クリーン化4原則-8 クリーン化について(その33)

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 連載その16で『クリーン化4原則+監視の重要性』について述べました。ここでは、下図のクリーン化4原則について個別に解説しております。今回は、クリーン化4原則-8 「堆積(たいせき)させない」について解説します。

 

クリーン化4原則

図1. クリーン化4原則 

 

◆ クリーン化:床面に直置きしない~塵埃などが汚染原因に

 ある工業系の会社で、事業の説明を受けたあと現場診断に行った時のことです。夕方現場に入ったところ、作業者が「今日、この製品はもう着手しないのでロッカーにしまいます」と言って、ロッカーの前の床に置いてから、扉を開けてしまっていました。

 その時、立ち会っている技術系の管理職の方に「床に置くとゴミだらけになるので、床への直置きは避けたいです」と言いましたが、どうもあまりピンときていないようでした。そこで「試しに床から30㎝くらいずつの間隔で、天井までパーティクルを測ってみませんか」と提案し帰ってきました。

 すると翌朝、その管理職の方から電話があり「昨日言われた通り、パーティクルを測定してみたところ、大変なことになっていました。作業している高さでは、まったく問題がなかったのが、床付近、天井付近は異常な数値でした」というのです。実際に自分たちでやってみて、その凄(すご)さを実感したことに価値があるのです。言われただけ、聞いただけでは、そのまま忘れ去られてしまうことが多いでしょう。

 この異常な数値は、次の原因によります。

  • 床付近は、パーティクルが浮遊、滞留していることに加え、粒径が大きな、あるいは重いものが床に落下している。それが乱流式クリーンルーム内では、気流、人の動作、行動や台車などの移動により、乱気流が起きる。そして床に堆積していたものが巻き上がり、粒径が大きいものの数値も多くなる。
  • 天井付近でパーティクルが多いのは、室温、体温、照明、設備などの熱源により、上昇気流が発生し、軽いものは天井付近まで押し上げられ滞留する。

 その会社では、床に製品を置いたので①の内容によって、比較的大きな粒径のゴミが巻き上がり付着しました。“ゴミだらけ”という表現はそのことを言いたかったのです。このようなデータから製品を置く高さを決めて、ルール化しておきましょう。もちろん容器内に保管しての話です。 

 

◆ クリーン化:天井に滞留した浮遊塵の対策

 「天井に滞留した浮遊塵(じん)はどのように除去すればよいでしょうか」という質問をよくいただきますが、これについての特効薬はありません。日ごろから清掃を繰り返す、継続することが重要です。地味ですが、地道にコツコツ継続することです。

 長期連休で工場が停止した場合、休日明けに工場に入ると、設備や作業台、床の上に埃(ほこり)がたくさん堆積しています。見たことがある方もいると思います。こうなるとまず、一斉清掃から始めないと工場の稼働ができません。

 これは、上昇気流によって強制的に持ち上げられたものが、工場が冷えることによって降ってきたものです。日ごろからきちんと清掃するということは、クリーンルーム内のゴミをいかに減らすかということです。パーティクルカウンターで定期的に測定している高さは、基本的には製品加工の高さです。その管理も重要ですが、クリーンルーム内の状態も知っておくことは大切です。

 一方、層流式のクリーンルームは、天井から清浄度の高い空気が供給され、穴あきの床から気流が抜けていきます。本来浮遊するレベルのパーティクルであっても、その多くは床下に押し付...

 

 

 連載その16で『クリーン化4原則+監視の重要性』について述べました。ここでは、下図のクリーン化4原則について個別に解説しております。今回は、クリーン化4原則-8 「堆積(たいせき)させない」について解説します。

 

クリーン化4原則

図1. クリーン化4原則 

 

◆ クリーン化:床面に直置きしない~塵埃などが汚染原因に

 ある工業系の会社で、事業の説明を受けたあと現場診断に行った時のことです。夕方現場に入ったところ、作業者が「今日、この製品はもう着手しないのでロッカーにしまいます」と言って、ロッカーの前の床に置いてから、扉を開けてしまっていました。

 その時、立ち会っている技術系の管理職の方に「床に置くとゴミだらけになるので、床への直置きは避けたいです」と言いましたが、どうもあまりピンときていないようでした。そこで「試しに床から30㎝くらいずつの間隔で、天井までパーティクルを測ってみませんか」と提案し帰ってきました。

 すると翌朝、その管理職の方から電話があり「昨日言われた通り、パーティクルを測定してみたところ、大変なことになっていました。作業している高さでは、まったく問題がなかったのが、床付近、天井付近は異常な数値でした」というのです。実際に自分たちでやってみて、その凄(すご)さを実感したことに価値があるのです。言われただけ、聞いただけでは、そのまま忘れ去られてしまうことが多いでしょう。

 この異常な数値は、次の原因によります。

  • 床付近は、パーティクルが浮遊、滞留していることに加え、粒径が大きな、あるいは重いものが床に落下している。それが乱流式クリーンルーム内では、気流、人の動作、行動や台車などの移動により、乱気流が起きる。そして床に堆積していたものが巻き上がり、粒径が大きいものの数値も多くなる。
  • 天井付近でパーティクルが多いのは、室温、体温、照明、設備などの熱源により、上昇気流が発生し、軽いものは天井付近まで押し上げられ滞留する。

 その会社では、床に製品を置いたので①の内容によって、比較的大きな粒径のゴミが巻き上がり付着しました。“ゴミだらけ”という表現はそのことを言いたかったのです。このようなデータから製品を置く高さを決めて、ルール化しておきましょう。もちろん容器内に保管しての話です。 

 

◆ クリーン化:天井に滞留した浮遊塵の対策

 「天井に滞留した浮遊塵(じん)はどのように除去すればよいでしょうか」という質問をよくいただきますが、これについての特効薬はありません。日ごろから清掃を繰り返す、継続することが重要です。地味ですが、地道にコツコツ継続することです。

 長期連休で工場が停止した場合、休日明けに工場に入ると、設備や作業台、床の上に埃(ほこり)がたくさん堆積しています。見たことがある方もいると思います。こうなるとまず、一斉清掃から始めないと工場の稼働ができません。

 これは、上昇気流によって強制的に持ち上げられたものが、工場が冷えることによって降ってきたものです。日ごろからきちんと清掃するということは、クリーンルーム内のゴミをいかに減らすかということです。パーティクルカウンターで定期的に測定している高さは、基本的には製品加工の高さです。その管理も重要ですが、クリーンルーム内の状態も知っておくことは大切です。

 一方、層流式のクリーンルームは、天井から清浄度の高い空気が供給され、穴あきの床から気流が抜けていきます。本来浮遊するレベルのパーティクルであっても、その多くは床下に押し付けられているわけです。ところが、この層流式クリーンルームも、長期連休などで運転を止めると、それらの軽いパーティクルがじわじわと浮き上がってくるようです。

 層流式のクリーンルームの床下は、数メートルの空間があります。浮遊塵は数メートルは上がってくるようです。したがって清浄度を維持する必要のあるところ(工程)は、完全には止められないようです。もし止めたとか、空気の喚気回数を落とすなどする場合は、その期間のパーティクル推移を把握するなど慎重な対応が必要です。

 今回は、クリーン化4原則の“堆積させない”について、床に物を置かないことを例に、クリーンルームの構造も含め説明しました。

 

 次回に続きます。

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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