量産後に規格が守れない、寸法NGの対策とは 中国企業の壁(その16)

投稿日

  
  品質マネジメント
 
 工場の受入検査である部品が厚さ寸法NGとなったときのことです。
 
 仕入先(日系工場)の現物確認でも不合格であることが確認されました。 NGの原因は、購入している材料自体の厚さが規格外とのことでした。
 
 問題はこの後の仕入先の対応でした。厚さの寸法公差は厳しく、守れない場合もあるので公差の規格緩和をして欲しいと言ってきました。購入していた材料に不具合があった場合、材料メーカーにその不具合の原因・対策を報告させ、それを自社回答に添付するのが通常行われる流れです。にも関わらず材料メーカーから何の報告もない段階で、勝手に判断して客先に規格緩和を要請したことは問題です。
 

1. 仕入先の処理の順番

 
 問題のひとつ目は、仕入先の処理の順番が間違っていることです。材料メーカーの報告を得ること。そして、その内容の妥当性を確認する作業が出来ていないことです。
 

2. 顧客と取交した規格

 
 ふたつ目の問題は、顧客と取交した規格を変更することの大変さがわかっていないことです。仕入先の担当者は中国人でしたが、その担当者だけの責任とは言えません。この2つの問題に関する教育をしていない会社の責任と言うことです。
 
 さらに、その規格緩和の要請が中国人担当者の上司である日本人の確認印が押してあるものでした。この日本人上司も問題を理解していないことになります。また、この手の話は特定の会社に限った話ではありません。
 

3. 生かされていない教育

 一方、自社スタッフにはこの2つの問題点について以前教えていたにも関わらず、部下である担当者はあっさりその要請を受けようとしていたのです。1回や2回教えただけでは身に付かないことはわかっていたつもりでしたが、それをまた体験する機会となってしまいました。粘り強く、根気強く教えていくことが必要なのです。
 
 現実問題として規格変更(緩和)が必要なことがあるのも事実です。ただし、規格変更、特に緩和は、顧客でも自社内でも大変な労力がいるということを認識しておく必要があります。
 
 最低限、相手を納得させられる変更の理由、そのバックデータ、変更後の規格とその妥当性を示すバックデータなどが必要になります。これを揃えるには、かなりの工数がかかることはおわかりにな...
  
  品質マネジメント
 
 工場の受入検査である部品が厚さ寸法NGとなったときのことです。
 
 仕入先(日系工場)の現物確認でも不合格であることが確認されました。 NGの原因は、購入している材料自体の厚さが規格外とのことでした。
 
 問題はこの後の仕入先の対応でした。厚さの寸法公差は厳しく、守れない場合もあるので公差の規格緩和をして欲しいと言ってきました。購入していた材料に不具合があった場合、材料メーカーにその不具合の原因・対策を報告させ、それを自社回答に添付するのが通常行われる流れです。にも関わらず材料メーカーから何の報告もない段階で、勝手に判断して客先に規格緩和を要請したことは問題です。
 

1. 仕入先の処理の順番

 
 問題のひとつ目は、仕入先の処理の順番が間違っていることです。材料メーカーの報告を得ること。そして、その内容の妥当性を確認する作業が出来ていないことです。
 

2. 顧客と取交した規格

 
 ふたつ目の問題は、顧客と取交した規格を変更することの大変さがわかっていないことです。仕入先の担当者は中国人でしたが、その担当者だけの責任とは言えません。この2つの問題に関する教育をしていない会社の責任と言うことです。
 
 さらに、その規格緩和の要請が中国人担当者の上司である日本人の確認印が押してあるものでした。この日本人上司も問題を理解していないことになります。また、この手の話は特定の会社に限った話ではありません。
 

3. 生かされていない教育

 一方、自社スタッフにはこの2つの問題点について以前教えていたにも関わらず、部下である担当者はあっさりその要請を受けようとしていたのです。1回や2回教えただけでは身に付かないことはわかっていたつもりでしたが、それをまた体験する機会となってしまいました。粘り強く、根気強く教えていくことが必要なのです。
 
 現実問題として規格変更(緩和)が必要なことがあるのも事実です。ただし、規格変更、特に緩和は、顧客でも自社内でも大変な労力がいるということを認識しておく必要があります。
 
 最低限、相手を納得させられる変更の理由、そのバックデータ、変更後の規格とその妥当性を示すバックデータなどが必要になります。これを揃えるには、かなりの工数がかかることはおわかりになると思います。
 
 一番よいのは、仕様を取交すときの摺合せをしっかり行い、出来ない場合は出来ないと伝えることです。
 
 しかし、顧客とサプライヤーとの力関係で、出来ないと言えない場合も往々にしてあるでしょう。出来ないと言うと、他社に注文がいってしまうのでは?と。
 
 でも、量産後に規格が守れないのは、お互いにとって不幸な話です。
 
 さらに言えば、顧客の厳しい寸法や特性要求に応えることはもちろん必要です。そうした努力によって、会社の技術力は高まっていくものなのですから。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「品質マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
原因は必ず複数ある 慢性不良への対応(その1)

 まったく同じ作り方をしているにもかかわらず、前のロットの不良率は0.5%だったのに、このロットは8%も不良だった、不良内容もまったく違う・・・。ある日突...

 まったく同じ作り方をしているにもかかわらず、前のロットの不良率は0.5%だったのに、このロットは8%も不良だった、不良内容もまったく違う・・・。ある日突...


【快年童子の豆鉄砲】(その114)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(1)

        【目次】 1. QCサークル活動のスパイラルアップ 表2-1の...

        【目次】 1. QCサークル活動のスパイラルアップ 表2-1の...


半田付け工程の DOE(Design of Experiments)

   ある時、工場の品質改善プロジェクトを担当するブラックベルトから相談を受けました。内容は、ドミニカ共和国の工場で作っている製品に半田付け不...

   ある時、工場の品質改善プロジェクトを担当するブラックベルトから相談を受けました。内容は、ドミニカ共和国の工場で作っている製品に半田付け不...


「品質マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
プレス穴加工・品質保証の考え方 中国企業の壁(その10)

1. プレス穴加工・品質保証の考え方  前回のその9で、プレスでの穴加工の位置決めの方法の話を書きました。作業者がワークを正しい位置にセットすればよ...

1. プレス穴加工・品質保証の考え方  前回のその9で、プレスでの穴加工の位置決めの方法の話を書きました。作業者がワークを正しい位置にセットすればよ...


売り手都合の仕様変更は顧客離れを招く

 「あれ?何もしてないのにブックマークの仕方が元に戻ってる」以前のことですが、普段利用するブラウザのブックマークの操作方法が急に変わり使い難くなりました。...

 「あれ?何もしてないのにブックマークの仕方が元に戻ってる」以前のことですが、普段利用するブラウザのブックマークの操作方法が急に変わり使い難くなりました。...


統計手法による 2018年LPGA公式記録データの解析事例(その2)

【統計手法による 2018年LPGA公式記録データの解析 連載目次】 統計手法による 2018年LPGA公式記録データの解析事例(その1) ...

【統計手法による 2018年LPGA公式記録データの解析 連載目次】 統計手法による 2018年LPGA公式記録データの解析事例(その1) ...