ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その17)

投稿日

SCM

 

前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その16)に続けて解説します。

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~

第2章 7ゼロ生産の指標と全体関連

5、“在庫”指標一「製品在庫」と「仕掛在庫」と「原材料在庫」

在庫は、工場の体質を非常によく表わすものの1つである。それは、工場のすべての問題を在庫という便利な風呂敷がすっかり覆い隠してくれるからである。それゆえ、在庫の多い会社、工場は、欠品、不良、工程アンバランス、大型設備、大ロットなどの真の問題が山積みされていることになる。ひと口で在庫といっても、それは大きく3つに分けることができる。それは原材料、仕掛り、製品の3つである。原材料とは、原料や材料に代表される購入品のことである。よく購入部品を仕掛りに入れる工場があるが、これは物の流れから捉えれば原材料と同じ扱いのほうがよい。

 

次に仕掛りであるが、原材料・購入部品をいったん倉庫から出庫したら、それは外注に行こうと、途中で部品倉庫に入ろうと仕掛りとして把握するのが良い。最後は製品。これはよく販売部門が別会社になっていて、製品出庫したらあとは関係なし、という工場を見かけるが、これは...

SCM

 

前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その16)に続けて解説します。

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~

第2章 7ゼロ生産の指標と全体関連

5、“在庫”指標一「製品在庫」と「仕掛在庫」と「原材料在庫」

在庫は、工場の体質を非常によく表わすものの1つである。それは、工場のすべての問題を在庫という便利な風呂敷がすっかり覆い隠してくれるからである。それゆえ、在庫の多い会社、工場は、欠品、不良、工程アンバランス、大型設備、大ロットなどの真の問題が山積みされていることになる。ひと口で在庫といっても、それは大きく3つに分けることができる。それは原材料、仕掛り、製品の3つである。原材料とは、原料や材料に代表される購入品のことである。よく購入部品を仕掛りに入れる工場があるが、これは物の流れから捉えれば原材料と同じ扱いのほうがよい。

 

次に仕掛りであるが、原材料・購入部品をいったん倉庫から出庫したら、それは外注に行こうと、途中で部品倉庫に入ろうと仕掛りとして把握するのが良い。最後は製品。これはよく販売部門が別会社になっていて、製品出庫したらあとは関係なし、という工場を見かけるが、これはおかしい。なぜなら、顧客ニーズは、この製品を介して工場にやってくるものである。そのトリガーとなる製品を押さえないで、真の顧客の動向を掴めるわけがない。物造りの真の姿を追い求める工場なら、製品在庫の真の姿を積極的に掴むべきである。

 

こうしてみてみると、原材料、仕掛り、製品はすべて生産部門が関連し、すべての在庫の悪さの根源に生産部門がいることはゆがめない。しかし、物の流れの中で、それぞれの責任を決めるなら、"原材料・購入品在庫は購買”、“仕掛在庫は製造”、"製品在庫は販売”である。この意味からも、在庫は少なくとも原材料、仕掛り、製品の3つに分けて把握すべきで、それぞれの対処も大きく異なってくる。

 

このような在庫の尺度とか基準は何を用いるのがよいであろうか。製品在庫を表現するのに、販売の連中はよく“月”の単位を使う。たとえば「この製品の在庫は0.7カ月です」などといった具合である。この在庫の基準が大きいことは、大きいなりの発想しか出ない。在庫を月で表現すれば、月単位でのものの考え方しかできない。0.7カ月といった時に、1日分の在庫を減らそうなどとは考えもつかない。それゆえ「原材料在庫は日および時間」「仕掛在庫は時間、分、秒」「製品は日および時間」の表現が必要となる。無論、この表現は在庫回転率から割り出した言い方ではある。

 

 

しかし、それでもまだ、言い方の基準を変えることで、少しでも小さくしようとする意志がみ、在庫を単に回転数で表現する者がいる。たとえば、図2-5-1のようにである。

 

図2-5-1在庫回転率

 

「売上は毎月、倍々で増えているが、在庫回転数は1回転を保っています」などと人は胸を張る。この考え方には「売上と在庫は比例する」といった安易な気持ちが、物造りの中に見え隠れする。一般的にいって、売上が増えると在庫の絶対量が増える傾向にある。このことから売上と在庫が比例するとでも思っているのであろう。これは大きな誤りである。売上が増えるとそれに伴い、受注のキャンセル、変更、工程アンバランス、部品の非同期、不良などが増えてくる。このような問題が増えるのにつれて、在庫が増えるのであり、上辺だけを捉えると"売上が増えると在庫が増える”ように見えてしまうのである。

・売上問題と在庫の関係

①売上が増えると在庫が増える 一売上と在庫は比例する一

  × 売上=在庫 (考え方の根本が間違っている)

②売上が増えると問題が増え、問題が増えると在庫が増える一問題と在庫は比例する一

  〇 売上=問題=在庫 (考え方はよいが実力不足)

③売上が増えても問題が発生しない 一問題の出ない仕組みー

  ◎ 売上≠問題=在庫 (さらなる改革)

 

そこで、売上が増えても、問題が増えないもしくは問題を3即(即時・即座・即応)で解決してしまう工場では、在庫は増えようにも増えないのである。そして、一定の在庫量で、売上に乗じて回転数が増えていくのであり、この意味で図2-5-2のような売上に比例した要求回転数が必要となってくる。

 

図2-5-2在庫要求回転率

 

このように売上が増えれば、在庫回転も増え、売上が下がれば在庫回転も下がる。車のスピードとエンジンの回転とに似た働きをする。そして在庫は何日、何時間といった回転率のみならず絶対量もポイントで、このために定量決めをし、次にこれを減らしていって量規制をしていき、より強い体質に改革することが望まれる。

 

次回に続きます。

【出典】「『7ゼロ生産』実現マニュアル」ジット経営研究所刊 平野裕之著より、ジット経営研究所 古谷誠 編著(編著者のご承諾により連載)

 

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

古谷 誠

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
視点を変える 現場改善:発想の転換 (その5)

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...


組み立ないで組み立てるとは 現場改善:発想の転換 (その13)

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...


中国工場の実状を知る 中国工場の品質改善(その38)

 前回のその37に続いて解説します。 【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方       【3.6 中国...

 前回のその37に続いて解説します。 【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方       【3.6 中国...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
農民の年配作業者たちの意識 中国企業の壁(その22)

         以前、関与先企業のサテライト工場が天津にあり品質管理に問題があるので、そちらも指導することになったこと、そこで働いている作業者は地...

         以前、関与先企業のサテライト工場が天津にあり品質管理に問題があるので、そちらも指導することになったこと、そこで働いている作業者は地...


製造リードタイムモデルの作り方

 生産管理の教科書には「基準日程表を作る」ことが当たり前のように書かれています。しかしながら、なかなか簡単には作れません。実際には品種毎に長短がありますし...

 生産管理の教科書には「基準日程表を作る」ことが当たり前のように書かれています。しかしながら、なかなか簡単には作れません。実際には品種毎に長短がありますし...


3次元データ加工のセオリー 伸びる金型メーカーの秘訣 (その15)

 今回紹介する部品加工メーカーは、T鉄工所です。同社は、フォークリフトの構成部品の機械加工を行っており、特に溶接製缶品の切削や穴あけに特化した加工技術が得...

 今回紹介する部品加工メーカーは、T鉄工所です。同社は、フォークリフトの構成部品の機械加工を行っており、特に溶接製缶品の切削や穴あけに特化した加工技術が得...