防塵衣のクリーニングについて

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 今回は、ものづくり企業の防塵衣のクリーニング全般について解説します。
 

1. 防塵衣着用の目的

 クリーンルームクリーンルームの中でのゴミの最大の発生源、汚染源は人です。人から発生するゴミをクリーンルーム内に撒き散らさないことを目的として、防塵衣(クリーンスーツ)は、クリーンルームに入る時に必ず着用します。
 

2. 防塵衣のクリーニングはなぜ必要か

 クリーンルーム内は一見綺麗に見えても様々な汚れがあり、それらが防塵衣の表面に付着することや、人から発生するゴミ、例えば皮膚や髪の毛、下着などのゴミが内面に付着します。もちろん生地の内側に付着するものもありますが、そのまま落下して靴で受ける、或いはソックスで受けています。このほかクリーンルーム内で生産活動をすると、多少なりとも汗をかきます。それが防塵衣の細かく織られた繊維を伝わり拡がります。いわゆる毛細管現象です。これが乾くと塩分の粉として飛散します。このようなゴミ・汚れを除去するために防塵衣専用の大型洗濯機に入れ、洗剤も専用のもの使いクリーニングします。
 

3. クリーニング前の仕分け作業

 クリーニングは単に洗濯機に入れるのではなく、いくつかの工程があります。例えばクリーニング工場に入ってきたものは、どの現場のものであるか、数量はなど返却する時と一致するよう把握します。その後、仕分け工程で、防塵衣の劣化はないか、極度の汚れはないか、ポケットに入っているものはないかを確認します。防塵衣の劣化では、破れ、穴あき、グリス等の付着などがあります。防塵衣はつなぎだけではなく、ソックスの破れも確認します。これらは修理可能なものは修理、不可能なものはクリーニングせず依頼元に戻します。フード(帽子)の内側は化粧の汚れがひどいものもあります。これらはクリーニング前に手洗いで汚れを落としていますが、なかなか綺麗にはなりません。
 

4. クリーニングでのトラブル事例

 仕分け、確認工程では、ポケットの中も確認します。ある会社のクリーニング工場の責任者に聞いた話では、印鑑、金属ピンセット、ライター、ペン、メモ用紙、ガムなどびっくりするようなものが見つかる場合があるようです。印鑑は簡易のもの、ペンは作業中に使うものでしょうが、これがチェックを逃れ洗濯機に入ってしまい、洗濯中に赤いインクが漏れ、他の人のものや他職場の防塵衣を赤く染めてしまった。その分は外し忘れた職場の責任で弁償したという話も聞きました。防塵衣は高額なので、インクで汚してしまった防塵衣は在庫が無ければすぐに交換できません。ちょっとした確認ミスでも大きな問題になります。
 
 また、確認中にペン差しに金属ピンセットが差してあり怪我をした例もあるようです。洗濯機の中で異音がしたので確認したところ、ライターが入っているのが見つかった。これも確認時に見落としですが、異常に発熱していて事故に繋がる可能性もあったと言います。このほか、防塵シューズは長時間勤務、(例えば12時間)では立ちっ放しで疲れるので二重底の靴を使っているところも多いと思います。作業者にとっては疲れが少ないというメリットがありますが、洗濯後の乾燥に時間がかかるという問題があります。時間がかかると納期に間に合わない。逆に乾燥時の温度を上げると早く乾くが、底や外側が劣化する問題があります。底がひび割れし歩くたびに白いゴミが発生するという事例もありました。ソックスを履いて安全靴タイプの防塵靴を履く場合もあります。安全靴は先端部分に鉄芯が入っていて、重量物の落下などにも耐えられます。一般的には1トンくらいは大丈夫ですが、繰り返し履くことで鉄芯が露出し錆びます。ソックスは錆で赤く染まったり破れたりします。最近では、鉄芯ではなく強化プラスチックを使用しているものもあります。安全靴の導入はJIS規格に照らしながら、クリーン化の観点も含め検討して下さい。
 

5. クリーニング工場との連携

 普段何気なくクリーニングに出し、戻ってきたものの着用を繰り返していますが、クリーニング工場でも苦労してい...
 今回は、ものづくり企業の防塵衣のクリーニング全般について解説します。
 

1. 防塵衣着用の目的

 クリーンルームクリーンルームの中でのゴミの最大の発生源、汚染源は人です。人から発生するゴミをクリーンルーム内に撒き散らさないことを目的として、防塵衣(クリーンスーツ)は、クリーンルームに入る時に必ず着用します。
 

