クリーン化について(その167)クリーン化の基礎(その29)クリーン化4原則

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クリーン化について(その167)クリーン化の基礎(その29)クリーン化4原則

【目次】

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    前回のクリーン化について(その166)クリーン化の基礎(その28)クリーン化4原則の続きです。

     

    【乱流方式クリーンルームの気流不具合事例】

    まず、乱流方式のクリーンルームでの気流についての不具合事例を紹介します。

     

    クリーン化について(その167)クリーン化の基礎(その29)クリーン化4原則

    写真.不具合事例:ゴミの付着しにくい気流形状づくり

     

    正面にあるのはパッケージエアコンです。写真には写っていませんが、上部に吹き出し口があり、清浄度の高い空気が吹き出します。下部の黒く写っている部分から汚れた空気を回収します。この内部には、フィルターが、1個、または2個並んで入っています。回収された汚れた空気は、このフィルターでろ過し、再び上部から吹き出しています。

     

    この写真で問題なのは、パッケージエアコンの前に製品置き場があることです。パッケージエアコンの吸い込み口に向かって、汚れた空気が流れて行くので吸い込み口付近のエリアは特に汚れています。パーティクルカウンターで測定してみると良くわかります。その空気がパッケージエアコンの前に設置された製品置き場の隙間を通り、吸い込まれます。

     

    この写真の製品置き場は、ビニールで囲われています。また、骨組みはプラスチック製のパイプです。これらの隙間を空気が通り抜ける時、ビニールやパイプと擦れ、静電気(摩擦帯電)が起きます。その隙間を擦り抜ける風で運ばれてきたゴミが、ビニールやパイプに付着します。

     

    このゴミをワイパーで拭き取ろうとしても、静電気の影響によりゴミが移動するだけで、奇麗に拭き取ることはできません。ましてや製品がもし裸だったら、製品にも直接付着することになります。せっかく気を使って、丁寧に製造してきたものが、最後の保管場所で汚れてしまうのです。

     

    製品だけでなく、部品や原材料も同じ考えで保護が必要です。なぜパッケージエアコンの前はスペースを確保してあるのかを理解していないと、このスペースは無駄だとか、もったいないと考え、このようになってしまうのです。中には、“1㎡当たりの売り上げを考えろ”という人までいました。

     

    パッケージエアコンの上部から清浄度の高い風(横風)が吹き出し、天井の所々から部分的に清浄度の高い風が吹き出す(垂直な空気)ことで、部分的に相互に衝突し、気流が乱れます。このようなクリーンルームの場合は、気流をスケッチし、気流の上流に製品加工、保管エリアを持ってくるようにすべきです。

     

    ◆不具合...

    クリーン化について(その167)クリーン化の基礎(その29)クリーン化4原則

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      前回のクリーン化について(その166)クリーン化の基礎(その28)クリーン化4原則の続きです。

       

      【乱流方式クリーンルームの気流不具合事例】

      まず、乱流方式のクリーンルームでの気流についての不具合事例を紹介します。

       

      クリーン化について(その167)クリーン化の基礎(その29)クリーン化4原則

      写真.不具合事例:ゴミの付着しにくい気流形状づくり

       

      正面にあるのはパッケージエアコンです。写真には写っていませんが、上部に吹き出し口があり、清浄度の高い空気が吹き出します。下部の黒く写っている部分から汚れた空気を回収します。この内部には、フィルターが、1個、または2個並んで入っています。回収された汚れた空気は、このフィルターでろ過し、再び上部から吹き出しています。

       

      この写真で問題なのは、パッケージエアコンの前に製品置き場があることです。パッケージエアコンの吸い込み口に向かって、汚れた空気が流れて行くので吸い込み口付近のエリアは特に汚れています。パーティクルカウンターで測定してみると良くわかります。その空気がパッケージエアコンの前に設置された製品置き場の隙間を通り、吸い込まれます。

       

      この写真の製品置き場は、ビニールで囲われています。また、骨組みはプラスチック製のパイプです。これらの隙間を空気が通り抜ける時、ビニールやパイプと擦れ、静電気(摩擦帯電)が起きます。その隙間を擦り抜ける風で運ばれてきたゴミが、ビニールやパイプに付着します。

       

      このゴミをワイパーで拭き取ろうとしても、静電気の影響によりゴミが移動するだけで、奇麗に拭き取ることはできません。ましてや製品がもし裸だったら、製品にも直接付着することになります。せっかく気を使って、丁寧に製造してきたものが、最後の保管場所で汚れてしまうのです。

       

      製品だけでなく、部品や原材料も同じ考えで保護が必要です。なぜパッケージエアコンの前はスペースを確保してあるのかを理解していないと、このスペースは無駄だとか、もったいないと考え、このようになってしまうのです。中には、“1㎡当たりの売り上げを考えろ”という人までいました。

       

      パッケージエアコンの上部から清浄度の高い風(横風)が吹き出し、天井の所々から部分的に清浄度の高い風が吹き出す(垂直な空気)ことで、部分的に相互に衝突し、気流が乱れます。このようなクリーンルームの場合は、気流をスケッチし、気流の上流に製品加工、保管エリアを持ってくるようにすべきです。

       

