耐食材料と環境制御:金属材料基礎講座(その83)

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耐食材料と環境制御:金属材料基礎講座(その83)

【目次】

    1.耐食材料:腐食環境に適した材料を選ぶ

     耐食材料とは炭素鋼よりも、耐食性のよいステンレス鋼などを使用することです。ステンレス鋼は鉄にクロムを添加し、不動態皮膜を形成することで耐食性を高めた材料です。

     日常的な環境では優れた耐食性を示しますが、炭素鋼と比べるとコスト高です。炭素鋼よりも耐食性のある材料は、ステンレス鋼以外ですと耐候性鋼などがあります。

     耐食材料を使用する場合、使用する材料コストだけでなく、その後のメンテナンスコストも考慮した総合的な評価をしなければなりません。またステンレス鋼でも、塩化物イオンの多い海岸付近の環境では孔食などの腐食が起きます。そしてステンレス鋼の種類もたくさんあるので、耐孔食に優れたステンレス鋼と...

    耐食材料と環境制御:金属材料基礎講座(その83)

    【目次】

      1.耐食材料:腐食環境に適した材料を選ぶ

       耐食材料とは炭素鋼よりも、耐食性のよいステンレス鋼などを使用することです。ステンレス鋼は鉄にクロムを添加し、不動態皮膜を形成することで耐食性を高めた材料です。

       日常的な環境では優れた耐食性を示しますが、炭素鋼と比べるとコスト高です。炭素鋼よりも耐食性のある材料は、ステンレス鋼以外ですと耐候性鋼などがあります。

       耐食材料を使用する場合、使用する材料コストだけでなく、その後のメンテナンスコストも考慮した総合的な評価をしなければなりません。またステンレス鋼でも、塩化物イオンの多い海岸付近の環境では孔食などの腐食が起きます。そしてステンレス鋼の種類もたくさんあるので、耐孔食に優れたステンレス鋼となりますと、高価になります。例えば一般的なステンレス鋼としてSUS304(18Cr-8Ni)がありますが、これにモリブデンを添加したSUS316は、SUS304よりも孔食が起こりにくいのです。

       また、腐食環境は塩化物イオン以外にもアンモニア、硫黄ガスなど、さまざまな種類があります。銅合金は一般的には炭素鋼よりも耐食性は優れていますが、アンモニア環境には弱いです。耐食材料を選ぶ際は、腐食環境に適した材料を選ぶ必要があります。

       

      2.環境制御:水(湿度)と酸素を除去し腐食抑える

       防食の4つ目の方法として環境制御があります。環境制御とは、腐食反応物質の除去または腐食抑制物質の添加です。

       腐食反応物質はたくさんありますが、水(湿度)と酸素を除去することで、腐食をかなり抑えることができます。腐食抑制物質はインヒビター、防錆(ぼうせい)剤、防食剤などと呼ばれています。防錆油などはその一例です。防錆油は完全に腐食を無くすことはできませんが、安価で容易に使用できるうえ、腐食速度を下げる効果があります。

       鉄鋼材料の場合、相対湿度を約60%以下に下げることで防食の効果があります。これは湿度を下げることで、水の凝縮を防ぐことができるからです。密閉した容器などで比較的簡単に湿度を下げる方法として、乾燥剤やシリカゲルなどがあります。これらは空気中の水分を吸収するため、湿度を下げることができます。

       酸素の除去とは、主に水中の溶存酸素量を低下させることです。密閉した容器であれば空気中の酸素を減少させること(減圧)、窒素など他の気体に置換することができます。配水管などは赤水防止のために脱酸素剤が使用されます。脱酸素剤としてヒドラジンがありますが、毒性があるため、脱ヒドラジンの脱酸素剤も使用されています。

       

       次回に続きます。

      ◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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      この記事の著者

      福﨑 昌宏

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


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