マクロ偏析 金属材料基礎講座(その20)

更新日

投稿日

 

 マクロ偏析はミクロ偏析と金属の凝固組織を合わせたような形になります。合金の凝固において、初めに凝固した方が合金濃度が薄いです。そして金属の凝固では、凝固は冷却速度の速い鋳型部分からはじまり、冷却速度が遅い中心部に向けて進行します。そのため、先に凝固する鋳型付近は濃度が薄く、中心に進むにつれて濃度が高くなる傾向があるのです。その様子を下図に示します。

金属材料

 図. マクロ偏析の模式図

 このときの組織をよく樹枝状晶とかデンドライトと言ったりします。材料によっては表面から中心に向かって直線的に濃度が変わることもあれば、表面が薄く、中間は一定で中心に濃度が濃い部分が集まることもあります。そして、合金元素だけでなく、いわゆる不純物介在物なども、材料中に一定量いますが、合金元素と同様に最終凝固部分に集まる傾向があります。

 機械的性質を改善するために、均質化処理などの熱処理や鍛造などで均一で微細な組織にします。しかし、偏析が大きい場合、そこ...

 

 マクロ偏析はミクロ偏析と金属の凝固組織を合わせたような形になります。合金の凝固において、初めに凝固した方が合金濃度が薄いです。そして金属の凝固では、凝固は冷却速度の速い鋳型部分からはじまり、冷却速度が遅い中心部に向けて進行します。そのため、先に凝固する鋳型付近は濃度が薄く、中心に進むにつれて濃度が高くなる傾向があるのです。その様子を下図に示します。

金属材料

 図. マクロ偏析の模式図

 このときの組織をよく樹枝状晶とかデンドライトと言ったりします。材料によっては表面から中心に向かって直線的に濃度が変わることもあれば、表面が薄く、中間は一定で中心に濃度が濃い部分が集まることもあります。そして、合金元素だけでなく、いわゆる不純物介在物なども、材料中に一定量いますが、合金元素と同様に最終凝固部分に集まる傾向があります。

 機械的性質を改善するために、均質化処理などの熱処理や鍛造などで均一で微細な組織にします。しかし、偏析が大きい場合、そこだけ取り除く必要がでてくることもあります。また、液相線と固相線の温度範囲が広いと、凝固が進むラインが複雑になるため、小さい欠陥・空孔のミクロポロシティが生成しやすくなります。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
研磨作業とは:金属材料基礎講座(その115) 研磨作業、研磨盤

【目次】 1. 日本とアメリカで規格が異る研磨紙 組織観察試料用に砥石などで切断した面や埋込をした直後の状態は見た目では平らですが...

【目次】 1. 日本とアメリカで規格が異る研磨紙 組織観察試料用に砥石などで切断した面や埋込をした直後の状態は見た目では平らですが...


液相面投影図と等温切断面:金属材料基礎講座(その177) 

  ◆ 液相面投影図と等温切断面 三元系状態図の表示方法として、立体的な図形で表示することよりも、真上から見た図や、ある温度における平面...

  ◆ 液相面投影図と等温切断面 三元系状態図の表示方法として、立体的な図形で表示することよりも、真上から見た図や、ある温度における平面...


シュミット因子 金属材料基礎講座(その39)

  ♦ すべり系とシュミット因子 金属材料はすべり運動によって塑性(そせい)変形が起きます。 そしてすべり面は最密充填構造です...

  ♦ すべり系とシュミット因子 金属材料はすべり運動によって塑性(そせい)変形が起きます。 そしてすべり面は最密充填構造です...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...