での乱暴な扱いのせいで不良品になったとしても、取り除かれることなく顧客の手元に届くことになります。

 丁寧な荷扱いをしてもらうために必要なのは、そこで作業している人たちの仕事と品質に対する意識があるかということです。そして自分たちが扱っている製品がどのようなものなのか、乱暴な扱いをしたらどうなってしまうのかを知ってもらうことも重要です。ここでも管理者がキーパーソンとなります。管理者がこうしたことを理解していることが大前提で、管理者から倉庫作業者にそうした意識を落とし込み、乱暴な作業をしないように監督・指導させるのがベストな流れです。 

 ここまでが不良品流出防止のための取り組みです。これらを徹底してやることで、一定の効果は必ず出ますので取り組んでいただきたいと思います。

 次回は、5、生産量が少ない場合に起きる問題と対応。から解説を続けます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
「C型PDPC」とは(3) 【快年童子の豆鉄砲】(その85)

       3.「C型PDPC」の使い方 3)各ステップの進め方 表66-1のステップに従って、C型P...

       3.「C型PDPC」の使い方 3)各ステップの進め方 表66-1のステップに従って、C型P...


ものづくり工場の日常管理のしくみ(その4)

◆報連相を定着させるには(製造業の工場品質改善の進め方・事例の解説)    強い組織作りに欠かせない「報・連・相」について解説します。 ◆...

◆報連相を定着させるには(製造業の工場品質改善の進め方・事例の解説)    強い組織作りに欠かせない「報・連・相」について解説します。 ◆...


外部の刺激を利用する 現場改善:発想の転換(その8)

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その8)

前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その7)に続けて解説します。   ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトル...

前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その7)に続けて解説します。   ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトル...


マシニングや放電加工を行う工場の機械レイアウトで考慮すべき4つのこと

  【目次】   1、マシニング・放電加工を行う工場レイアウトで考慮すべきこと  今回のテーマは工場の新設や移...

  【目次】   1、マシニング・放電加工を行う工場レイアウトで考慮すべきこと  今回のテーマは工場の新設や移...


異物混入:鳥の羽の混入

 以前、製品のパッケージがネズミにかじられて使いものにならなくなったと記事を読んだことがありました。その記事は、このようなものでした。サプライヤーの一社の...

 以前、製品のパッケージがネズミにかじられて使いものにならなくなったと記事を読んだことがありました。その記事は、このようなものでした。サプライヤーの一社の...