中国工場での従業員教育の進め方 中国工場の品質改善(その53)

更新日

投稿日

教育

 前回のその52に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

 

【3.14 中国工場での従業員教育の進め方】

◆ 作業者教育は、管理者が先生になる

 管理者教育の次は作業者への教育です。どんなに立派なマニュアルがあっても、最終的には作業者の意識を高めなければ、品質は確保できません。作業者教育も仕組み化して継続して実施していかなれば望む効果は期待できませんので、まずは教育計画と教育項目を決めます。また、管理者全員が先生役となり実施してもらうようにします。

 教育内容としては、下記のように工場で当たり前に行うことを当たり前にできるようにすることを目指していますので、基本を重視して作業者に対しても徹底します。

  • 作業方法など仕事に必要なスキル
  • 品質管理の基礎知識/品質に対する考え方

 これらを順番に教えて、一通り教えたらまた最初から同じことを教えます。難しいことを教えるよりも、最低限必要なこと基本的なことを繰り返し教育するのがポイントです。

 品質管理の基礎知識、品質に対する考え方の教育については、現場管理者が作業者に対して教えます。これは管理者にとって結構な負担になります。ここで言う負担とは、工数的な面もありますが大きいのは精神的な負担です。

 読者の皆さんも経験があると思いますが、教育を受ける側はいたって気楽です。ところが、立場が変わって教える側に回るとその準備、特に教える内容についてこちらがしっかり理解していないと相手には伝わりません。朝礼で注意事項を話す時とは、まったく違います。

 支援していた中国工場もようやく管理者が作業者に対して品質教育をする段階になったので、現場を見学したことがあります。毎回組長が交代で先生役をすることになっており、その日は1人の組長が担当しました。

 一生懸命なのが良く分かる話振りでした。特に印象的だったのはその日の教育が終ったあとでした。組長は自分の机に戻るなり「ふー」と息をつきました。実は緊張していたのです。

 組長の机の上には彼が必死で手書きした原稿がありました。教育で話す内容を彼なりに必死でまとめて、原稿として準備していたのです。それを見た時は、組長の頑張り...

教育

 前回のその52に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

 

【3.14 中国工場での従業員教育の進め方】

◆ 作業者教育は、管理者が先生になる

 管理者教育の次は作業者への教育です。どんなに立派なマニュアルがあっても、最終的には作業者の意識を高めなければ、品質は確保できません。作業者教育も仕組み化して継続して実施していかなれば望む効果は期待できませんので、まずは教育計画と教育項目を決めます。また、管理者全員が先生役となり実施してもらうようにします。

 教育内容としては、下記のように工場で当たり前に行うことを当たり前にできるようにすることを目指していますので、基本を重視して作業者に対しても徹底します。

  • 作業方法など仕事に必要なスキル
  • 品質管理の基礎知識/品質に対する考え方

 これらを順番に教えて、一通り教えたらまた最初から同じことを教えます。難しいことを教えるよりも、最低限必要なこと基本的なことを繰り返し教育するのがポイントです。

 品質管理の基礎知識、品質に対する考え方の教育については、現場管理者が作業者に対して教えます。これは管理者にとって結構な負担になります。ここで言う負担とは、工数的な面もありますが大きいのは精神的な負担です。

 読者の皆さんも経験があると思いますが、教育を受ける側はいたって気楽です。ところが、立場が変わって教える側に回るとその準備、特に教える内容についてこちらがしっかり理解していないと相手には伝わりません。朝礼で注意事項を話す時とは、まったく違います。

 支援していた中国工場もようやく管理者が作業者に対して品質教育をする段階になったので、現場を見学したことがあります。毎回組長が交代で先生役をすることになっており、その日は1人の組長が担当しました。

 一生懸命なのが良く分かる話振りでした。特に印象的だったのはその日の教育が終ったあとでした。組長は自分の机に戻るなり「ふー」と息をつきました。実は緊張していたのです。

 組長の机の上には彼が必死で手書きした原稿がありました。教育で話す内容を彼なりに必死でまとめて、原稿として準備していたのです。それを見た時は、組長の頑張りと管理者に先生をやってもらう狙いが的を得たことにうれしくなりました。

 教育というのは、受ける側の成長も促しますが、それ以上に教育する側の成長も促進します。先生役を管理者が行うことによって、管理者が成長すれば工場全体のレベルが上がることにつながると実感した次第です。

 次回は、中国異文化コミュニケーションから解説を続けます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
納期遵守率を向上させるには 見える化(その6)

【見える化 連載目次】 1. 情報の取り扱いで競争力をつける 2. 見えないことの方が大切なことがある 3. 職場の全員がコスト意識を持つに...

【見える化 連載目次】 1. 情報の取り扱いで競争力をつける 2. 見えないことの方が大切なことがある 3. 職場の全員がコスト意識を持つに...


金型とは、金型産業を深く知る(その2)

    造形の要である金型は「製品の産みの親」ともいわれています。工法はプレス、鍛造、鋳造、射出工程などがあり、素材である金属...

    造形の要である金型は「製品の産みの親」ともいわれています。工法はプレス、鍛造、鋳造、射出工程などがあり、素材である金属...


後継者問題の解決策 【快年童子の豆鉄砲】(その89)

      1.後継者の事業継承に対する不安 今回は、表2-1にある「喫緊の課題」の7番目「後継者がいない」の発生要...

      1.後継者の事業継承に対する不安 今回は、表2-1にある「喫緊の課題」の7番目「後継者がいない」の発生要...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
中国での工場立ち上げ事例

1. 失敗例  1998年、ある中堅の機械部品会社が、中国で工場を立ち上げることとなりました。国内ならまだしも、言葉や文化、法制度等の異なる国でもの造り...

1. 失敗例  1998年、ある中堅の機械部品会社が、中国で工場を立ち上げることとなりました。国内ならまだしも、言葉や文化、法制度等の異なる国でもの造り...


作業者をどう捉えるか

◆中国人作業者はまじめ、それともいい加減  今回は、中国人作業者をどう捉えるかを考えてみることにします。これに関して以前相談をいただいたのでアドバイ...

◆中国人作業者はまじめ、それともいい加減  今回は、中国人作業者をどう捉えるかを考えてみることにします。これに関して以前相談をいただいたのでアドバイ...


ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その10)

  前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その9)に続けて解説します。   ◆【特集】 連載記事紹介:連載記...

  前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その9)に続けて解説します。   ◆【特集】 連載記事紹介:連載記...