亜鉛製錬とは:金属材料基礎講座(その92)

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亜鉛製錬

 

◆ 亜鉛製錬:湿式製錬と乾式製錬

 亜鉛の製錬は主に湿式製錬と乾式製錬があります。そして亜鉛の原料としては主に閃(せん)亜鉛鉱(ZnS)[1]が使用されます。亜鉛製錬では、湿式製錬も乾式製錬もまず最初に閃亜鉛鉱を酸化させて酸化亜鉛にします。これを酸化焙焼(ばいしょう)と呼び、式(1)に示します。

2ZnS+3O2→2ZnO+2SO2  (1)

 湿式製錬では酸化亜鉛を硫酸に溶解した後、電解採取して電極に亜鉛を析出させます。このようにして精製した亜鉛を電気亜鉛と呼び、純度は99.99% になります。亜鉛の多くはこの湿式製錬によって生産されます。

 乾式製錬では酸化亜鉛をコークスと一緒に加熱して還元します。亜鉛は沸点が907℃のため、生成した亜鉛は気体となります。この亜鉛蒸気に液状の鉛を吸収させます。ここで、亜鉛と鉛は温度が低下すると、液相状態で亜鉛と鉛が二相分離するため、純粋な亜鉛が得られます。しかし、乾式製錬では鉛が混入するので電気亜鉛の方が純度が高いです。

 

 次回に続きます。

【用語解説】

 [1]閃亜鉛鉱:閃亜鉛鉱(せんあえんこう、sphalerite、スファレライトまたはzincblende)は亜鉛の硫化鉱物である。性質:硫化亜鉛であり、純粋なものは白 - 黄色透明であるが、天然に産する閃亜鉛鉱は濃赤 - 黒色不透明が多く、透明なものは非常に希(まれ)である。これは不純物として含まれる鉄のためであり、色が白→黄色→橙→赤→濃赤→黒と右に行くほど鉄の含有率が高くなる。鉄は最高26%まで含まれ、鉄含有率の高いものは鉄閃亜鉛鉱とも呼ばれる。また少量のカドミウムを含み、カドミウム含有率が高くなるに従い赤みが強くなる(カドミウム含有率は最大5%)。鉄に乏しい褐色のものはべっ甲のような見た目になるため「べっ甲亜鉛」と呼ばれることもある。強い樹脂光沢またはダイヤモンド光沢を持ち、屈折率2.37。完全な劈開(へきか...

亜鉛製錬

 

◆ 亜鉛製錬:湿式製錬と乾式製錬

 亜鉛の製錬は主に湿式製錬と乾式製錬があります。そして亜鉛の原料としては主に閃(せん)亜鉛鉱(ZnS)[1]が使用されます。亜鉛製錬では、湿式製錬も乾式製錬もまず最初に閃亜鉛鉱を酸化させて酸化亜鉛にします。これを酸化焙焼(ばいしょう)と呼び、式(1)に示します。

2ZnS+3O2→2ZnO+2SO2  (1)

 湿式製錬では酸化亜鉛を硫酸に溶解した後、電解採取して電極に亜鉛を析出させます。このようにして精製した亜鉛を電気亜鉛と呼び、純度は99.99% になります。亜鉛の多くはこの湿式製錬によって生産されます。

 乾式製錬では酸化亜鉛をコークスと一緒に加熱して還元します。亜鉛は沸点が907℃のため、生成した亜鉛は気体となります。この亜鉛蒸気に液状の鉛を吸収させます。ここで、亜鉛と鉛は温度が低下すると、液相状態で亜鉛と鉛が二相分離するため、純粋な亜鉛が得られます。しかし、乾式製錬では鉛が混入するので電気亜鉛の方が純度が高いです。

 

 次回に続きます。

【用語解説】

 [1]閃亜鉛鉱:閃亜鉛鉱(せんあえんこう、sphalerite、スファレライトまたはzincblende)は亜鉛の硫化鉱物である。性質:硫化亜鉛であり、純粋なものは白 - 黄色透明であるが、天然に産する閃亜鉛鉱は濃赤 - 黒色不透明が多く、透明なものは非常に希(まれ)である。これは不純物として含まれる鉄のためであり、色が白→黄色→橙→赤→濃赤→黒と右に行くほど鉄の含有率が高くなる。鉄は最高26%まで含まれ、鉄含有率の高いものは鉄閃亜鉛鉱とも呼ばれる。また少量のカドミウムを含み、カドミウム含有率が高くなるに従い赤みが強くなる(カドミウム含有率は最大5%)。鉄に乏しい褐色のものはべっ甲のような見た目になるため「べっ甲亜鉛」と呼ばれることもある。強い樹脂光沢またはダイヤモンド光沢を持ち、屈折率2.37。完全な劈開(へきかい)を持つ。新鮮な結晶面や、割ったときの壁開面に光が当たると非常に良く反射して見える。しかし長期間野外などに晒され続けると光輝はなくなってしまう。結晶構造は閃亜鉛鉱型構造と呼ばれるものである。結晶は四面体、八面体、十二面体などをなす(引用:Wikipediaから、https://ja.wikipedia.org/、最終更新 2021年3月13日 )。

 

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

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