エッチングと腐食とは:金属材料基礎講座(その118)

投稿日

エッチングと腐食とは:金属材料基礎講座(その117)

 

金属組織観察で行われるエッチングは腐食の一種です。一方で、赤さびなどの腐食はコロージョンと呼ばれます。どちらも金属表面が溶解したり反応しますが、それぞれエッチングとコロージョンと呼び区別しています。エッチングの基礎である腐食反応は式(1)、(2)の反応が研磨した試料表面で起きます。

  • アノード(酸化)反応:Fe → Fe2+ + 2e (1)
  • カソード(還元)反応:2H+ + 2e → H2 (2)

 

アノード反応とカソード反応は対になって起きます。アノード反応とカソード反応が絶えず場所を変えながら反応が起きると、全体的に腐食する全面腐食が起きます。しかし、エッチングでは結晶粒界や特定の相が優先的に腐食するように行われています。

 

腐食されやすい場所はアノード反応を起こして溶解し、腐食されにくい場所はカソードとなり、研磨仕上げの光沢を保ちます。このようにしてエッチングによる凹凸が形成されます。エッチング時間が短ければ、アノード反応の凹凸が小さく、金属組織が薄くわかりづらいものになります。

 

しかし、エッチング時間を長くしすぎると、必要以上に腐食してしまい、全体的に黒くなってしまいます。エッチング時間は金属組織を確認しながら、ちょうど良いコントラストとなる時間を決めることが重要です。

 

また、直接金属組織を写真撮影する顕微鏡のモニターとデータをまとめるPCモニターでも見え方が異なることがあります。顕微鏡組織も報告書資料となることが多いので、その時に組織が良く見えるコントラストとなるようにエッチングを行います。

 

エッチング後はエッチング液をよく洗浄し、乾燥させます。エッチング液が試料と樹脂のすき間などに残っていると、そこから腐食してしまいます。エッチング後の試料は空気や湿度に触れないようにデシケーターなどに保管するとよいです。

 

エッチング液の多くは硝酸や塩酸などの酸のほか、フッ酸、エタノール、過酸化水素など腐食性、引火性のある薬品を多く扱います。そのため、保護具や換気などの安全面、環境面に十分注意して作業を行うことが重要です。

 

次回に続きます。

関連解説記...

エッチングと腐食とは:金属材料基礎講座(その117)

 

金属組織観察で行われるエッチングは腐食の一種です。一方で、赤さびなどの腐食はコロージョンと呼ばれます。どちらも金属表面が溶解したり反応しますが、それぞれエッチングとコロージョンと呼び区別しています。エッチングの基礎である腐食反応は式(1)、(2)の反応が研磨した試料表面で起きます。

  • アノード(酸化)反応:Fe → Fe2+ + 2e (1)
  • カソード(還元)反応:2H+ + 2e → H2 (2)

 

アノード反応とカソード反応は対になって起きます。アノード反応とカソード反応が絶えず場所を変えながら反応が起きると、全体的に腐食する全面腐食が起きます。しかし、エッチングでは結晶粒界や特定の相が優先的に腐食するように行われています。

 

腐食されやすい場所はアノード反応を起こして溶解し、腐食されにくい場所はカソードとなり、研磨仕上げの光沢を保ちます。このようにしてエッチングによる凹凸が形成されます。エッチング時間が短ければ、アノード反応の凹凸が小さく、金属組織が薄くわかりづらいものになります。

 

しかし、エッチング時間を長くしすぎると、必要以上に腐食してしまい、全体的に黒くなってしまいます。エッチング時間は金属組織を確認しながら、ちょうど良いコントラストとなる時間を決めることが重要です。

 

また、直接金属組織を写真撮影する顕微鏡のモニターとデータをまとめるPCモニターでも見え方が異なることがあります。顕微鏡組織も報告書資料となることが多いので、その時に組織が良く見えるコントラストとなるようにエッチングを行います。

 

エッチング後はエッチング液をよく洗浄し、乾燥させます。エッチング液が試料と樹脂のすき間などに残っていると、そこから腐食してしまいます。エッチング後の試料は空気や湿度に触れないようにデシケーターなどに保管するとよいです。

 

エッチング液の多くは硝酸や塩酸などの酸のほか、フッ酸、エタノール、過酸化水素など腐食性、引火性のある薬品を多く扱います。そのため、保護具や換気などの安全面、環境面に十分注意して作業を行うことが重要です。

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

 

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
初晶のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その173) わかりやすく解説

  ◆ 初晶のある偏晶組織の量的計算 偏晶状態図の初晶が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模...

  ◆ 初晶のある偏晶組織の量的計算 偏晶状態図の初晶が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模...


相律 金属材料基礎講座(その10)

  ◆ 相律  ギブスの相律とも言いますが、単に相律とも言います。通常、1つの系を扱う時に成分が 1つだけの時と 2種類以上の時がありま...

  ◆ 相律  ギブスの相律とも言いますが、単に相律とも言います。通常、1つの系を扱う時に成分が 1つだけの時と 2種類以上の時がありま...


EDSとWDS:金属材料基礎講座(その125) SEMの元素分析器とは

  【目次】 1. EDSとWDS SEMの元素分析器としてEDS(Energy Dispersive X-ray S...

  【目次】 1. EDSとWDS SEMの元素分析器としてEDS(Energy Dispersive X-ray S...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...