2. 防塵衣のクリーニングはなぜ必要か

 クリーンルーム内は一見綺麗に見えても様々な汚れがあり、それらが防塵衣の表面に付着することや、人から発生するゴミ、例えば皮膚や髪の毛、下着などのゴミが内面に付着します。もちろん生地の内側に付着するものもありますが、そのまま落下して靴で受ける、或いはソックスで受けています。このほかクリーンルーム内で生産活動をすると、多少なりとも汗をかきます。それが防塵衣の細かく織られた繊維を伝わり拡がります。いわゆる毛細管現象です。これが乾くと塩分の粉として飛散します。このようなゴミ・汚れを除去するために防塵衣専用の大型洗濯機に入れ、洗剤も専用のもの使いクリーニングします。
 

3. クリーニング前の仕分け作業

 クリーニングは単に洗濯機に入れるのではなく、いくつかの工程があります。例えばクリーニング工場に入ってきたものは、どの現場のものであるか、数量はなど返却する時と一致するよう把握します。その後、仕分け工程で、防塵衣の劣化はないか、極度の汚れはないか、ポケットに入っているものはないかを確認します。防塵衣の劣化では、破れ、穴あき、グリス等の付着などがあります。防塵衣はつなぎだけではなく、ソックスの破れも確認します。これらは修理可能なものは修理、不可能なものはクリーニングせず依頼元に戻します。フード(帽子)の内側は化粧の汚れがひどいものもあります。これらはクリーニング前に手洗いで汚れを落としていますが、なかなか綺麗にはなりません。
 

4. クリーニングでのトラブル事例

 仕分け、確認工程では、ポケットの中も確認します。ある会社のクリーニング工場の責任者に聞いた話では、印鑑、金属ピンセット、ライター、ペン、メモ用紙、ガムなどびっくりするようなものが見つかる場合があるようです。印鑑は簡易のもの、ペンは作業中に使うものでしょうが、これがチェックを逃れ洗濯機に入ってしまい、洗濯中に赤いインクが漏れ、他の人のものや他職場の防塵衣を赤く染めてしまった。その分は外し忘れた職場の責任で弁償したという話も聞きました。防塵衣は高額なので、インクで汚してしまった防塵衣は在庫が無ければすぐに交換できません。ちょっとした確認ミスでも大きな問題になります。
 
 また、確認中にペン差しに金属ピンセットが差してあり怪我をした例もあるようです。洗濯機の中で異音がしたので確認したところ、ライターが入っているのが見つかった。これも確認時に見落としですが、異常に発熱していて事故に繋がる可能性もあったと言います。このほか、防塵シューズは長時間勤務、(例えば12時間)では立ちっ放しで疲れるので二重底の靴を使っているところも多いと思います。作業者にとっては疲れが少ないというメリットがありますが、洗濯後の乾燥に時間がかかるという問題があります。時間がかかると納期に間に合わない。逆に乾燥時の温度を上げると早く乾くが、底や外側が劣化する問題があります。底がひび割れし歩くたびに白いゴミが発生するという事例もありました。ソックスを履いて安全靴タイプの防塵靴を履く場合もあります。安全靴は先端部分に鉄芯が入っていて、重量物の落下などにも耐えられます。一般的には1トンくらいは大丈夫ですが、繰り返し履くことで鉄芯が露出し錆びます。ソックスは錆で赤く染まったり破れたりします。最近では、鉄芯ではなく強化プラスチックを使用しているものもあります。安全靴の導入はJIS規格に照らしながら、クリーン化の観点も含め検討して下さい。
 

5. クリーニング工場との連携

 普段何気なくクリーニングに出し、戻ってきたものの着用を繰り返していますが、クリーニング工場でも苦労しています。汚れのひどいものは別に洗うとか、清浄度の高いクリーンルーム内で使用するものと、清浄度の低いクリーンルーム内で使用するものとは一緒に洗わない。しかし納期は守らなければいけないのです。その中で、上記のような様々な問題、障害があります。クリーニング工場と現場とは時々コンタクトを取り、安全や作業性、汚さない工夫(特に化粧品やグリスの付着)をして、良い関係を作りたいものです。
 

6. 防塵衣導入時の検討項目

 防塵衣メーカーに依頼すれば、ポケットやペン差しなどの取り付けはしてくれます。しかし上記のような問題から、基本的には防塵衣には行き止まり(ポケット、ペン差しなど)を作らないのが設計思想になっています。ペン差しを付ける場合、下にも穴をあけてゴミが溜まらないようにすることが大切です。
 

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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