チタン製錬とは:金属材料基礎講座(その91)

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金属:チタン

 

◆ チタンの製造プロセス:クロール法でスポンジチタンを製造

 チタンの資源は豊富です。チタンは活性金属であり酸素との親和力も強いのですが、鉱石から金属チタンに製錬するのは困難です。チタン製錬の原料として天然ルチル(TiO2)、イルメナイト(チタン鉄鉱・FeTiO3)などがあります。そして、チタン製錬には純度の高いTiO2が使用されます。高純度の天然ルチルはそのまま使用できますが、それ以外ではイルメナイトを製錬し、合成ルチルとして原料にします。他にはチタンスラグなども原料となります。

 チタン製錬はクロール法と呼ばれる方法で行われます。これは酸化チタンを塩素と反応させ四塩化チタンを製造、それをマグネシウムで還元してスポンジチタンを製造する方法です。まず原料とコークスを炉にセットし、塩素ガスを流して約1000℃で反応させ、四塩化チタンを製造します。酸化チタンから四塩化チタンを得る反応を式(1)に示します。

TiO2+2Cl2+2C→TiCl4+2CO  (1)

 生成した四塩化チタンは気体です。気体の四塩化チタンを冷却させる時に鉄(塩化鉄となっている)などの不純物も除去し、高純度の液体の四塩化チタンを得ます。この四塩化チタンをマグネシウムで還元します。塩素はチタンよりマグネシウムの方が結びつきやすいので、塩化マグネシウムとなります。この反応を式(2)に示します。

TiCl4+2Mg→Ti+MgCl2  (2)

 式(2)の反応はステンレス製の容器内でアルゴン雰囲気中にて行われます。溶解したマグネシウムの中に四塩化チタンを滴下して行われます。温度は約800℃で反応しますが、マグネシウムの還元反応は発熱反応のため、還元反応が起きた後は温度を上げ過ぎないように制御します。

 還元反応後、真空分離によってTi(チタン)に残るMg(マグネシウム)やMgCl2...

金属:チタン

 

◆ チタンの製造プロセス:クロール法でスポンジチタンを製造

 チタンの資源は豊富です。チタンは活性金属であり酸素との親和力も強いのですが、鉱石から金属チタンに製錬するのは困難です。チタン製錬の原料として天然ルチル(TiO2)、イルメナイト(チタン鉄鉱・FeTiO3)などがあります。そして、チタン製錬には純度の高いTiO2が使用されます。高純度の天然ルチルはそのまま使用できますが、それ以外ではイルメナイトを製錬し、合成ルチルとして原料にします。他にはチタンスラグなども原料となります。

 チタン製錬はクロール法と呼ばれる方法で行われます。これは酸化チタンを塩素と反応させ四塩化チタンを製造、それをマグネシウムで還元してスポンジチタンを製造する方法です。まず原料とコークスを炉にセットし、塩素ガスを流して約1000℃で反応させ、四塩化チタンを製造します。酸化チタンから四塩化チタンを得る反応を式(1)に示します。

TiO2+2Cl2+2C→TiCl4+2CO  (1)

 生成した四塩化チタンは気体です。気体の四塩化チタンを冷却させる時に鉄(塩化鉄となっている)などの不純物も除去し、高純度の液体の四塩化チタンを得ます。この四塩化チタンをマグネシウムで還元します。塩素はチタンよりマグネシウムの方が結びつきやすいので、塩化マグネシウムとなります。この反応を式(2)に示します。

TiCl4+2Mg→Ti+MgCl2  (2)

 式(2)の反応はステンレス製の容器内でアルゴン雰囲気中にて行われます。溶解したマグネシウムの中に四塩化チタンを滴下して行われます。温度は約800℃で反応しますが、マグネシウムの還元反応は発熱反応のため、還元反応が起きた後は温度を上げ過ぎないように制御します。

 還元反応後、真空分離によってTi(チタン)に残るMg(マグネシウム)やMgCl2を蒸発除去して金属Tiが得られます。この時のTiがスポンジのような空隙があるためスポンジチタンと呼ばれます。また、塩化マグネシウムは溶融塩電解法によって塩素ガスとマグネシウムに分離され、それぞれ再利用されます。また、マグネシウムではなく、ナトリウムで四塩化チタンを還元する方法をハンター法といいます。

 

 次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

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