クリーン化を成功させる条件とは クリーン化について(その24)

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4. クリーン化のなぜを考える

◆ 継続のための仕掛け

クリーン化

図. 継続のための仕掛けがあること

 

 今回は、前回までに解説した上図の「継続のための仕掛け」以外のイベントの企画、実施について説明します。

 クリーン化活動が定着しても毎日同じことの繰り返しになると、手抜きや意識の低下などが起きてきます。この状態を放っておくと徐々に環境が悪くなり、品質・歩留まりが低下してきます。これは緩やかに変化していくので、気が付いた時には深刻な状態になっていたという場合があります。

 徐々に環境が悪くなると、何がいつから変化してきたのか、その原因がつかめません。そこで闇雲にあちこち突いてみても真因究明には届かず、適切な対応ができないのです。

 

 このような事態となる前に管理、監督者は日々よく現場を見て、活動に弱さを感じたら、そのタイミングを計り、イベントなどを開くのも一つの手です。ゆるんだ部分を元に戻そうというものです。これによってまた活動に目を向け、その大切さに気付いて継続してもらうことが狙いです。

 さらに、クリーン化の継続のためのDNA継承という意味もあります。先輩が後輩に伝えるのには限度、限界があります。イベントなどに参加しながら理論や理屈だけではなく、体験と経験から身に着け継承していくことも大切です。

 様々な会社から現場診断・指導・アドバイスを依頼され訪問すると、そういうところほど、活動に対し様々な工夫やアイデアがみられます。人の知恵は無限だと考えさせられます。それでもさらに新たな考え方を求め、ものづくり基盤を高めていこうという気概を感じます。

 

◆ イベントの企画、実施について

 クリーン化活動は経営層の号令や命令だけでは維持、継続しません。そればかりか、管理監督者が興味を示さなくなると、衰退してしまいます。清掃の継続などは面白いことではないので、本来の目的や意味を本当に理解していないと面倒なことは手を抜きやすくなります。一旦、活動が途切れて、止まってしまうとその活動はなかなか元には戻りません。イベントの企画、実施は、活動が途切れる前に兆候を掴み、元の状態に引き戻す、あるいはさらに活発な活動にしていくための手段です。

 

【QCサークル発表会】

 多くの企業で導入しているQCサークル活動ですが、もともとは品質改善、向上が根底にあります。その発端は米国ですが、日本に持ち込まれアレンジしながら定着しました。

 グループごとの活動という意味では、品質に限らず小集団活動という表現で、幅広い分野で定期的な発表会の開催がされている企業は多いでしょう。毎年11月は品質月間となっているので、その時期に合わてサークル発表会を実施すると自社の品質を見直すよい機会になります。この時期の発表会実施は、発表する側にとってもクリーン化への取り組みに深みが出るでしょう。また聴講者は、現場のクリーン化活動とその苦労を理解することになり、協力も得られると思います。また現場視点の考え方を他の分野で採用することもできます。“クリーン化は現場だけがやること”から脱皮できます。全社、技術、品質部門などにも聴講してもらい、共有化することが重要です。

 

【技術発表会の例】

 技術発表会はクリーン化活動のためのイベントではありませんが、良い事例なので紹介します。クリーン化指導で通っていたある会社の現場監督者から聞いた話です。技術発表会聴講の時の技術課長の発言に感動した話です。

 技術発表会で品質問題をこのように改善して、これだけの成果が得られたとの発表でしたが、その最後に「この成果は私たちだけで得られたものではありません。工場の人たちが、日々クリーン化活動を通じて、現場を良い状態にし、そして維持向上させて来たおかげで得られた成果です」と大勢の前で話したそうです。それが技術課長の発言だったため、現場の人たちは大変感動したとのことです。

 現場の皆さんの地ならしのおかげで、様々な問題が解決され、不具合が明確になり、原因究明がしやすくなったという、現場に対しての感謝の意を現したのです。現場が汚れていると、何が問題なのか、そして真因にたどり着くまでが大変です。その露払いをしてくれたので、効率の良い取り組みができたと現場のクリーン化への高評価でした。

 

 クリーン化活動は、地味に地道にコツコツと取り組む活動です。その水面下の活動が如何(いか)に重要かを認識しての発言であり、現場の努力に光を当て苦労を労ったということです。以前ご紹介した米作りの絵(図)を思い出してください。あの水面下の部分に日を当てたのです。聴講していた現場の人は、”あの一言“で自分たちが日々やっていることが評価され、褒められたことで、その大切さをさらに認識し、ますますクリーン化活動に熱心に取り組むようになり、それが定着に繋がり、技術メンバーにとっても、品質改善がしやすくなった例です。全体の品質も向上していったようです。

 一般的に発表会の場でありがちなのは、まるで自分たちだけで得た成果だと言わんばかりに成果を強調し、協力者がいたり、それを支えていた人たちのことには触れないことです。

 

【活動板コンクール】

 クリーン化活動は、...

