◆ 微生物腐食:そのメカニズムと対策
細菌やバクテリアの活動によって起こる腐食を微生物腐食といいます。微生物腐食と聞くと、微生物が金属を分解するように感じますが、実際は微生物が生成する代謝物で腐食が起こる現象です。
細菌は淡水や海水、土壌など普通に存在しています。細菌は酸素の少ない環境で繁殖する嫌気性細菌と酸素の多い環境で繁殖する好気性細菌に大別できます。微生物腐食に関係する細菌として、嫌気性細菌では硫酸塩還元菌、好気性細菌では硫黄酸化細菌、鉄酸化細菌などがあります。好気性細菌は水中有機物の酸素を消費しながら分解しますが、水が汚れて汚泥などが堆積(たいせき)すると、その底部には酸素が行き届かなくなり嫌気性細菌が繁殖しやすくなります。
嫌気性細菌の硫酸塩還元菌は硫酸イオンから硫黄イオン、硫化水素、硫化水素イオンなどの硫化物を生成します。これら硫化物が鉄と反応して硫化鉄(Ⅱ)[1]などの腐食生成物が生じます。一方、好気性細菌の硫黄酸化細菌は硫化水素や硫黄から硫酸を生成します。この硫酸が鉄を腐食します。その様子を図1に示します。
図1.微生物腐食
嫌気性細菌が硫化水素を生成し、好気性細菌が硫化水素を原料とするので、両者が共存すると大きな微生物腐食が起こります。微生物腐食の対策としては殺菌が有効なため、次亜塩素酸ナトリウムの継続的な添加が有効です。しかし次亜塩素酸ナトリウムは酸化剤のため添加量を多くしてしまうと、他の腐食を引き起こす可能性があります。
次回に続きます。
【用語解説】
[1]硫化鉄(Ⅱ):硫化鉄(II)(りゅうかてつ(...