MD解析法による適材適所配属(6) 【快年童子の豆鉄砲】(その98)

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仕事

 

前回の【快年童子の豆鉄砲】(その97)MD解析法による適材適所配属(5)に続けて解説します。

2.事例1にみる「適材適所配属」のためのMD解析法の使い方(続き)

4)事例1解決のためのMD解析法のステップ展開(続き)

Step 15 :主成分の意味付けの検証

MD解析法は、複雑な解析対象を理解するために、各サンプルに対する課題に関わる多くの特性を数値化したマトリックスデータを手に入れ、各サンプルに対してはかなり的確な把握ができるものの、サンプル群の全体像が把握できない状態に対する解決策として、情報の60%程度をカバーする主成分(2つが一般的)を算出し、主成分得点の散布図から、主成分の意味付けを通じてサンプル群の全体像を把握し、諸判断のベースにしようとする手法です。

 

ただ、この主成分の意味付けは、“複雑な事象のおおよその見通しと姿の把握”を目指していますので、その“おおよそ”が、諸判断のベースたり得るのかどうかの確認をしておこうというのがこのステップでいう“検証”の意味です。

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この事例の場合の検証を下記2つの観点から実施しますのでこのステップに対するご理解の参考にして頂ければと思います。

ⅰ)因子負荷量の散布図による主成分の意味付けの検証

説明が分かりやすいように図79-1を再掲します。

 

MD

図79-1 因子負荷量の第1・第2主成分軸上の散布図

 

MD

図79-1 第1・第2主成分得点の散布図

 

この因子負荷量と言うのは、各主成分と元の特性との相関係数ですので、第1主成分と第2主成分を軸とした座標上に散布図を描くことにより、両主成分と元の特性の関係を可視化することができ、客観的な両主成分の意味付けが可能となります。その点を、上に示す図79-1を使ってご説明します。

 

この因子負荷量散布図(図79-1)は、上述しましたように、元の特性(10項目)と第1、第2主成分との相関度を示すもので、右にあるほど、第1主成分との正の相関度が高く、上に行くほどど第2主成分との正の相関度が高いことを示しています。

 

これを見ますと、知能、言語、数理、テスト、書記、運動が第1主成分との相関度が強く、空間がそれに続き、手腕と形態が第2主成分との相関度が強く、指先、運動がそれに続く格好になっており、第1主成分を「知覚能」、第2主成分を「運動能」とした主成分の意味付けは大筋で正しかったと言えます。「運動」が「知覚能」との相関度が高いのですが、実は「運動」は「運動共応」の略で、「運動共応(眼と手又は指を、正確に、かつ速やかに共応させて、迅速に作業を遂行する能力)のある人は “頭がいい”」と言う一般的感覚と通じており、第1主成分の意味付けを肯定するものと言えます。

 

ⅱ)組立係長のクレーム対象3人の位置による検証

本事例の発端となった、組立係長が手に得ないと訴えてきたN年度のサンプル3人(サンプル№11,14,17)の位置を見たところ、11と14は知覚能、運動能ともに劣る第3象限にあり頷けるのですが、17は第4象限にあり、運動能的には結構いい位置にあり、ちょっと違和感がありますので、表77-2のNo.17のデータを調べたところ、他の特性値は二人よりむしろ悪いのですが、“書記”と“形態”の項目だけが偏差値がプラスで、“書記”に至っては1.54と全体の中でも際立って高い値になっており、その影響で第4象限の位置になっていることが分かったので、そのことを係長に質したところ、“書記”に関してはむしろ平均以下とのことで、その時点では確認のしようがなかったのですが、このデータは信憑性に欠けるとの結論になったのです。

 

このように、ベテラン関係者の感触とかみ合わない結果が出たときは、解析結果をかたくなに信用するのではなく、その点に的を絞ってデータや統計量などを調査検討し、場合によっては再調査するなど柔軟な姿勢で臨むことが必要です。ベテラン関係者が違和感を覚えるような主成分解釈や解析結果をそのまま採用するのは危険です。

 

Step 16 :結論

この事例は、客先クレームに直結する組立係への新入社員の配属を従前の方法で行ったところ、問題が発生したので、手元にある10項目のマトリックスデータをMD解析法で解析し、新たな配属方法を手に入れようとするものです。

 

解析手順と結果をStep1からStep15までで説明しましたが、結論は「MD解析による第1・第2主成分得点の散布図の第3象限に位置する新入社員は、組み立てに配属しない」ということになります。この結論を検証するために、第3象限に位置する、No11と14以外の6人(No3,4,5,7,16,26)について、それぞれの上司に、組み立て係への配属の可能性の確認をしたところ、いずれも配属は無理との回答を得たので、今後は上記結論に従って組み立て係への配属をするというのが、この事例の結論になりました。

 

5)考察

この事例により、作業者能力と言う非常に複雑で把握の難しい対象を、考えられる10の側面の能力を数値化してMD解析することにより、可成り的確に総合能力を把握できることから「適材適所配属」に使える手法であることがお分かり頂けると思います。

 

ただ、この事例は、配属の失敗が起点になっていることから、作業者が、職場が求める能力と言う観点から“不向き”であることを把握して配属の判...

