【快年童子の豆鉄砲】(その117)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(4)

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【快年童子の豆鉄砲】(その117)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(4)

 

前回の【快年童子の豆鉄砲】(その116)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(3)からの続きです。

2. 何故QCサークル活動が必要なのか

QCサークル活動が非常に重要、トップマネジメントの観点から、ミドルマネジメントの観点から、社員の観点からをこれまでの連載に記載しました。今回は、TQMの観点からです。

 

5)TQMの観点から

TQM推進の観点から見たQCサークル活動の必要性は、いろんなところで説明されており、皆さんもその通りだとお思いでしょうが、いざ具体的な活動に入ると、そうも行かないのではないでしょうか。その点について検討したところ「TQMの捉え方が、QCサークル活動の必要性という点で掴みどころがはっきりしないからではないか」要するに、TQMの把握の問題だという結論になったのです。

 

今のところ、TQCがTQMに変わったことから、把握の起点を“M”、即ち、マネジメントに置いているのですが、QCサークル活動の必要性という観点からの把握のポイントは、マネジメントの対象である“TQ”に置くべきだと気づいたのです。

 

そして、TQとは何かの追及を重ねた結果「TQ=7PQ」に行き着いてすっきりしましたので、その追及のプロセスも含めて「TQ=7PQ」のご説明をしていきたいと思います。

 

①TQ=7PQに至るプロセス

何と言っても起点は“製品の質”なんですが、清水祥一氏(故人)が、1978年第19回品質月間のテキスト104「仕事の質の管理」の中で「製品の質は工程の質で決まるのでQC=PQ2Cでなければならない」と言われていたことを思い出したのです。そしてすぐに、事例でもご紹介していますが「“工程の質”は“計画の質”で決まり、“計画の質”は“目標の質”で決まる」となり、筆者持論の「品質は経営の発露」に至り“M”(経営)に繋がったのです。

 

しかし「品質が経営の発露」であるなら“経営の質”を論じなければならないとの思いに至ったのですが、この点は、日ごろから考えていた結論「経営の質=利益の質」を採用し「“利益の質”は、経営にかかわるすべてに対する“予測の質”で決まり、“予測の質”で“目標の質”が決まり、“目標の質”で“工程の質”が決まる」と繋がり「TQ=6PQ・M」これが最初の結論だったのです。ただ、諸事例をつぶさに調べてみると、“目標の質”は、必ずしも“予測の質”の延長線上にあるわけではなく、この両者の間には、経営者の“洞察”といえる哲学的なものが決め手になっていることに気づき、“洞察の質”が加わり「TQ=7PQ・M」が完成したのです。

 

何故7PQなのかという点ですが、実は、製品(Product)、工程(Process)、計画(Plan)、洞察(Penetration)、予測(Prediction)、利益(Profit) と、一般的な英語訳がPで始まる上、目標については、筆者の場合、第18弾でご説明した、此処での目標に相応しい「ポールスター」(Polestar)があるものですから、7PQになるわけです。

 

ただ、後日手にした野中郁次郎氏の本(注)に「賢慮」という言葉があり「洞察」以上に相応しい上、何と英語が(Phronesis)で、頭文字がPだったものですからこちらを採用することにしたのです。(注)「イノベーションの作法」(P372)野中郁次郎・勝見明共著(日本経済新聞出版社2007.1.24)

 

この「7PQ・M」が、QCサークル活動の必要性とどう結びつくのかを、次項でご説明します。

 

②「TQ・M」即ち「7PQ・M」におけるQCサークル活動の必要性とは

分かりやすいところで、製造現場を念頭にご説明しますと、プロジェクトメンバーとしては、画期的な夢の工程設計なんだから現在の現場の意見など聞いても仕方がない、ということになると思うのですが、筆者の経験からすると、現在の製品が、現場の人たちのどんな苦労の上で出来ているかを知らないで設計された夢の工程がうまく機能しない経験をいくつもしているのです。

 

もう一つ、どれほどいい設計でも、革新的であればあるほど、実現段階で現場の人たちは大変な苦労をするものなんですが、計画段階から、QCサークル活動の一環として、情報提供という形で参画してもらっておれば、その大変さを高いモチベーションで乗り切って成功に導いてくれるのです。

 

そういった意味で、QCサークルからもらった情報が、既に自分たちが考えていたことであっても、サークルのアイデアとして受け入れることにより、自分たちのアイデアが活きたのだということからくる高いモチベーションが生まれ、新工程立ち上がり時の大変さの克服に大きく貢献するのです。

 

以上のようなことが、それぞれのPQにどのように貢献するのかをまとめたのが表99-1ですので、表中の説明ご理解の参考にして頂けたらと思います。

 

表99-1 「7PQ・M」におけるQCサークル活動の必要性

 

最後に、表中、7PQの基盤(ベース)として「哲学の質」を挙げている点についてご説明しておきたいと思います。

 

先にご紹介した野中郁次郎氏の本に「経営は哲学なり」(ナカニシヤ出版:2012/2/10)と言うのがあるのですが、実は、結論の「TQ=7PQ・M」に至るまでに7つのPQの質の成り立ちを追求する過程で、哲...

