中国工場の実状を知る 中国工場の品質改善(その40)

更新日

投稿日

中国

 前回のその39に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

【3.7 問題点を分かっていない】

 ここまで全体を俯瞰(ふかん)した大きな話をしましたので、ここからはテクニカルな部分について書きたいと思います。

 筆者が改善のために訪れた多くの中国工場で何が一番問題だったと言いますと、自社工場のどこが問題なのか、本当の問題点は何かということを分かっていないことでした。しかも、中国人スタッフではなく、日本人駐在員やトップが分かっていなかったのです。別の言い方をすると、分かろうとしていなかったのです。

 特に利益が出ている工場の場合、表面上の問題だけ対応していればよく、駐在員も「何事もなく任期が終わればよい」と願っているのではないでしょうか。そのような工場でよくあるのが顧客クレームだけ対応するケースです。顧客クレームが減ればよし、増えるとあたふたして対症療法に終始しているのです。一方、利益の出ていない工場の場合、真剣に何とかしないといけないと考えるので、しっかりと現実を見ることにつながります。

 現場の人は現場での日々の生産と発生している不良の対策に追われており、本質的な問題は何で、何から潰せばよいのかわからないし、そんなことを分析したり解決したりする能力もありません。

 
 

【3.8 実態・実状把握の方法は】

 工場の本当の問題点を把握する、つまり工場の実態や実状を把握するためにはどうすればよいか。まずは「現場に行き、現物を見て、現実を知る」の3現主義を徹底することです。ここで大事なのは、3現主義確認の徹底を常に日本人が意識して手本となることです。

 総経理や工場長になると立派な部屋を用意されますが、そこに居座ったまま仕事をしているようではいけません。常に現場に顔を出すようにして、問題が起きたときはすぐに確認しに行くようにします。そうすることで中国人にもこれを徹底させ、手を抜かせないよう意識させるのです。

 また、中国人に対しては事実確認という行為に関し、自分自身が確認した事実を報告させるようにします。これは問題ないですね。ただ、他人から聞いた事実や自分が推測したことをすべて自分が確認した事実のように報告する傾向があるので注意が必要です。

 この実態把握はデータに基づくことが基本で、感覚やイメージではダメです。ですから中国人ともデータに基づいて話をするようにし、これに沿った報告をさせるようにしていきます。

 工場にはいろいろなデータがあります。品質関連のデータであれば、顧客クレームや検査データがあります。顧客クレームデータからは、工場から流出した不良品が分かります。検査データも受入・工程・出荷検査データなどがあります。受入検査データからは購入部...

中国

 前回のその39に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

【3.7 問題点を分かっていない】

 ここまで全体を俯瞰(ふかん)した大きな話をしましたので、ここからはテクニカルな部分について書きたいと思います。

 筆者が改善のために訪れた多くの中国工場で何が一番問題だったと言いますと、自社工場のどこが問題なのか、本当の問題点は何かということを分かっていないことでした。しかも、中国人スタッフではなく、日本人駐在員やトップが分かっていなかったのです。別の言い方をすると、分かろうとしていなかったのです。

 特に利益が出ている工場の場合、表面上の問題だけ対応していればよく、駐在員も「何事もなく任期が終わればよい」と願っているのではないでしょうか。そのような工場でよくあるのが顧客クレームだけ対応するケースです。顧客クレームが減ればよし、増えるとあたふたして対症療法に終始しているのです。一方、利益の出ていない工場の場合、真剣に何とかしないといけないと考えるので、しっかりと現実を見ることにつながります。

 現場の人は現場での日々の生産と発生している不良の対策に追われており、本質的な問題は何で、何から潰せばよいのかわからないし、そんなことを分析したり解決したりする能力もありません。

 
 

【3.8 実態・実状把握の方法は】

 工場の本当の問題点を把握する、つまり工場の実態や実状を把握するためにはどうすればよいか。まずは「現場に行き、現物を見て、現実を知る」の3現主義を徹底することです。ここで大事なのは、3現主義確認の徹底を常に日本人が意識して手本となることです。

 総経理や工場長になると立派な部屋を用意されますが、そこに居座ったまま仕事をしているようではいけません。常に現場に顔を出すようにして、問題が起きたときはすぐに確認しに行くようにします。そうすることで中国人にもこれを徹底させ、手を抜かせないよう意識させるのです。

 また、中国人に対しては事実確認という行為に関し、自分自身が確認した事実を報告させるようにします。これは問題ないですね。ただ、他人から聞いた事実や自分が推測したことをすべて自分が確認した事実のように報告する傾向があるので注意が必要です。

 この実態把握はデータに基づくことが基本で、感覚やイメージではダメです。ですから中国人ともデータに基づいて話をするようにし、これに沿った報告をさせるようにしていきます。

 工場にはいろいろなデータがあります。品質関連のデータであれば、顧客クレームや検査データがあります。顧客クレームデータからは、工場から流出した不良品が分かります。検査データも受入・工程・出荷検査データなどがあります。受入検査データからは購入部材の品質状況が分かりますし、工程検査データからは工程で発生している不良状況が分かります。

 これら全体を見渡すことで、品質面の問題点が把握できるはずです。他にも工場の経営指標のデータとしては、納期遵守率や製品原価率、生産性指標などもあります。これらに限らず様々な切り口でデータを得ることで、工場の問題点を捉えることが出来るのではないでしょうか。

 次回は、3.9 必要なデータは取れているか、活用出来ているか、から解説を続けます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
中国企業改善指導のポイント 中国工場の品質改善(その79)

 前回のその78に続いて解説します。 【第5章】中国企業改善指導のポイント 3、二つの視点で考える ~短期視点~  (1)はその78に記載してい...

 前回のその78に続いて解説します。 【第5章】中国企業改善指導のポイント 3、二つの視点で考える ~短期視点~  (1)はその78に記載してい...


在庫を利用して購入コストを下げるには(その3)

 前回のその2に続いて解説します。   1.負荷調整によってスループットを稼ぐ    スループットを稼ぐには、下図のように生産...

 前回のその2に続いて解説します。   1.負荷調整によってスループットを稼ぐ    スループットを稼ぐには、下図のように生産...


金型とは、金型産業を深く知る(その2)

    造形の要である金型は「製品の産みの親」ともいわれています。工法はプレス、鍛造、鋳造、射出工程などがあり、素材である金属...

    造形の要である金型は「製品の産みの親」ともいわれています。工法はプレス、鍛造、鋳造、射出工程などがあり、素材である金属...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
新規調達先および資材の認定について

        今回は、新規調達先を選定する場合の注意点について解説します。特に、精密樹脂部品の発注先で計測限界に近い高い加工精度が要求される場合を...

        今回は、新規調達先を選定する場合の注意点について解説します。特に、精密樹脂部品の発注先で計測限界に近い高い加工精度が要求される場合を...


品質管理 中国工場管理の基本事例(その18)

  ◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その8) 1. 中国工場の問題点を生産の3要素で捉える  中国工場で生産するとき...

  ◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その8) 1. 中国工場の問題点を生産の3要素で捉える  中国工場で生産するとき...


赴任者のために 中国工場管理の基本事例(その7)

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その5)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その4)に続いて解説します。 ◆...

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その5)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その4)に続いて解説します。 ◆...