中国食品工場の問題はサイレントチェンジと根は同じ 中国企業の壁(その4)

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1. 中国食品工場の問題はサイレントチェンジと根は同じ

 2017年の9月24日にNHKのクローズアップ現代で、中国企業が勝手に部品や材料を変えてしまい、それによって日本企業の製品に不具合が起き問題となっていることが取り上げられました。わたし根本がゲストとして呼ばれ、スタジオでコメントさせていただきました。今回取り上げる中国食品工場での問題点の記事は、2014年に書いたものを再編集したものですが、再編集作業をしている中で問題の根はサイレントチェンジと同じではないかと感じました。
 
 何が同じかと言いますと、こうした問題は中国企業では起きる可能性があると認識しなくてはいけないこと、そして、過去の教訓を活かして防がなくてはいけないことなどです。
 
 中国食品工場による食材のずさんな管理がニュースで報道されました。このニュースを聞いたとき、「中国では起こるべくして起きた」「氷山の一角にすぎないのではないか」ということが頭に浮かびました。この件に関して、「中国工場の品質管理の専門家として、今回の事件をどのように見たか?」と某テレビ局から取材を受けました。わたしもニュース等の報道での情報しか持ち合せていないので、その範囲の中で言える次のようなことをお話ししました。
 
 過去の教訓が活かされていないのです。毒入り餃子事件、その後に起きたメラニン混入ミルクの事件など、これら過去に起きた事件から日本企業は、中国企業に食品製造を委託する場合の管理や考え方を学んだはず。何を学んだのでしょうか?
 
 毒入り餃子事件からは、従業員を大事にしていない企業・工場では、あのような事件が起こり得ること。委託先企業の従業員の扱いやその待遇などをチェックすることが必要だと学んだはずです。従業員の扱いや待遇に関しては、米国ウォルト・ディズニーが行っている監査が参考になるでしょう。
 
 メラニン混入のミルク事件からは、利益を最優先する企業では、利益のためにこうした事件が起こる可能性があること。企業というよりも経営者と言った方がよいかもしれません。中国企業は、経営者の考え方や方針次第で会社の行動が決まってしまいます。
 
 取引する際には、経営者の考え方や方針を確かめることが必要だと学んだはずです。さらに言えば、財務状況も確認することです。利益が少なければ、それを大きくするために今回のような事件につながる可能性があるということです。
 
 大変厳しい内容ですが、直接人の口に入る食品を扱っているのであれば、生産委託先にどこまで関与するのかを今一度考える必要があると思います。中国では、こうしたことは起こり得るという前提で取引をする。そして、そうしたことを起こさせないようにチェックしていくことが、食品を取り扱っている企業の責任ではないでしょうか。中国企業や中国人を信頼する、信頼関係を築く。これは素晴らしいことであり必要なことです。しかし、中国で仕事をするには「信頼してもチェックは怠らない」。これが大事なことではないでしょうか。
 
  事業戦略
 

2. 信頼はしても確認は怠らない

 中国食品工場で使用する食材をなぜ確認しなかったのか。中国食品工場で起きた問題について考えてみます。大きな問題のひとつに「チキンナゲットなどに使用していた鶏肉の賞味期限が切れていたものを使用していた」ことがあります。この点について、ファミリーマート社長は、「食材までは確認していなかった」と言っています。なぜ食材である鶏肉の確認をしなかったのでしょうか?
 
 ファミリーマートもマクドナルドも当該工場に対しては、細かな部分まで確認項目として工場監査を行っていたと報道されています。ではなぜ原料である鶏肉の食材の確認をしなかったのでしょうか?使用している食材に問題があれば、加工の工程に問題がないとしても何の意味もありません。
 
 この点がどうしても納得できませんでした。読者のみなさんも同感ではないでしょうか。相当細かいところまで監査項目としていたという点から推察すれ...

