マグネシウム製錬とは:金属材料基礎講座(その90)

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◆ マグネシウムの製造法

 マグネシウムの精製方法は大きく分けて熱還元法(ピジョン法)と電解法(Dow法、IG法など)があります。

 近年では、中国における熱還元法によってマグネシウムの8~9割が生産されています。それに対し、電解法はロシアやイスラエルで行われています。マグネシウムの資源は地殻に多く存在し、マグネシウム製錬原料としては、ドロマイト(MgCO3・CaCO3)、マグネサイト(MgCO3)、海水などがあります。

 熱還元法は原料として主にドロマイトが使用されます。熱還元法ではドロマイトに還元剤を添加し、減圧化で加熱します。そうすると、マグネシウムが還元剤によって還元され気体となります。気体状のマグネシウムを集めて冷却させると金属マグネシウムが得られます。還元剤としてはフェロシリコン(Fe-75~80%Si)が使用されます。この時の反応式を式(1)に示します。

 2MgO+2CaO+Si→2Mg(gas)+2CaO・SiO2   (1)

 通常であれば、酸化マグネシウムを還元させるにはマグネシウムよりも酸化しやすい材料を還元剤に使用する必要があります。ここで、式(1)を成立させるためには、生成したマグネシウムガスを回収して化学反応の生成量を下げることが必要です。その結果、化学平衡を利用して、マグネシウムを還元させる反応を起こすことができます。なお、熱還元法には高温が必要です。中国ではそのために石炭を使用するため、CO2が発生します。

 電解法は原料として主に海水が使用されます。原料からMgCl2(塩化マグネシウム)を製造して溶融塩電解を行います。IG法ではマグネサイト(MgCO3)を焼成したり、海水を焼ドロマイト処理して水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を生産します。

 水酸化マグネシウムを沈殿、焼成することで酸化マグネシウム(MgO)を得ます。酸化マグネ...

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◆ マグネシウムの製造法

 マグネシウムの精製方法は大きく分けて熱還元法(ピジョン法)と電解法(Dow法、IG法など)があります。

 近年では、中国における熱還元法によってマグネシウムの8~9割が生産されています。それに対し、電解法はロシアやイスラエルで行われています。マグネシウムの資源は地殻に多く存在し、マグネシウム製錬原料としては、ドロマイト(MgCO3・CaCO3)、マグネサイト(MgCO3)、海水などがあります。

 熱還元法は原料として主にドロマイトが使用されます。熱還元法ではドロマイトに還元剤を添加し、減圧化で加熱します。そうすると、マグネシウムが還元剤によって還元され気体となります。気体状のマグネシウムを集めて冷却させると金属マグネシウムが得られます。還元剤としてはフェロシリコン(Fe-75~80%Si)が使用されます。この時の反応式を式(1)に示します。

 2MgO+2CaO+Si→2Mg(gas)+2CaO・SiO2   (1)

 通常であれば、酸化マグネシウムを還元させるにはマグネシウムよりも酸化しやすい材料を還元剤に使用する必要があります。ここで、式(1)を成立させるためには、生成したマグネシウムガスを回収して化学反応の生成量を下げることが必要です。その結果、化学平衡を利用して、マグネシウムを還元させる反応を起こすことができます。なお、熱還元法には高温が必要です。中国ではそのために石炭を使用するため、CO2が発生します。

 電解法は原料として主に海水が使用されます。原料からMgCl2(塩化マグネシウム)を製造して溶融塩電解を行います。IG法ではマグネサイト(MgCO3)を焼成したり、海水を焼ドロマイト処理して水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を生産します。

 水酸化マグネシウムを沈殿、焼成することで酸化マグネシウム(MgO)を得ます。酸化マグネシウムを石炭と固めて、塩化炉にて塩素と反応させて無水塩化マグネシウムを製造します。これを電気分解してマグネシウムを精製します。Dow法では海水に石灰乳(Ca(OH2))を加えてMg(OH)2を作り、沈殿ろ過後に塩酸(HCl)を加えて加熱・脱水によりMgCl2・1.25H2Oを製造します。これを電気分解してマグネシウムを精製します。


 次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

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