 

 

4. クリーン化のなぜを考える

◆ 継続のための仕掛け

クリーン化

図. 継続のための仕掛けがあること

 

 今回は、前回までに解説した上図の「継続のための仕掛け」以外のイベントの企画、実施について説明します。

 クリーン化活動が定着しても毎日同じことの繰り返しになると、手抜きや意識の低下などが起きてきます。この状態を放っておくと徐々に環境が悪くなり、品質・歩留まりが低下してきます。これは緩やかに変化していくので、気が付いた時には深刻な状態になっていたという場合があります。

 徐々に環境が悪くなると、何がいつから変化してきたのか、その原因がつかめません。そこで闇雲にあちこち突いてみても真因究明には届かず、適切な対応ができないのです。

 

 このような事態となる前に管理、監督者は日々よく現場を見て、活動に弱さを感じたら、そのタイミングを計り、イベントなどを開くのも一つの手です。ゆるんだ部分を元に戻そうというものです。これによってまた活動に目を向け、その大切さに気付いて継続してもらうことが狙いです。

 さらに、クリーン化の継続のためのDNA継承という意味もあります。先輩が後輩に伝えるのには限度、限界があります。イベントなどに参加しながら理論や理屈だけではなく、体験と経験から身に着け継承していくことも大切です。

 様々な会社から現場診断・指導・アドバイスを依頼され訪問すると、そういうところほど、活動に対し様々な工夫やアイデアがみられます。人の知恵は無限だと考えさせられます。それでもさらに新たな考え方を求め、ものづくり基盤を高めていこうという気概を感じます。

 

◆ イベントの企画、実施について

 クリーン化活動は経営層の号令や命令だけでは維持、継続しません。そればかりか、管理監督者が興味を示さなくなると、衰退してしまいます。清掃の継続などは面白いことではないので、本来の目的や意味を本当に理解していないと面倒なことは手を抜きやすくなります。一旦、活動が途切れて、止まってしまうとその活動はなかなか元には戻りません。イベントの企画、実施は、活動が途切れる前に兆候を掴み、元の状態に引き戻す、あるいはさらに活発な活動にしていくための手段です。

 

【QCサークル発表会】

 多くの企業で導入しているQCサークル活動ですが、もともとは品質改善、向上が根底にあります。その発端は米国ですが、日本に持ち込まれアレンジしながら定着しました。

 グループごとの活動という意味では、品質に限らず小集団活動という表現で、幅広い分野で定期的な発表会の開催がされている企業は多いでしょう。毎年11月は品質月間となっているので、その時期に合わてサークル発表会を実施すると自社の品質を見直すよい機会になります。この時期の発表会実施は、発表する側にとってもクリーン化への取り組みに深みが出るでしょう。また聴講者は、現場のクリーン化活動とその苦労を理解することになり、協力も得られると思います。また現場視点の考え方を他の分野で採用することもできます。“クリーン化は現場だけがやること”から脱皮できます。全社、技術、品質部門などにも聴講してもらい、共有化することが重要です。

 

【技術発表会の例】

 技術発表会はクリーン化活動のためのイベントではありませんが、良い事例なので紹介します。クリーン化指導で通っていたある会社の現場監督者から聞いた話です。技術発表会聴講の時の技術課長の発言に感動した話です。

 技術発表会で品質問題をこのように改善して、これだけの成果が得られたとの発表でしたが、その最後に「この成果は私たちだけで得られたものではありません。工場の人たちが、日々クリーン化活動を通じて、現場を良い状態にし、そして維持向上させて来たおかげで得られた成果です」と大勢の前で話したそうです。それが技術課長の発言だったため、現場の人たちは大変感動したとのことです。

 現場の皆さんの地ならしのおかげで、様々な問題が解決され、不具合が明確になり、原因究明がしやすくなったという、現場に対しての感謝の意を現したのです。現場が汚れていると、何が問題なのか、そして真因にたどり着くまでが大変です。その露払いをしてくれたので、効率の良い取り組みができたと現場のクリーン化への高評価でした。

 

 クリーン化活動は、地味に地道にコツコツと取り組む活動です。その水面下の活動が如何(いか)に重要かを認識しての発言であり、現場の努力に光を当て苦労を労ったということです。以前ご紹介した米作りの絵(図)を思い出してください。あの水面下の部分に日を当てたのです。聴講していた現場の人は、”あの一言“で自分たちが日々やっていることが評価され、褒められたことで、その大切さをさらに認識し、ますますクリーン化活動に熱心に取り組むようになり、それが定着に繋がり、技術メンバーにとっても、品質改善がしやすくなった例です。全体の品質も向上していったようです。

 一般的に発表会の場でありがちなのは、まるで自分たちだけで得た成果だと言わんばかりに成果を強調し、協力者がいたり、それを支えていた人たちのことには触れないことです。

 

【活動板コンクール】

 クリーン化活動は、活動事例や改善事例、品質レベルの推移など様々な継続的な指標を掲示しておきます。自分たちの努力が見えます。それを管理職、例えば課長以上、会社の規模によっては経営者にも声を掛け、コンクールの審査員にお願いした例を紹介します。経営者、管理職を意図的に現場に引き込む例です。

 

 活動してきたメンバーは、上層部の方に見てもらうので、分かりやすい、綺麗(きれい)な表示にしようと努力します。また活動そのものを現場でPアピールできる機会です。依頼された人たちは、何を評価して良いのか分からないのでは困るので、活動内容を理解しようとします。活動板の前で発表する機会、そこで褒められれば人も育ちます。また現場の活動を理解して貰える機会です。現場対経営者、管理職ではなく、相互に信頼を深める機会です。

 上層部から、品質、歩留まりを向上させなさい、という一方的な号令、命令よりも、現場に足を運び、実態を把握する効果は大きいのです。勿論褒められれば、更に活発な活動に繋がるでしょう。

 

 次回に続きます。

 

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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