クレーム率シングルppmをゼロに(9) 【快年童子の豆鉄砲】(その64)

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【連関図法で把握した原因に対する対策のまとめ】

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その63)へのリンク】

【連載記事】・新QC七つ道具 連関図法の使い方

【連載記事】・新QC七つ道具 親和図法の使い方

 

1)最終結論“B型文章化”の図解

本事例の最終結論は、前弾でご紹介したB型図解とB型文章化で説明が尽くされています。

 

ただ、これらは、あくまで親和図のA型図解をベースにしたものですので、この結論が効果に結びつくには、関係者が、対策を実施するに際し、この結論を、テーマ、即ち、プロジェクトの目的との関連において結論の本質を理解してもらう必要があるのですが、全ての言語データが入っているA型図解は結構複雑で、中々理解してもらえないですし、たとえ、その場で理解が得られても、その理解が対策実施に反映されるのはさらに難しいものです。

 

そこで、理解を得やすく、末永くその理解を継続してもらうことを目指して準備したのが、結論を最終目標と関連付けて図解した下記の図46-1です。

 

図46-1 親和図「誤作業に配慮した作業設計はどうあるべきか?」の結論の図示

 

この図を念頭に、B型図解、B型文章化を見ることにより、最終目標との関連において結論の本質を理解しやすい上、折に触れてみることによりその理解が薄れることなく対策実施に反映してもらえたからの成功ではなかったかと思っています。

 

なお、この図には、結論の内容が、目標達成に欠かせない事項に対して漏れなく対応していることが示されていますので、結論の普遍性の検証にもなっており、そういった意味でもこの図は意味があると思います。

 

2)本事例成功の要件

本事例のテーマ「クレーム率シングルppmをゼロに」は、多くの企業に共通するものと思いますので、是非参考にして頂きたいと思うのですが、連関図法と親和図法を使えば事足りるとの誤解を避けるために、本事例が成功を収めることができた要件を、既にご説明した内容との重複を恐れず、ここに総括させて頂きますので参考にして頂ければと思います。これより連載の2回に分かれますが、全部で5つあります。

 

①体質系不具合とフェーズ理論

この両者は、引退後、現役時代のQA活動総括のための調査研究の過程で行き着き、本事例が最初の検証機会だったのですが、まさしく正解で、この考え方なくしてこの事例の成功はありえなかったと言えます。

 

要するに、作業ミスの根本原因は、人の性である“ヒューマンエラー”ではなく、フェーズ理論で立証された“行為における人の高い信頼性”を阻害する“職場体質の欠陥”である、という考えなのですが、本事例での関係者の言語データ解析結果がまさしくこの考えと合致する物だったことが、本事例の活動を、成功に導いたと言えます。

 

→ 作業ミス対策は、作業者の高い信頼性に対する阻害要因除去がポイント。

 

②ホーソン効果に頼らなかった

プロジェクトを立ち上げてすぐ、モデルラインの全数検査結果は、いわゆるホーソン効果(注42-1)により、著しく向上したのですが、管理者たちはその結果に頼ることなく、ひたすら言語データ解析による原因究明に取り組む中で気付いた諸対策を順次実施しました。

 

結果としてこのことが、短期間しか続かないホーソン効果を的確にフォローしたことになり...

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【連関図法で把握した原因に対する対策のまとめ】

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その63)へのリンク】

【連載記事】・新QC七つ道具 連関図法の使い方

【連載記事】・新QC七つ道具 親和図法の使い方

 

1)最終結論“B型文章化”の図解

本事例の最終結論は、前弾でご紹介したB型図解とB型文章化で説明が尽くされています。

 

ただ、これらは、あくまで親和図のA型図解をベースにしたものですので、この結論が効果に結びつくには、関係者が、対策を実施するに際し、この結論を、テーマ、即ち、プロジェクトの目的との関連において結論の本質を理解してもらう必要があるのですが、全ての言語データが入っているA型図解は結構複雑で、中々理解してもらえないですし、たとえ、その場で理解が得られても、その理解が対策実施に反映されるのはさらに難しいものです。

 

そこで、理解を得やすく、末永くその理解を継続してもらうことを目指して準備したのが、結論を最終目標と関連付けて図解した下記の図46-1です。

 

図46-1 親和図「誤作業に配慮した作業設計はどうあるべきか?」の結論の図示

 

この図を念頭に、B型図解、B型文章化を見ることにより、最終目標との関連において結論の本質を理解しやすい上、折に触れてみることによりその理解が薄れることなく対策実施に反映してもらえたからの成功ではなかったかと思っています。

 

なお、この図には、結論の内容が、目標達成に欠かせない事項に対して漏れなく対応していることが示されていますので、結論の普遍性の検証にもなっており、そういった意味でもこの図は意味があると思います。

 

2)本事例成功の要件

本事例のテーマ「クレーム率シングルppmをゼロに」は、多くの企業に共通するものと思いますので、是非参考にして頂きたいと思うのですが、連関図法と親和図法を使えば事足りるとの誤解を避けるために、本事例が成功を収めることができた要件を、既にご説明した内容との重複を恐れず、ここに総括させて頂きますので参考にして頂ければと思います。これより連載の2回に分かれますが、全部で5つあります。

 

①体質系不具合とフェーズ理論

この両者は、引退後、現役時代のQA活動総括のための調査研究の過程で行き着き、本事例が最初の検証機会だったのですが、まさしく正解で、この考え方なくしてこの事例の成功はありえなかったと言えます。

 

要するに、作業ミスの根本原因は、人の性である“ヒューマンエラー”ではなく、フェーズ理論で立証された“行為における人の高い信頼性”を阻害する“職場体質の欠陥”である、という考えなのですが、本事例での関係者の言語データ解析結果がまさしくこの考えと合致する物だったことが、本事例の活動を、成功に導いたと言えます。

 

→ 作業ミス対策は、作業者の高い信頼性に対する阻害要因除去がポイント。

 

②ホーソン効果に頼らなかった

プロジェクトを立ち上げてすぐ、モデルラインの全数検査結果は、いわゆるホーソン効果(注42-1)により、著しく向上したのですが、管理者たちはその結果に頼ることなく、ひたすら言語データ解析による原因究明に取り組む中で気付いた諸対策を順次実施しました。

 

結果としてこのことが、短期間しか続かないホーソン効果を的確にフォローしたことになり、スタートからの切れ目ない効果に繋がったと言えます。

 

→ ホーソン効果は、期待はしても頼ってはいけない

(注42-1)ウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場において、照明と作業効率の関係を調査する実験を行った(1924-1932年)ところ、照明を暗くしても作業効率が上がると言う結果になった。理由は、注目されていることによる作業者のモチベーション向上とされ、この種の効果を“ホーソン効果”と呼ぶ。

 

 

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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