中国調達のポイント:日系と中国系企業の違いを認識する 中国企業の壁(その1)

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1. 中国調達のポイント:日系と中国系企業の違いを認識する

 
 今回は、中国調達に関するわたしの経験を書くことにします。中国駐在員時代は、取引先から購入している部材の品質改善がメイン業務でしたので、毎週のように取引先の工場を訪問しては、問題点を見つけ改善を促すことやっていました。
 
 取引先は様々あり、自分たちと同じ日系企業もあれば、台湾系、香港系、韓国系の企業、そしてもちろん中国系企業もありました。駐在当初は、日系の取引先が多かったのですが、時間の経過とともにだんだん中国企業との取引が増えてきました。
 
 日系企業の工場はよく管理されているとお思いかもしれませんが決してそんなことはなくレベルは千差万別でした。自社の工場よりも管理が行き届いている工場もありましたが、逆に、ここは本当に日系なのかと思うほど管理レベルの低い工場もありました。
 
 初めの頃は、工場間のレベル差に驚き愕然としていました。ただ、レベルは低くても日系であるがゆえに、こちらの要求する内容の話が通じることに望みを見出していたという状況でした。
ところが中国系の会社を取引先として本格的に検討し購入するようになってくると、日系で感じていたような感覚が中国企業には通じないことがわかってきました。
 
 最初にぶち当たった壁は、これまで当たり前のこととして話してきた内容や改善のための要求が相手に理解されないことでした。そう日系では当たり前のことが中国系企業では当たり前ではなかったのです。当時はお願いしたこと、約束したことをどうしてやらないんだと想い、だから中国系企業はダメなんだと考えていました。
 
 場数を踏んで、何回も中国企業の工場の人たちと接してやっとお互いの常識や考え方が違うことに気が付きました。この当たり前の違いを埋めるのが重要な仕事であることがわかるようになりました。お互いの認識を近づけることが取引や付き合いをしていくための第一歩であるということを理解しました。
 
 ただし、日系企業でも全然ダメところもありました。品質や工場管理に関して会社の本気度がまったく感じられないのです。そことは取引を止めました。逆に中国企業でも本当にしっかり管理している会社と出会うことも出来ました。
 
  生産マネジメント
 

2.対策効果の確認を顧客にお願いする中国系企業

 
 中国企業から製品や部材を調達する場合の問題点は、品質・納期・取引上の問題など様々あります。約束した納期が守られず、こちらの生産に影響が出る。プラントものでは、設計変更によって発生した追加費用を高く見積もってきて要求通り支払わなければ出荷しないと言ってくることもあったそうです。
 
 しかしながら、問題として一番多いのは品質面と言えるでしょう。日本ではあり得ない不良、次から次へと出る新たな不良、そして対策しても繰り返される不良と言った具合です。クレームへの対応も遅い、的を射ていないなどの不満を抱えている人が大半だと思います。
 
 ただ最近は、品質への取組みやクレーム対応も一生懸命やる中国企業も増えてきているという実感があります。不良を減らそう、クレームへの対応をきちんと早くやろうと頑張っている企業です。でも、まだまだ力不足、経験不足で十分な対応が出来ないといのが現実でもあります。ある中国企業も品質向上により日本市場でのシェアアップを目指しています。
 
 そんな時にメッキ鋼板を使用した部品で錆不良が発生しました。工場での梱包時に錆はありませんでしたが、顧客が受け取った時に錆が発生していたのです。
 
 この中国企業では、梱包に問題があると考え梱包方法を変更しました。梱包方法を決めるのは開発部門で、彼らは以前の梱包方法では水分の逃げ場がなく、輸送中の船の中で梱包内で高温多湿となり錆が発生したと報告しました。
 
 変更した梱包方法は、水分の逃げ場を設けました。早速変更した梱包方法で梱包したものを出荷しました。ですが本当に梱包に問題があったのかどうかは検証できていません。原因はあくまでも彼らの推定にすぎません。
 
 問題なのは、新しい...

