合金状態図-1 全率固溶型 金属材料基礎講座(その17)

更新日

投稿日

 

 2種類以上の金属を溶解して凝固する時に、例えばA金属とB金属を1対1の割合で溶解して、単純にその配合通りの合金がそのまま得られることは限られます。

 多くの場合、様々な濃度の固溶体や種々の反応や化合物を形成したりします。この時に、このA、Bをどの割合で溶解した時に、どのような組織の材料が得られるかを示したのが合金状態図になります。この時2種類の合金について扱う場合、2元合金状態図と呼びます。3種類の合金の時は3元合金状態図となります。

 2元合金状態図は約5種類のパターンに分けられます。そのうちの2種類を下図に示します。状態図の表し方としては、左端に1種類目の純金属「A」を表示します。そして横軸に2種類目の金属の添加量を表します。右端は2種類目の純金属「B」になります。縦軸は温度を表します。もし、2つの金属が完全に混ざり合う時は、それぞれの融点を結んだ状態図になります。

金属材料

 図.状態図のパターン1

 それがa)の全率固溶型です。このタイプは融点は溶解初めの液相線と凝固完了の固相線の2つの線が見られるだけで、凝固完了後はその組成が変わることなく常温まで冷却されます。この合金はどの組成でも完全に固溶体を形成します。通常、状態図の表記において固溶体は、A金属の固溶体をα、B金属の固溶体をβなどのようにギリシャ文字で表示します。全率固溶型の場合、組織的にはα単相組織になります。 

 この全率固溶の変化として、途中までは完全に単相の固溶体ですが、ある温度になると2相分離するようになります。一つの固溶体の中からA金属の濃いα固溶体とB金属が濃い&al...

 

 2種類以上の金属を溶解して凝固する時に、例えばA金属とB金属を1対1の割合で溶解して、単純にその配合通りの合金がそのまま得られることは限られます。

 多くの場合、様々な濃度の固溶体や種々の反応や化合物を形成したりします。この時に、このA、Bをどの割合で溶解した時に、どのような組織の材料が得られるかを示したのが合金状態図になります。この時2種類の合金について扱う場合、2元合金状態図と呼びます。3種類の合金の時は3元合金状態図となります。

 2元合金状態図は約5種類のパターンに分けられます。そのうちの2種類を下図に示します。状態図の表し方としては、左端に1種類目の純金属「A」を表示します。そして横軸に2種類目の金属の添加量を表します。右端は2種類目の純金属「B」になります。縦軸は温度を表します。もし、2つの金属が完全に混ざり合う時は、それぞれの融点を結んだ状態図になります。

金属材料

 図.状態図のパターン1

 それがa)の全率固溶型です。このタイプは融点は溶解初めの液相線と凝固完了の固相線の2つの線が見られるだけで、凝固完了後はその組成が変わることなく常温まで冷却されます。この合金はどの組成でも完全に固溶体を形成します。通常、状態図の表記において固溶体は、A金属の固溶体をα、B金属の固溶体をβなどのようにギリシャ文字で表示します。全率固溶型の場合、組織的にはα単相組織になります。 

 この全率固溶の変化として、途中までは完全に単相の固溶体ですが、ある温度になると2相分離するようになります。一つの固溶体の中からA金属の濃いα固溶体とB金属が濃いα’固溶体が析出するのです。これは温度の低下とともに溶解度や濃度も変化します。室温ではα固溶体とα’固溶体の2相組織になります。このαとα’は同じ結晶構造になります。次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
転位強化 金属材料基礎講座(その13)

  ◆ 転位強化:金属の強化方法のその3  金属材料に引張試験を行うと、降伏応力以上になると塑性変形を起こします。  この時ひずみの増加と...

  ◆ 転位強化:金属の強化方法のその3  金属材料に引張試験を行うと、降伏応力以上になると塑性変形を起こします。  この時ひずみの増加と...


イオン 金属材料基礎講座(その50)

    ◆ イオン  多くの金属原子は電子の軌道を考えた場合、最外殻に数個の電子があります(価電子)。  金属原子の価電子の数...

    ◆ イオン  多くの金属原子は電子の軌道を考えた場合、最外殻に数個の電子があります(価電子)。  金属原子の価電子の数...


溶接の種類とは

   今回は、溶接の種類について解説します。溶接には色々な種類がありますが、鋼板は主に、抵抗溶接やアーク溶接、レーザー溶接などが使われます...

   今回は、溶接の種類について解説します。溶接には色々な種類がありますが、鋼板は主に、抵抗溶接やアーク溶接、レーザー溶接などが使われます...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...