
1. 残留オーステナイトとは何か
オーステナイト[1]を急冷するとマルテンサイト組織ができますが、Ms点、Mf点は炭素量によって温度が変化します。そのグラフを図1に示します。

図1. Ms、Mf点と炭素量の関係
炭素量が約0.6~0.7%になるとMf点が室温以下になります。そのため、焼入れしても鉄鋼材料全体がマルテンサイト組織にならずにオーステナイトが一部残ることになります。これを残留オーステナイトと呼びます。
(1)残留オーステナイトとマルテンサイトの違い
Mf点は鋼の炭素量が増加すると低下するため、炭素量の高い鋼ほど残留オーステナイトが見られます。もし、残留オーステナイトもマルテンサイトにするときはサブゼロ処理という室温以下の温度に焼入れることによってマルテンサイト組織にすることができます。
残留オーステナイトは時間の経過や応力などによってマルテンサイトに変態することがあります。すると寸法変化が起こります。これが残留オーステナイトの欠点です。また残留オーステナイトは強度が低く、組織的にも不安定な組織ですが、靭性もあるため割れなどを防ぐことができます。そのため残留オーステナイトを有効利用することもあります。
2. 残留オーステナイトが材料特性に与える影響
(1)多量の残留オーステナイトが存在する場合の利点
残留オーステナイトは、金属材料、特に鋼において、熱処理や冷却過程で形成される相の一つです。多量の残留オーステナイトが存在する場合、いくつかの利点があります。まず、残留オーステナイトは、材料の靭性を向上させる効果があります。オーステナイトは高温での安定相であり、冷却時にマルテンサイトに変態することが一般的ですが、残留オーステナイトが多いと、マルテンサイトの脆性を緩和し、衝撃に対する耐性が向上します。これにより、材料が破損しにくくなります。
次に、残留オーステナイトは、疲労強度を向上させることが知られています。オーステナイトは、変形に対して柔軟性を持つため、繰り返し荷重に対する耐性が高まります。これにより、長期間の使用においても、材料の性能が維持されやすくなります。
さらに、残留オーステナイトは、耐食性を向上させる要因ともなります。オーステナイトは、特に高温環境下での酸化や腐食に対して優れた耐性を示すため、これが材料の寿命を延ばすことに寄...





