クリーン化を成功させる条件とは クリーン化について(その20)

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◆ クリーン化活動の組織と現場の重要性

 下図はクリーン化活動を進めるうえで重要なことを私の経験、体験を元に整理したものです。これは現場や現場に近い部門だけでなく、経営者や管理監督者など会社全体が知っておいてほしいことです。クリーン化を成功させる条件について今回も前回の4項「クリーン化のなぜを考える」からの続きをお話します。

 

クリーン化

図1. クリーン化活動の重要ポイント

 

4. クリーン化のなぜを考える

③ なぜ防塵衣に着用順があるのか

 防塵(ぼうじん)衣の着用順は防塵衣のタイプや会社の考え方、思想で若干違う場合がありますが、ここでは基本的な着用順序を下記図で説明します。

 

クリーン化

図2.防塵衣の着方・脱ぎ方の順序

 

【防塵衣の着方】

 最初に①フードを被(かぶ)ります。ここでいうフードは単に帽子のようなものではなく裾が長いものです。その上から②繋ぎを着ます。つまり、フードの裾は繋ぎの中に入ります。その繋ぎの裾の上から③ソックスを履き、最後に④防塵靴を履きます。ソックスと防塵靴は別々なタイプと一体型があります。この理由は後で説明します。この順序は、すんなり着用できる順番でもあるからです。

 

【防塵衣の脱ぎ方】

 今度は脱ぐ順番を説明します。クリーンルームから二次更衣室に出てきたら①防塵靴②ソックス③繋ぎ④フードの順番で脱ぎます。上図のように、着た順番とちょうど逆になります。二次更衣室に出てきた際、真っ先にフードを脱いでしまう場面に遭遇することが時々ありましたので注意が必要です。

 それでは、フードを最初に脱ぐとどうなるのかを考えてみましょう。

 フードは一番初めに着用するので、重ねの順番では一番下になります。繋ぎはまだ着ているので、その内側からずるずると引き出すことになります。その時、防塵衣の内側や下着(Tシャツや中間着)に付着している髪の毛、皮膚、繊維、化粧品などが一緒に引きずり出され、繋ぎの清浄な部分に落下、付着するものが出てきます。

 ここで「次にクリーンルームに入る時、またエアシャワーを浴びるのでよいではないか」とも考えられますが、一度付着したものは取れ難いです。それがクリーンルーム内での様々な動作や行動で落下、或(ある)いは飛散してしまいます。クリーンルームの4原則(リンク参照)のうちの、“持ち込まない”の部分に逆行することになります。従って、着た順番の逆に脱ぐというのは、重ねて着用していったものを外側から順に剥(は)ぐという考え方です。清浄度の高い部分と汚れている部分を接触させないということです。

 

【ゴミの動き】

 この着用順で、ゴミはどう動くかを考えます。

 フードの内側にあるゴミ、および発生したゴミ、例えば髪の毛、繊維、皮膚、化粧品などは顔面の開口部から吹き出すものもありますが、多くはフードの内側を伝い落下します。それを繋ぎの内側で受け、さらに落下したものはソックス内で捕集します。

 最後のゴミの処理方法は2つあります。ソックス、或いはソックスと靴の一体型のものは、その中で回収されます。その後の着脱でソックスから出てきてしまうものは、二次更衣室の清掃で回収します。また中に残ってしまうものはクリーニングで除去します。

 もう一つは、繋ぎの裾が少し開いているものを採用しているタイプでのゴミの処理です。この場合靴もショートブーツと呼ばれ丈が短いです。周囲に少し短い生地が付いていますが、繋ぎの裾を覆うような長さではないので、繋ぎと裾の間には隙間が出ます。

 繋ぎの裾も広がっています。繋ぎの内側を落下してきたゴミは、靴では回収することができず、クリーンルーム内に漏れ放題です。このタイプを採用しているところは清浄度の高いクリーンルームです。この理由は、清浄度の高いクリーンルームは、床全面が穴開きであり、落ちてきたゴミはそのまま床下まで落とすという考えです。つまりクリーンルームの構造と防塵衣の仕様をセットにした考え方です。最後のゴミの処理の仕方は分かれますが、いずれにしても防塵衣の内側で発生したゴミを下へ落とす考え方は同じです。

 防塵衣の劣化による静電気の問題については次回にします。

・・・・・

 

 最近記事を執筆していて、時々地球温暖化のことが頭をよぎります。かなり前ですが、アメリカのゴア副大統領が強烈に訴えていました。その時の画像を見て衝撃を受けた記憶を今でも鮮明に覚えています。目に見えて変化していく地球です。地球の劣化といっても良いでしょう。地球の環境は急激に変化していますが、われわれ人の意識はどれだけ変わったでしょうか。

 ものづくりの過程で発生する廃棄、やり直し、手直しは、企業としては大きなロスです。工数だけでなく原材料を必要以上に投入することや納期、数量の確保のためのエネルギー、薬品、ガス、電気などすべてが余計なものです。大量生産は裏返すと大量不良生...