【快年童子の豆鉄砲】(その117)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(4)

 

前回の【快年童子の豆鉄砲】(その116)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(3)からの続きです。

2. 何故QCサークル活動が必要なのか

QCサークル活動が非常に重要、トップマネジメントの観点から、ミドルマネジメントの観点から、社員の観点からをこれまでの連載に記載しました。今回は、TQMの観点からです。

 

5)TQMの観点から

TQM推進の観点から見たQCサークル活動の必要性は、いろんなところで説明されており、皆さんもその通りだとお思いでしょうが、いざ具体的な活動に入ると、そうも行かないのではないでしょうか。その点について検討したところ「TQMの捉え方が、QCサークル活動の必要性という点で掴みどころがはっきりしないからではないか」要するに、TQMの把握の問題だという結論になったのです。

 

今のところ、TQCがTQMに変わったことから、把握の起点を“M”、即ち、マネジメントに置いているのですが、QCサークル活動の必要性という観点からの把握のポイントは、マネジメントの対象である“TQ”に置くべきだと気づいたのです。

 

そして、TQとは何かの追及を重ねた結果「TQ=7PQ」に行き着いてすっきりしましたので、その追及のプロセスも含めて「TQ=7PQ」のご説明をしていきたいと思います。

 

①TQ=7PQに至るプロセス

何と言っても起点は“製品の質”なんですが、清水祥一氏(故人)が、1978年第19回品質月間のテキスト104「仕事の質の管理」の中で「製品の質は工程の質で決まるのでQC=PQ2Cでなければならない」と言われていたことを思い出したのです。そしてすぐに、事例でもご紹介していますが「“工程の質”は“計画の質”で決まり、“計画の質”は“目標の質”で決まる」となり、筆者持論の「品質は経営の発露」に至り“M”(経営)に繋がったのです。

 

しかし「品質が経営の発露」であるなら“経営の質”を論じなければならないとの思いに至ったのですが、この点は、日ごろから考えていた結論「経営の質=利益の質」を採用し「“利益の質”は、経営にかかわるすべてに対する“予測の質”で決まり、“予測の質”で“目標の質”が決まり、“目標の質”で“工程の質”が決まる」と繋がり「TQ=6PQ・M」これが最初の結論だったのです。ただ、諸事例をつぶさに調べてみると、“目標の質”は、必ずしも“予測の質”の延長線上にあるわけではなく、この両者の間には、経営者の“洞察”といえる哲学的なものが決め手になっていることに気づき、“洞察の質”が加わり「TQ=7PQ・M」が完成したのです。

 

何故7PQなのかという点ですが、実は、製品(Product)、工程(Process)、計画(Plan)、洞察(Penetration)、予測(Prediction)、利益(Profit) と、一般的な英語訳がPで始まる上、目標については、筆者の場合、第18弾でご説明した、此処での目標に相応しい「ポールスター」(Polestar)があるものですから、7PQになるわけです。

 

ただ、後日手にした野中郁次郎氏の本(注)に「賢慮」という言葉があり「洞察」以上に相応しい上、何と英語が(Phronesis)で、頭文字がPだったものですからこちらを採用することにしたのです。(注)「イノベーションの作法」(P372)野中郁次郎・勝見明共著(日本経済新聞出版社2007.1.24)

 

この「7PQ・M」が、QCサークル活動の必要性とどう結びつくのかを、次項でご説明します。

 

②「TQ・M」即ち「7PQ・M」におけるQCサークル活動の必要性とは

分かりやすいところで、製造現場を念頭にご説明しますと、プロジェクトメンバーとしては、画期的な夢の工程設計なんだから現在の現場の意見など聞いても仕方がない、ということになると思うのですが、筆者の経験からすると、現在の製品が、現場の人たちのどんな苦労の上で出来ているかを知らないで設計された夢の工程がうまく機能しない経験をいくつもしているのです。

 

もう一つ、どれほどいい設計でも、革新的であればあるほど、実現段階で現場の人たちは大変な苦労をするものなんですが、計画段階から、QCサークル活動の一環として、情報提供という形で参画してもらっておれば、その大変さを高いモチベーションで乗り切って成功に導いてくれるのです。

 

そういった意味で、QCサークルからもらった情報が、既に自分たちが考えていたことであっても、サークルのアイデアとして受け入れることにより、自分たちのアイデアが活きたのだということからくる高いモチベーションが生まれ、新工程立ち上がり時の大変さの克服に大きく貢献するのです。

 

以上のようなことが、それぞれのPQにどのように貢献するのかをまとめたのが表99-1ですので、表中の説明ご理解の参考にして頂けたらと思います。

 

表99-1 「7PQ・M」におけるQCサークル活動の必要性

 

最後に、表中、7PQの基盤(ベース)として「哲学の質」を挙げている点についてご説明しておきたいと思います。

 

先にご紹介した野中郁次郎氏の本に「経営は哲学なり」(ナカニシヤ出版:2012/2/10)と言うのがあるのですが、実は、結論の「TQ=7PQ・M」に至るまでに7つのPQの質の成り立ちを追求する過程で、哲学は、経営全般に限らず、そのPQにかかわった関係者の哲学的思考の質に寄ってそれぞれのPQの質が決まると言うことを痛感したための“7PQの基盤(ベース)としての「哲学の質」”なのです。従って、それぞれのPQの質を追求する際、求められる“哲学”を念頭に推進されることをお勧めしたいと思います。次回からは、QCサークル活動スパイラルアップ戦略の説明を致します。

 

 

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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