      ◆不具合事例:パッケージエアコンの前のスペースに管理者の机

      パッケージエアコンの前に職場の管理者の机があった。朝礼の時に作業者が集まり、そこで書類などを用い朝会が始まる。また、日常的に作業者が報連相(報告、連絡、相談)のため上司のところに行く。基準、標準類などのファイルも、上司の近くに設置されていて確認の場合はそこに行くのです。この繰り返しで、ゴミが発生、気流の下流に設置された作業ラインに流れ、製品を汚していたという事例です。

       

      ◆クリーンルームの気流と湿度問題とは

       『クリーンルームの中での最大の発生源、汚染源は人である』 ことを思い出しましょう。そしてレイアウト設計をする場合は、気流も考慮しましょう。なお、パッケージエアコンの中のフィルターも汚れや劣化が進むので、定期的な清浄度測定、フィルターのクリーニングが必要です。奇麗な空気が吹き出しているはずなのに、汚していたという例もあります。

       

      余談ですが、こんな例がありました。

      私が指導に行ったあるところの話です。今までパッケージエアコン内のフィルターは掃除をしたことがなかった。その現場のパッケージエアコンは、清浄度を補うだけでなく、室内の湿度を高めることが目的でした。パッケージエアコンのカバーを外し、中を懐中電灯で照らして見たところ、なんと苔が生えていたというのです。工場は、町中ではなく、郊外に建設する例が多いでしょう。周囲の環境にもよりますが、何らかの原因で苔の胞子が舞い込んだのでしょう。

       

      例えば窓を開けたことがあるとか、設備の搬入、搬出のときのドアの開放、さらに虫がクリーンルームに入り込んだ時に運び込まれたと言うこともあるかも知れません。私が、あるところの現場診断をしたときに、クリーンルーム内にクモの巣を見つけたこともありますので、あり得ることですね。湿気と光があれば、苔も生きられるでしょう。ほどよい環境かも知れません。

       

      クリーンルームで最もお金がかかるのが電気代です。24時間ずっとパッケージエアコンを動かし続け、汚れた空気を途切れなくクリーンルーム内に供給していたのでは、何のためのクリーンルームなのかわからなくなってしまいます。気流の問題ではないですが、半導体製造の後工程、特にテープ実装などの工程では、やや湿度を高くしている。この加湿のためパッケージエアコンを用いている場合もあります。

       

      パッケージエアコンから水分がミストとなって吹き出すことがあります。その量が多くなると部屋全体にミストが浮遊し、設備などが錆びる問題も起きます。浮遊するミストの粒径は極端に小さいので、パーティクルカウンターでの定期測定でも、把握できないものもあります。

       

      水のミスト、オイルミスト、薬品のミストなどが発生する可能性のあるところでは、通常の定期測定の粒径が0.5ミクロンであっても、それに加え0.5ミクロンよりも小さな粒径で確認してみましょう。ミストが浮遊していれば0.1ミクロン、0.3ミクロンの粒径で測定すると良くわかります。

       

      【4原則『排除する』清掃、クリーンマット等でのゴミの回収、局所排気設備を活用】

      ◆ 定期的に清掃する

      クリーンルームは奇麗な部屋ではありません。クリーンルームを汚すのも、奇麗にするのも人です。クリーンルームに関わる全員が汚さないだけではなく、きちんと清掃し、クリーンルームの環境を維持向上することが大切です。そのことから、“クリーンルームはクリーニングルーム”と言われます。

       

      今日一回くらいは手を抜いても良いだろうと手を抜く。でもすぐに清浄度に大きな変化は現れない。また製品品質にも目立った問題は発生しない。そして今日も忙しいからちょっとくらい手を抜いてもいいか。1回や2回手を抜くことに何か問題があるのか、などと考えてしまうと、清掃そのものの価値も見失い、徐々に清掃しなくなってしまうのです。

       

      たかが掃除だと考えている方も多いようです。極端な例を紹介します。ある会社を訪問した時の役員の発言です。「そんなことをしていないで、1個でも多く作れ!」 などと言う場面に遭遇しました。清掃することが悪いことのようになっているのです。それを聞いて大変ショックを受けました。物を作ること以外は仕事ではないという感覚です。そうなると気が付いた時には大変なことになってしまうのです。

       

      利益を優先し、品質を落とすことになるのです。品質が悪いと製品を余計に作ることになり、損失が大きくなる。そして企業の信頼も失うのです。その様な企業も見てきました。“ローマは一日にして成ならず”という言葉があります。毎日の積み重ね、継続することの大切さです。1回や2回で成果が見えるものではありませんが、それをコツコツやり続けることに意味があります。“継続は力なり”という言葉もあります。これらは、逆に、手を抜くと、崩れ落ちるように悪い環境になってしまうことも言っています。長い努力が短時間に消えてしまうのです。品質や歩留まりが目に見えて低下したという頃には、立て直しには相当時間が必要になります。あるいは立て直しはできないかも知れません。その間の様々なロスは大きいのです。企業活動が終わってしまうかも知れません。

       

      次回に続きます。

       

      クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。

      【参考文献】 
      清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
          同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
          同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

       

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      この記事の著者

      清水 英範

      在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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