溶接の検証不足による不具合発生とは 中国企業の壁(その30)

投稿日

 
 生産マネジメント
 
 天津地区は、鋼材(鉄材)の加工・組立製品の生産が盛んです。鋼材は表面をメッキをする必要がありますが、溶融亜鉛メッキなどのメッキ業者もたくさんあります。
 
 華南地域にある中国企業が鋼材の構造物を天津の加工業者に発注し、メッキも同じ地区にあるメッキ業者が行いました。
 
 同じものを他の地域で作るよりも安くできるのは間違いありません。鉄という重量物の運賃を考慮してもコストメリットが出るので、わざわざ遠く離れた天津の加工業者に作らせているのです。
 
 今回の構造物は、鉄のアングルが重なった部分を溶接で継ぐ設計としていたのですが、全面溶接とはせず点溶接としました。それでも強度は十分保てるという判断でした。
 
 サンプル製品が納品され強度などを確認して問題がなかったので、顧客にもサンプル出荷し、評価OKとなりました。ところが、初回量産品が納入され検査をしたところ、溶接部に錆が発生しているものがいくつか見つかりました。
 
 原因を調査していくと、鉄のアングルが重なっているところに隙間(空間)があり、点溶接だったためにメッキ工程の前処理で行う酸洗の液が隙間に入り込み、メッキ後もその酸洗液が残留していたことがわかりました。
 
 溶融亜鉛メッキのメッキ液が、その隙間には流れ込むのは難しいと思われ、前処理で入り込んだ酸洗液が追い出されることなく残留したということです。その酸洗液がメッキ後に流れ出して、他の部分と比べてメッキのりがよくない溶接部に付着し錆を発生させたというのが真相のようです。
 
 設計部スタッフが設計した時に鉄のアングルを重ねれば、そこに隙間ができることはわかったはずです。全面溶接にすれば、隙間を塞いでしまうことができたのですが、点溶接にしたことで隙間が存在すること...
 
 生産マネジメント
 
 天津地区は、鋼材(鉄材)の加工・組立製品の生産が盛んです。鋼材は表面をメッキをする必要がありますが、溶融亜鉛メッキなどのメッキ業者もたくさんあります。
 
 華南地域にある中国企業が鋼材の構造物を天津の加工業者に発注し、メッキも同じ地区にあるメッキ業者が行いました。
 
 同じものを他の地域で作るよりも安くできるのは間違いありません。鉄という重量物の運賃を考慮してもコストメリットが出るので、わざわざ遠く離れた天津の加工業者に作らせているのです。
 
 今回の構造物は、鉄のアングルが重なった部分を溶接で継ぐ設計としていたのですが、全面溶接とはせず点溶接としました。それでも強度は十分保てるという判断でした。
 
 サンプル製品が納品され強度などを確認して問題がなかったので、顧客にもサンプル出荷し、評価OKとなりました。ところが、初回量産品が納入され検査をしたところ、溶接部に錆が発生しているものがいくつか見つかりました。
 
 原因を調査していくと、鉄のアングルが重なっているところに隙間(空間)があり、点溶接だったためにメッキ工程の前処理で行う酸洗の液が隙間に入り込み、メッキ後もその酸洗液が残留していたことがわかりました。
 
 溶融亜鉛メッキのメッキ液が、その隙間には流れ込むのは難しいと思われ、前処理で入り込んだ酸洗液が追い出されることなく残留したということです。その酸洗液がメッキ後に流れ出して、他の部分と比べてメッキのりがよくない溶接部に付着し錆を発生させたというのが真相のようです。
 
 設計部スタッフが設計した時に鉄のアングルを重ねれば、そこに隙間ができることはわかったはずです。全面溶接にすれば、隙間を塞いでしまうことができたのですが、点溶接にしたことで隙間が存在することになりました。
 
 設計部スタッフは、溶接強度と溶接の工数には気を配っていたのですが、そこに出来る隙間がどんな影響を及ぼすかについては、考えが及びませんでした。
 
 お客さんのサンプル評価がOKだったので、錆が発生したことは言えず、黙って錆の補修処理をすることになりました。ただし、いつまでも補修処理とする訳にもいかないので、どこかのタイミングで設計を変えなくてはなりません。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
中国工場の実状を知る 中国工場の品質改善(その48)

 前回のその47に続いて解説します。 【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方     【3.13 顧客工場監査を利用...

 前回のその47に続いて解説します。 【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方     【3.13 顧客工場監査を利用...


ヒューマンエラー対策を考える(その2)

  【ヒューマンエラー対策の考察 連載目次】 1. ヒューマンエラー対策 2. ヒューマンエラーの分類 3. ヒューマンエラー(ポカ...

  【ヒューマンエラー対策の考察 連載目次】 1. ヒューマンエラー対策 2. ヒューマンエラーの分類 3. ヒューマンエラー(ポカ...


製品設計:ミス防止対策【連載記事紹介】お客様目線で行う製品設計

  ◆お客様目線で行う製品設計、「未然防止の品質管理」 ものづくりを行う上で、作業ミスや作業漏れが無いようにQC工程図や作業指示書を設計...

  ◆お客様目線で行う製品設計、「未然防止の品質管理」 ものづくりを行う上で、作業ミスや作業漏れが無いようにQC工程図や作業指示書を設計...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
理由教育とは(その2) 中国企業の壁(その46)

        前回、ある日系中国工場の作業で半田コテ先の温度や設備の始業点検など作業者がやるべきことをやっていない、それをチェックすべき管理者も作...

        前回、ある日系中国工場の作業で半田コテ先の温度や設備の始業点検など作業者がやるべきことをやっていない、それをチェックすべき管理者も作...


コンカレントエンジニアリング導入の取り組み 伸びる金型メーカーの秘訣 (その35)

        今回紹介するプレスメーカーは、K工業株式会社です。同社はシート部品・ステアリングコラム部品な...

        今回紹介するプレスメーカーは、K工業株式会社です。同社はシート部品・ステアリングコラム部品な...


シミュレーションを使ったプロセス改善

   前回の事例ではシミュレーションを使った実験計画法(Design of Experiments: DOE)が今や主流になっていることを述べ...

   前回の事例ではシミュレーションを使った実験計画法(Design of Experiments: DOE)が今や主流になっていることを述べ...