ギブスの自由エネルギー 金属材料基礎講座(その9)

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金属材料

◆ ギブスの自由エネルギー

 金属材料に限らず水などにおいても、自然界の物質は固体、液体、気体の3つの状態があります。

 熱力学的な話になりますが、これらの状態は温度と圧力によって、どの状態が安定状態になるか決まります。ここで色々な状態を表す用語があります。

  • 系:外界と独立した1つまたはそれ以上の物質の集合。例えば2元系合金状態図の「系」などです。
  • 相:原子配列(結晶構造)などが同じで、他の領域と区別されるもの。固体、液体、気体をそれぞれ固相、液相、気相と言います。

 例えば、氷水などのように固相、液相が分かれているものは固・液2相となり、水と油のように液相同士だけど境目がはっきりしているものは液・液2相となります。

  • 凝固:液相から固相に固まること。その温度を凝固点と言います。
  • 溶解:固相から液相に溶けること。その温度を融点と言います。
  • 析出:固相から固相が現れること。ジュラルミン合金の時効析出などです。
  • 拡散:金属内を原子が移動することです。これは同一金属原子の中でも金属原子の移動が起こる自己拡散と2つの物質の間で原子の移動が起こり、全体的に濃度が均一な方向に動くことを相互拡散と言います。均質化熱処理などはこれに相当します。

 ギブスの自由エネルギーは以下の式のように表されます。

  G=PV+U-TS

  G:全体としての自由エネルギー。低い方が安定します。
  P:圧力。
  V:体積。
  U:内部エネルギー(エンタルピー)...

 

金属材料

◆ ギブスの自由エネルギー

 金属材料に限らず水などにおいても、自然界の物質は固体、液体、気体の3つの状態があります。

 熱力学的な話になりますが、これらの状態は温度と圧力によって、どの状態が安定状態になるか決まります。ここで色々な状態を表す用語があります。

  • 系:外界と独立した1つまたはそれ以上の物質の集合。例えば2元系合金状態図の「系」などです。
  • 相:原子配列(結晶構造)などが同じで、他の領域と区別されるもの。固体、液体、気体をそれぞれ固相、液相、気相と言います。

 例えば、氷水などのように固相、液相が分かれているものは固・液2相となり、水と油のように液相同士だけど境目がはっきりしているものは液・液2相となります。

  • 凝固:液相から固相に固まること。その温度を凝固点と言います。
  • 溶解:固相から液相に溶けること。その温度を融点と言います。
  • 析出:固相から固相が現れること。ジュラルミン合金の時効析出などです。
  • 拡散:金属内を原子が移動することです。これは同一金属原子の中でも金属原子の移動が起こる自己拡散と2つの物質の間で原子の移動が起こり、全体的に濃度が均一な方向に動くことを相互拡散と言います。均質化熱処理などはこれに相当します。

 ギブスの自由エネルギーは以下の式のように表されます。

  G=PV+U-TS

  G:全体としての自由エネルギー。低い方が安定します。
  P:圧力。
  V:体積。
  U:内部エネルギー(エンタルピー)。
  T:温度。
  S:エントロピー。

 金属材料の場合、圧力は大気圧でほぼ一定として扱うことが多いため、実質的には第1項目を省略した以下の式になります。

  G=U-TS

 上述の凝固、溶解、析出などの現象はこの自由エネルギーの変化として起こることなのです。

 次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

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