1. 中国食品工場の問題はサイレントチェンジと根は同じ

 2017年の9月24日にNHKのクローズアップ現代で、中国企業が勝手に部品や材料を変えてしまい、それによって日本企業の製品に不具合が起き問題となっていることが取り上げられました。わたし根本がゲストとして呼ばれ、スタジオでコメントさせていただきました。今回取り上げる中国食品工場での問題点の記事は、2014年に書いたものを再編集したものですが、再編集作業をしている中で問題の根はサイレントチェンジと同じではないかと感じました。
 
 何が同じかと言いますと、こうした問題は中国企業では起きる可能性があると認識しなくてはいけないこと、そして、過去の教訓を活かして防がなくてはいけないことなどです。
 
 中国食品工場による食材のずさんな管理がニュースで報道されました。このニュースを聞いたとき、「中国では起こるべくして起きた」「氷山の一角にすぎないのではないか」ということが頭に浮かびました。この件に関して、「中国工場の品質管理の専門家として、今回の事件をどのように見たか?」と某テレビ局から取材を受けました。わたしもニュース等の報道での情報しか持ち合せていないので、その範囲の中で言える次のようなことをお話ししました。
 
 過去の教訓が活かされていないのです。毒入り餃子事件、その後に起きたメラニン混入ミルクの事件など、これら過去に起きた事件から日本企業は、中国企業に食品製造を委託する場合の管理や考え方を学んだはず。何を学んだのでしょうか?
 
 毒入り餃子事件からは、従業員を大事にしていない企業・工場では、あのような事件が起こり得ること。委託先企業の従業員の扱いやその待遇などをチェックすることが必要だと学んだはずです。従業員の扱いや待遇に関しては、米国ウォルト・ディズニーが行っている監査が参考になるでしょう。
 
 メラニン混入のミルク事件からは、利益を最優先する企業では、利益のためにこうした事件が起こる可能性があること。企業というよりも経営者と言った方がよいかもしれません。中国企業は、経営者の考え方や方針次第で会社の行動が決まってしまいます。
 
 取引する際には、経営者の考え方や方針を確かめることが必要だと学んだはずです。さらに言えば、財務状況も確認することです。利益が少なければ、それを大きくするために今回のような事件につながる可能性があるということです。
 
 大変厳しい内容ですが、直接人の口に入る食品を扱っているのであれば、生産委託先にどこまで関与するのかを今一度考える必要があると思います。中国では、こうしたことは起こり得るという前提で取引をする。そして、そうしたことを起こさせないようにチェックしていくことが、食品を取り扱っている企業の責任ではないでしょうか。中国企業や中国人を信頼する、信頼関係を築く。これは素晴らしいことであり必要なことです。しかし、中国で仕事をするには「信頼してもチェックは怠らない」。これが大事なことではないでしょうか。
 
  事業戦略
 

2. 信頼はしても確認は怠らない

 中国食品工場で使用する食材をなぜ確認しなかったのか。中国食品工場で起きた問題について考えてみます。大きな問題のひとつに「チキンナゲットなどに使用していた鶏肉の賞味期限が切れていたものを使用していた」ことがあります。この点について、ファミリーマート社長は、「食材までは確認していなかった」と言っています。なぜ食材である鶏肉の確認をしなかったのでしょうか?
 
 ファミリーマートもマクドナルドも当該工場に対しては、細かな部分まで確認項目として工場監査を行っていたと報道されています。ではなぜ原料である鶏肉の食材の確認をしなかったのでしょうか?使用している食材に問題があれば、加工の工程に問題がないとしても何の意味もありません。
 
 この点がどうしても納得できませんでした。読者のみなさんも同感ではないでしょうか。相当細かいところまで監査項目としていたという点から推察すれば、監査項目に食材の確認も含まれていたが、確認はしなかった。可能性として考えられるのは、1日での監査という時間の関係から、出来る範囲だけを監査したということでしょうか。
 
 食材の確認をしていなかったことに対して、ファミリーマートの社長は「相手(中国福喜食品)との信頼関係」という旨のことを言っていました。つまり、相手である中国企業を信頼していたという訳です。
 
 「信頼はしても確認は怠らない」これが中国企業と付き合うときの鉄則です。信頼していたから確認をしなかった、結果、その信頼が裏切られたというのでは、食品を販売する企業として、安心・安全な食品を提供する責任を果たせないと考えます。
 
 中国では、このようなことは起こり得るという前提で取引をする。そして、そうしたことを起こさせないようにチェックしていくことが、食品を取り扱っている企業の責任と言えます。使用する食材に対しても、隅から隅まで漏れなく確認することが求められています。
 

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

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