銅製錬とは:金属材料基礎講座(その88)

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◆ 銅製錬

 銅製錬として基本となるのが自溶炉-電解精製法です。自溶炉-電解精製法の流れを図1に示します。

金属

図1.銅製錬の工程

 現在、日本の銅鉱山はほとんど閉山していますので、銅の原料はほぼ全て海外から輸入しています。銅製錬の主な原料となるのは黄銅鉱(CuFeS2)という硫化物の鉱石です。しかし、鉱山から採掘した銅鉱石はそのままでは純度が低いので浮遊選鉱と呼ばれる方法で銅の含有量を高くします。浮遊選鉱を行った銅鉱石を銅精鉱と呼びます。銅精鉱の銅含有量は約30%になります。

金属

図2. 反応式

 銅精鉱をまずは珪石(けいせき・SiO2)と一緒に自溶炉に投入します。自溶炉の反応を図2の(1)式に示します。自溶炉では黄銅鉱のFe(鉄)、S(硫黄)が酸素によって酸化反応が起こります。そして、この時の反応熱で黄銅鉱や珪石が溶解します。自溶炉を経た銅はFe、Sとともにマットと呼ばれる状態になります。マットの銅含有量は約60%です。またFeO(ウスタイト)はSiO2と結びつきスラグとなり、SO2はガスとして排出され、硫酸として回収されます。

 マットは転炉によってFe、Sが除去され純度約99%の銅となります。転炉の反応を図2の(2)式に示します。ここでもFe、Sが酸素との酸化反応によってFeOはSiO2とスラグとなり、SO2(亜硫酸ガス)は排ガスとなります。転炉で生成されたスラグの方が自溶炉のスラグよりも銅含有量が高くなります。転炉によって生成された銅を粗銅と呼びます。

 粗銅には酸素が含まれているので、精製炉にてブタンなどのガスを流して酸素を還元除去します。これによって銅の純度は約99.5%になります。この時の銅を精製粗銅と呼びます。これをアノード電極用に鋳造(ちゅうぞう)します。

 アノード電極の銅を、硫酸銅水溶液を張った電気分解層に、ステンレス板または元となる銅のカソードと交互に挿入して直流電流を流します。アノードでは銅以外の金属元素も溶解しますが、銅よりイオン化傾向の大きいNi(ニッケル)などはカソ...

 

◆ 銅製錬

 銅製錬として基本となるのが自溶炉-電解精製法です。自溶炉-電解精製法の流れを図1に示します。

金属

図1.銅製錬の工程

 現在、日本の銅鉱山はほとんど閉山していますので、銅の原料はほぼ全て海外から輸入しています。銅製錬の主な原料となるのは黄銅鉱(CuFeS2)という硫化物の鉱石です。しかし、鉱山から採掘した銅鉱石はそのままでは純度が低いので浮遊選鉱と呼ばれる方法で銅の含有量を高くします。浮遊選鉱を行った銅鉱石を銅精鉱と呼びます。銅精鉱の銅含有量は約30%になります。

金属

図2. 反応式

 銅精鉱をまずは珪石(けいせき・SiO2)と一緒に自溶炉に投入します。自溶炉の反応を図2の(1)式に示します。自溶炉では黄銅鉱のFe(鉄)、S(硫黄)が酸素によって酸化反応が起こります。そして、この時の反応熱で黄銅鉱や珪石が溶解します。自溶炉を経た銅はFe、Sとともにマットと呼ばれる状態になります。マットの銅含有量は約60%です。またFeO(ウスタイト)はSiO2と結びつきスラグとなり、SO2はガスとして排出され、硫酸として回収されます。

 マットは転炉によってFe、Sが除去され純度約99%の銅となります。転炉の反応を図2の(2)式に示します。ここでもFe、Sが酸素との酸化反応によってFeOはSiO2とスラグとなり、SO2(亜硫酸ガス)は排ガスとなります。転炉で生成されたスラグの方が自溶炉のスラグよりも銅含有量が高くなります。転炉によって生成された銅を粗銅と呼びます。

 粗銅には酸素が含まれているので、精製炉にてブタンなどのガスを流して酸素を還元除去します。これによって銅の純度は約99.5%になります。この時の銅を精製粗銅と呼びます。これをアノード電極用に鋳造(ちゅうぞう)します。

 アノード電極の銅を、硫酸銅水溶液を張った電気分解層に、ステンレス板または元となる銅のカソードと交互に挿入して直流電流を流します。アノードでは銅以外の金属元素も溶解しますが、銅よりイオン化傾向の大きいNi(ニッケル)などはカソードに析出できずに溶液に溶出したままです。一方、銅よりもイオン化傾向の小さいAu(金)やAg(銀)などは溶液に溶出できず、そのまま沈殿してアノードスライムとなります。アノードスライムは貴金属の資源として回収されます。

 約10日間通電を行い、ステンレス板からはがして電解精製の銅が完成します。電解精製によって最終的には銅の純度は99.99%まで高められます。

 

 次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

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