1. 中国調達のポイント:日系と中国系企業の違いを認識する

 
 今回は、中国調達に関するわたしの経験を書くことにします。中国駐在員時代は、取引先から購入している部材の品質改善がメイン業務でしたので、毎週のように取引先の工場を訪問しては、問題点を見つけ改善を促すことやっていました。
 
 取引先は様々あり、自分たちと同じ日系企業もあれば、台湾系、香港系、韓国系の企業、そしてもちろん中国系企業もありました。駐在当初は、日系の取引先が多かったのですが、時間の経過とともにだんだん中国企業との取引が増えてきました。
 
 日系企業の工場はよく管理されているとお思いかもしれませんが決してそんなことはなくレベルは千差万別でした。自社の工場よりも管理が行き届いている工場もありましたが、逆に、ここは本当に日系なのかと思うほど管理レベルの低い工場もありました。
 
 初めの頃は、工場間のレベル差に驚き愕然としていました。ただ、レベルは低くても日系であるがゆえに、こちらの要求する内容の話が通じることに望みを見出していたという状況でした。
ところが中国系の会社を取引先として本格的に検討し購入するようになってくると、日系で感じていたような感覚が中国企業には通じないことがわかってきました。
 
 最初にぶち当たった壁は、これまで当たり前のこととして話してきた内容や改善のための要求が相手に理解されないことでした。そう日系では当たり前のことが中国系企業では当たり前ではなかったのです。当時はお願いしたこと、約束したことをどうしてやらないんだと想い、だから中国系企業はダメなんだと考えていました。
 
 場数を踏んで、何回も中国企業の工場の人たちと接してやっとお互いの常識や考え方が違うことに気が付きました。この当たり前の違いを埋めるのが重要な仕事であることがわかるようになりました。お互いの認識を近づけることが取引や付き合いをしていくための第一歩であるということを理解しました。
 
 ただし、日系企業でも全然ダメところもありました。品質や工場管理に関して会社の本気度がまったく感じられないのです。そことは取引を止めました。逆に中国企業でも本当にしっかり管理している会社と出会うことも出来ました。
 
  生産マネジメント
 

2.対策効果の確認を顧客にお願いする中国系企業

 
 中国企業から製品や部材を調達する場合の問題点は、品質・納期・取引上の問題など様々あります。約束した納期が守られず、こちらの生産に影響が出る。プラントものでは、設計変更によって発生した追加費用を高く見積もってきて要求通り支払わなければ出荷しないと言ってくることもあったそうです。
 
 しかしながら、問題として一番多いのは品質面と言えるでしょう。日本ではあり得ない不良、次から次へと出る新たな不良、そして対策しても繰り返される不良と言った具合です。クレームへの対応も遅い、的を射ていないなどの不満を抱えている人が大半だと思います。
 
 ただ最近は、品質への取組みやクレーム対応も一生懸命やる中国企業も増えてきているという実感があります。不良を減らそう、クレームへの対応をきちんと早くやろうと頑張っている企業です。でも、まだまだ力不足、経験不足で十分な対応が出来ないといのが現実でもあります。ある中国企業も品質向上により日本市場でのシェアアップを目指しています。
 
 そんな時にメッキ鋼板を使用した部品で錆不良が発生しました。工場での梱包時に錆はありませんでしたが、顧客が受け取った時に錆が発生していたのです。
 
 この中国企業では、梱包に問題があると考え梱包方法を変更しました。梱包方法を決めるのは開発部門で、彼らは以前の梱包方法では水分の逃げ場がなく、輸送中の船の中で梱包内で高温多湿となり錆が発生したと報告しました。
 
 変更した梱包方法は、水分の逃げ場を設けました。早速変更した梱包方法で梱包したものを出荷しました。ですが本当に梱包に問題があったのかどうかは検証できていません。原因はあくまでも彼らの推定にすぎません。
 
 問題なのは、新しい梱包方法で問題が発生するかどうかを自分たちでテストして確認していないことです。「対策した梱包方法で出荷したので、錆が発生したかどうかお客さん確認してください」というスタンスなのです。対策効果の確認を顧客にさせているのです。
 
 しかもそれを問題とは思っていないのです。「原因を考えて対策を取った」それで自分たちの責務を十分果たしたと考えているのです。メーカーとして対策効果の検証は自分たちでやって確認しておかなくてはなりません。
 
 この場合なら、以前の梱包方法のものと対策した梱包方法のものを高温多湿下の環境に放置するなどして、錆発生の再現テストと効果確認テストを実施することが必要です。そうしたテストから知見と経験を得て、業務レベルが上がっていくのです。
 

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...