 

 

◆ クリーン化活動の組織と現場の重要性

 下図はクリーン化活動を進めるうえで重要なことを私の経験、体験を元に整理したものです。これは現場や現場に近い部門だけでなく、経営者や管理監督者など会社全体が知っておいてほしいことです。クリーン化を成功させる条件について今回も前回の4項「クリーン化のなぜを考える」からの続きをお話します。

 

クリーン化

図1. クリーン化活動の重要ポイント

 

4. クリーン化のなぜを考える

③ なぜ防塵衣に着用順があるのか

 防塵(ぼうじん)衣の着用順は防塵衣のタイプや会社の考え方、思想で若干違う場合がありますが、ここでは基本的な着用順序を下記図で説明します。

 

クリーン化

図2.防塵衣の着方・脱ぎ方の順序

 

【防塵衣の着方】

 最初に①フードを被(かぶ)ります。ここでいうフードは単に帽子のようなものではなく裾が長いものです。その上から②繋ぎを着ます。つまり、フードの裾は繋ぎの中に入ります。その繋ぎの裾の上から③ソックスを履き、最後に④防塵靴を履きます。ソックスと防塵靴は別々なタイプと一体型があります。この理由は後で説明します。この順序は、すんなり着用できる順番でもあるからです。

 

【防塵衣の脱ぎ方】

 今度は脱ぐ順番を説明します。クリーンルームから二次更衣室に出てきたら①防塵靴②ソックス③繋ぎ④フードの順番で脱ぎます。上図のように、着た順番とちょうど逆になります。二次更衣室に出てきた際、真っ先にフードを脱いでしまう場面に遭遇することが時々ありましたので注意が必要です。

 それでは、フードを最初に脱ぐとどうなるのかを考えてみましょう。

 フードは一番初めに着用するので、重ねの順番では一番下になります。繋ぎはまだ着ているので、その内側からずるずると引き出すことになります。その時、防塵衣の内側や下着(Tシャツや中間着)に付着している髪の毛、皮膚、繊維、化粧品などが一緒に引きずり出され、繋ぎの清浄な部分に落下、付着するものが出てきます。

 ここで「次にクリーンルームに入る時、またエアシャワーを浴びるのでよいではないか」とも考えられますが、一度付着したものは取れ難いです。それがクリーンルーム内での様々な動作や行動で落下、或(ある)いは飛散してしまいます。クリーンルームの4原則(リンク参照)のうちの、“持ち込まない”の部分に逆行することになります。従って、着た順番の逆に脱ぐというのは、重ねて着用していったものを外側から順に剥(は)ぐという考え方です。清浄度の高い部分と汚れている部分を接触させないということです。

 

【ゴミの動き】

 この着用順で、ゴミはどう動くかを考えます。

 フードの内側にあるゴミ、および発生したゴミ、例えば髪の毛、繊維、皮膚、化粧品などは顔面の開口部から吹き出すものもありますが、多くはフードの内側を伝い落下します。それを繋ぎの内側で受け、さらに落下したものはソックス内で捕集します。

 最後のゴミの処理方法は2つあります。ソックス、或いはソックスと靴の一体型のものは、その中で回収されます。その後の着脱でソックスから出てきてしまうものは、二次更衣室の清掃で回収します。また中に残ってしまうものはクリーニングで除去します。

 もう一つは、繋ぎの裾が少し開いているものを採用しているタイプでのゴミの処理です。この場合靴もショートブーツと呼ばれ丈が短いです。周囲に少し短い生地が付いていますが、繋ぎの裾を覆うような長さではないので、繋ぎと裾の間には隙間が出ます。

 繋ぎの裾も広がっています。繋ぎの内側を落下してきたゴミは、靴では回収することができず、クリーンルーム内に漏れ放題です。このタイプを採用しているところは清浄度の高いクリーンルームです。この理由は、清浄度の高いクリーンルームは、床全面が穴開きであり、落ちてきたゴミはそのまま床下まで落とすという考えです。つまりクリーンルームの構造と防塵衣の仕様をセットにした考え方です。最後のゴミの処理の仕方は分かれますが、いずれにしても防塵衣の内側で発生したゴミを下へ落とす考え方は同じです。

 防塵衣の劣化による静電気の問題については次回にします。

・・・・・

 

 最近記事を執筆していて、時々地球温暖化のことが頭をよぎります。かなり前ですが、アメリカのゴア副大統領が強烈に訴えていました。その時の画像を見て衝撃を受けた記憶を今でも鮮明に覚えています。目に見えて変化していく地球です。地球の劣化といっても良いでしょう。地球の環境は急激に変化していますが、われわれ人の意識はどれだけ変わったでしょうか。

 ものづくりの過程で発生する廃棄、やり直し、手直しは、企業としては大きなロスです。工数だけでなく原材料を必要以上に投入することや納期、数量の確保のためのエネルギー、薬品、ガス、電気などすべてが余計なものです。大量生産は裏返すと大量不良生産にも繋がってしまいます。

 これは会社、企業の利益や存続に結びつけて考えてしまいがちです。当然のことではありますが、自社の都合です。これらが地球温暖化を加速させている一因という意識も持ちたいものです。

 山形県に赴任した時、休日は陸上競技場で走っていました。雨上がりの水たまりにアオスジアゲハ(暖地性アゲハ)が集まっていることがあり、気になって調べてみると当時、分布の上限は岐阜県あたりとなっていました。それが山形まで・・・温暖化が加速していると感じました。

 これは一例ですが、良く観察すると私たちの周りには沢山(たくさん)見つけることができます。傍観的に見ているのではなく、ものづくり企業にとっても、私たち個人にとっても、自社の、そして自分の問題として捉え、小さなことでもできることは継続していくことが大切だと感じています。その積み重ね、結集が地球の延命化に貢献していくと考えたい。私たちはどんな形で未来に引き継いでいけるのでしょうか。

 

 次回に続きます。

 

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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