クリーン化の4つの目的 第2回 クリーン化について(その8)

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 今回からクリーン化に向けた4つの目的について解説しますが、ここでは主に、電気、電子、精密、機械などのものづくり企業をイメージし、前回のクリーン化について(その7)に続き、下図を使って説明します。

クリーン化

3. CS向上(Audit対応)→ ES向上

 他社から依頼を受けた製品を製造する場合、その会社(お客様)からどんな環境で生産されているのか、監査に来る場合があります。内容によっては国内だけでなく、海外からも監査に来ます。この客先監査(Audit)には2つの監査があります。

 一つは、基準や標準などはどうなっているのか。品質問題が発生した場合の対応策など多岐にわたります。主には文書類の監査なので机上監査ともいいます。

 二つ目は、現場の監査です。

 会社訪問時、現場の様子がパワーポイントなどで紹介されることがあります。これは、その会社のPRの場でもあります。どんなに文書類がきちんとしていても、そして現場の様子がどんなに良い環境のように見えても、実際とは違います。現場とは、その場に現れると書きます。品質は現場で作り込むので、その現場を見るわけです。

 机上監査だけで帰る会社もあるようですが、これで良いのだろうかと逆に心配になります。また、現場を見る力がない現場を知らない部門の方が来る場合もあります。やはり現場を見てもらって、素直に指摘し、安心してもらえる現場を相互に作り上げていくことが必要です。

 現場監査は、監査に来る企業のレベルも逆にみられることになります。

 

 現場監査については、2つの例を紹介します。

(1) 半導体前工程のクリーン化、品質改善を目的に、私が山形県の半導体工場に赴任した際、そこには会社組織は違いますが、半導体後工程もありました。そこにもクリーン化を指導することになりました。

 お客様が現場を見ると、ゴミがある、ここが汚れていると毎回厳しく指摘されます。余り悪い状況が続くと仕事がなくなってしまうかも知れないと思い、一生懸命綺麗(きれい)にするわけです。

 お客様が「まあこのくらいなら、でももっときれいな環境にしてください」と言ってもらいたいために頑張るわけです。つまりお客様の満足度を高める(CS向上)努力をすることです。

 ある日、その現場責任者が、ハアハアと息を切らせながら私のところに走ってきました。

 会社も違う、建物も違うので、階段も多く、距離も遠かったです。そこを走ってきたので息切れするわけです。その方が「今日、お客様の監査があって褒められました。私たちの製品をこんなに良い環境で作ってくれているんですね。ありがとうございます」と言ったというのです。

 今までの監査では、厳しい指摘があったり、叱られることばかりだった。それが、今日は褒められたというのです。距離が離れているので、電話でも良いのですが、その嬉(うれ)しさから、直に伝えたいということで走ってきたとのことです。叱られることは多くあっても、褒められることはめったにありません。

 今日はそれを褒められた。しかも一緒に対応した技術、品質、管理、監督者、作業者がその言葉を聞いてしまい舞い上がってしまったのです。そうなると、また褒められたい、もっと良いものを作りたいという気持ちになります。

 

 CSの向上を追求した結果、従業員の満足度(ES)向上に繋(つな)がったのです。“ものづくりの心の醸成”です。

 CS向上は、ある意味受け身です。ところがこれを追求していくことで、従業員がものづくりに対して前向きになります。このスパイラルを大切にしたいものです。そうなると、自社製品の作り込みに自信と誇りを持つようになり、かつ愛着を持つことに繋がります。

 こんなところにも...

 

 今回からクリーン化に向けた4つの目的について解説しますが、ここでは主に、電気、電子、精密、機械などのものづくり企業をイメージし、前回のクリーン化について(その7)に続き、下図を使って説明します。

クリーン化

3. CS向上(Audit対応)→ ES向上

 他社から依頼を受けた製品を製造する場合、その会社(お客様)からどんな環境で生産されているのか、監査に来る場合があります。内容によっては国内だけでなく、海外からも監査に来ます。この客先監査(Audit)には2つの監査があります。

 一つは、基準や標準などはどうなっているのか。品質問題が発生した場合の対応策など多岐にわたります。主には文書類の監査なので机上監査ともいいます。

 二つ目は、現場の監査です。

 会社訪問時、現場の様子がパワーポイントなどで紹介されることがあります。これは、その会社のPRの場でもあります。どんなに文書類がきちんとしていても、そして現場の様子がどんなに良い環境のように見えても、実際とは違います。現場とは、その場に現れると書きます。品質は現場で作り込むので、その現場を見るわけです。

 机上監査だけで帰る会社もあるようですが、これで良いのだろうかと逆に心配になります。また、現場を見る力がない現場を知らない部門の方が来る場合もあります。やはり現場を見てもらって、素直に指摘し、安心してもらえる現場を相互に作り上げていくことが必要です。

 現場監査は、監査に来る企業のレベルも逆にみられることになります。

 

 現場監査については、2つの例を紹介します。

(1) 半導体前工程のクリーン化、品質改善を目的に、私が山形県の半導体工場に赴任した際、そこには会社組織は違いますが、半導体後工程もありました。そこにもクリーン化を指導することになりました。

 お客様が現場を見ると、ゴミがある、ここが汚れていると毎回厳しく指摘されます。余り悪い状況が続くと仕事がなくなってしまうかも知れないと思い、一生懸命綺麗(きれい)にするわけです。

 お客様が「まあこのくらいなら、でももっときれいな環境にしてください」と言ってもらいたいために頑張るわけです。つまりお客様の満足度を高める(CS向上)努力をすることです。

 ある日、その現場責任者が、ハアハアと息を切らせながら私のところに走ってきました。

 会社も違う、建物も違うので、階段も多く、距離も遠かったです。そこを走ってきたので息切れするわけです。その方が「今日、お客様の監査があって褒められました。私たちの製品をこんなに良い環境で作ってくれているんですね。ありがとうございます」と言ったというのです。

 今までの監査では、厳しい指摘があったり、叱られることばかりだった。それが、今日は褒められたというのです。距離が離れているので、電話でも良いのですが、その嬉(うれ)しさから、直に伝えたいということで走ってきたとのことです。叱られることは多くあっても、褒められることはめったにありません。

 今日はそれを褒められた。しかも一緒に対応した技術、品質、管理、監督者、作業者がその言葉を聞いてしまい舞い上がってしまったのです。そうなると、また褒められたい、もっと良いものを作りたいという気持ちになります。

 

 CSの向上を追求した結果、従業員の満足度(ES)向上に繋(つな)がったのです。“ものづくりの心の醸成”です。

 CS向上は、ある意味受け身です。ところがこれを追求していくことで、従業員がものづくりに対して前向きになります。このスパイラルを大切にしたいものです。そうなると、自社製品の作り込みに自信と誇りを持つようになり、かつ愛着を持つことに繋がります。

 こんなところにも、品質向上の秘訣があるのではないでしょうか。ただ毎日同じ仕事を標準通りにやって、時間が来たら帰ることの繰り返しではなく、従業員の成長の機会にもなります。

 

(2) 書類の監査に時間がかかってしまった。帰りの飛行機や電車の時間が迫ってきた。もう現場をきちんと見る時間がない。

 この時の監査者は、品質は現場で作るので、現場に入り短時間に床だけ見て帰ったとのことです。その理由は、“清掃の基本は上から下へ、奥から手前”、その床が綺麗なら、それ以前(作業台や設備など)はきちんと清掃されているだろうということです。そのため現場を見ることは外せないということだったというのです。


 上図の4. 予防保全、延命化 (生産設備、付帯設備)は次回の解説で行います。

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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