仕事

 

前回の【快年童子の豆鉄砲】(その97)MD解析法による適材適所配属(5)に続けて解説します。

2.事例1にみる「適材適所配属」のためのMD解析法の使い方(続き)

4)事例1解決のためのMD解析法のステップ展開(続き)

Step 15 :主成分の意味付けの検証

MD解析法は、複雑な解析対象を理解するために、各サンプルに対する課題に関わる多くの特性を数値化したマトリックスデータを手に入れ、各サンプルに対してはかなり的確な把握ができるものの、サンプル群の全体像が把握できない状態に対する解決策として、情報の60%程度をカバーする主成分(2つが一般的)を算出し、主成分得点の散布図から、主成分の意味付けを通じてサンプル群の全体像を把握し、諸判断のベースにしようとする手法です。

 

ただ、この主成分の意味付けは、“複雑な事象のおおよその見通しと姿の把握”を目指していますので、その“おおよそ”が、諸判断のベースたり得るのかどうかの確認をしておこうというのがこのステップでいう“検証”の意味です。

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この事例の場合の検証を下記2つの観点から実施しますのでこのステップに対するご理解の参考にして頂ければと思います。

ⅰ)因子負荷量の散布図による主成分の意味付けの検証

説明が分かりやすいように図79-1を再掲します。

 

MD

図79-1 因子負荷量の第1・第2主成分軸上の散布図

 

MD

図79-1 第1・第2主成分得点の散布図

 

この因子負荷量と言うのは、各主成分と元の特性との相関係数ですので、第1主成分と第2主成分を軸とした座標上に散布図を描くことにより、両主成分と元の特性の関係を可視化することができ、客観的な両主成分の意味付けが可能となります。その点を、上に示す図79-1を使ってご説明します。

 

この因子負荷量散布図(図79-1)は、上述しましたように、元の特性(10項目)と第1、第2主成分との相関度を示すもので、右にあるほど、第1主成分との正の相関度が高く、上に行くほどど第2主成分との正の相関度が高いことを示しています。

 

これを見ますと、知能、言語、数理、テスト、書記、運動が第1主成分との相関度が強く、空間がそれに続き、手腕と形態が第2主成分との相関度が強く、指先、運動がそれに続く格好になっており、第1主成分を「知覚能」、第2主成分を「運動能」とした主成分の意味付けは大筋で正しかったと言えます。「運動」が「知覚能」との相関度が高いのですが、実は「運動」は「運動共応」の略で、「運動共応(眼と手又は指を、正確に、かつ速やかに共応させて、迅速に作業を遂行する能力)のある人は “頭がいい”」と言う一般的感覚と通じており、第1主成分の意味付けを肯定するものと言えます。

 

ⅱ)組立係長のクレーム対象3人の位置による検証

本事例の発端となった、組立係長が手に得ないと訴えてきたN年度のサンプル3人(サンプル№11,14,17)の位置を見たところ、11と14は知覚能、運動能ともに劣る第3象限にあり頷けるのですが、17は第4象限にあり、運動能的には結構いい位置にあり、ちょっと違和感がありますので、表77-2のNo.17のデータを調べたところ、他の特性値は二人よりむしろ悪いのですが、“書記”と“形態”の項目だけが偏差値がプラスで、“書記”に至っては1.54と全体の中でも際立って高い値になっており、その影響で第4象限の位置になっていることが分かったので、そのことを係長に質したところ、“書記”に関してはむしろ平均以下とのことで、その時点では確認のしようがなかったのですが、このデータは信憑性に欠けるとの結論になったのです。

 

このように、ベテラン関係者の感触とかみ合わない結果が出たときは、解析結果をかたくなに信用するのではなく、その点に的を絞ってデータや統計量などを調査検討し、場合によっては再調査するなど柔軟な姿勢で臨むことが必要です。ベテラン関係者が違和感を覚えるような主成分解釈や解析結果をそのまま採用するのは危険です。

 

Step 16 :結論

この事例は、客先クレームに直結する組立係への新入社員の配属を従前の方法で行ったところ、問題が発生したので、手元にある10項目のマトリックスデータをMD解析法で解析し、新たな配属方法を手に入れようとするものです。

 

解析手順と結果をStep1からStep15までで説明しましたが、結論は「MD解析による第1・第2主成分得点の散布図の第3象限に位置する新入社員は、組み立てに配属しない」ということになります。この結論を検証するために、第3象限に位置する、No11と14以外の6人(No3,4,5,7,16,26)について、それぞれの上司に、組み立て係への配属の可能性の確認をしたところ、いずれも配属は無理との回答を得たので、今後は上記結論に従って組み立て係への配属をするというのが、この事例の結論になりました。

 

5)考察

この事例により、作業者能力と言う非常に複雑で把握の難しい対象を、考えられる10の側面の能力を数値化してMD解析することにより、可成り的確に総合能力を把握できることから「適材適所配属」に使える手法であることがお分かり頂けると思います。

 

ただ、この事例は、配属の失敗が起点になっていることから、作業者が、職場が求める能力と言う観点から“不向き”であることを把握して配属の判断に使おうという結論になっていますので「適材適所配属」には不向きと思われるかもしれませんが、解析結果をつぶさに検討したところ、本人の能力に“向いている”配属にも使えることが分かったのです。

 

その場合、課題である「離職率が高い」の解決を目指した「適材適所配属」であることを考えますと、この事例が問題なのは、本人把握データのベースが、職場が求める能力だという点です。

 

要するに、離職の原因の大きな要因が「作業者本人にとっての向き不向き」であることを考えますと、本人を把握するデータには、能力だけでなく、人間性、即ち、性格をベースにした視点が必要と思われるのですが、次回、その点に配慮した事例2をご説明しますので、参考にして頂ければと思います。

 

次回に続きます。

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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