クリーン化のイメージと私の思い クリーン化について(その3)

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1、クリーン化のイメージ

 「クリーン化」という言葉は、限られた分野で使われます。一般にはイメージし難いと思いますので、下図で会社組織と米づくりを対比させて説明します。図中、下部の点線は水面とします。

 

クリーン化


 それでは、新たなお米を開発し、生産、販売に至るまでを考えてみましょう。

 市場がどんなお米を望んでいるかを把握するのは、会社組織では営業の担当になります。その顧客の要望に沿うものを開発、設計するのは開発、設計部門。それを製品化し命名(商標登録)します。最近では沢山の銘柄が出回っています。

 少子化や日本食離れの影響で、昔のように沢山作れば良いというものではなく、市場の要求に応えていくことが求められてきた結果です。また、営業の情報や注文を受けた顧客への納期を確保することも必要です。

 これは、DOT(デリバリーオンタイム)、JIT(ジャストインタイム)などという言葉がありますが、いわゆる納期を意識したものづくりです。分担は生産管理部門です。これを実際に作る場合、田植えと稲刈りの時期は特に忙しくなります。

 そこで、田植え機、稲刈り機の調達が必要になります。個人が所有すると高額な設備投資になるので、その時だけ調達することが多いようです。この担当は、会社組織では生産技術部門に該当するでしょうか。

 

 また、一時的に人手も必要になります。人を集めたり、費用手配をすることは総務、人事経理部門になります。

 その地方の気象条件なども加味し開発されます。例えば寒冷地なら、水温はどうなのか加味し、品種の開発をするわけです。その水の温度はどう管理するか、これは設計、技術部門の担当です。

 寒冷地では、冷たい水を直接田に入れず、田んぼの土手に水路を作り、供給される水はそこを一回りさせてから田んぼに入れる「回し水」など、わずかですが水温を上げる手法も稲作の知恵としてありました。

 田植え後はどんな病気が発生しそうなのか、それに適した消毒を技術部門が条件を決めます。ここでいう技術部門は、実際の場面では、JAが情報提供や指導をしていると思います。夏頃には田んぼの水は枯らします。これも技術部門が条件を決め指示します。このように、稲作もものづくり企業も対比させてみるとそっくり同じ感じがします。

 

2、クリーン化の担当部分

 昔、半導体が出て来たころは、“ICは産業の米”と表現されました。これまでの説明では、米作り対半導体製造という対比が出てしまいます。この“ICは産業の米”本来の意味は「昔、日本では鉄(の産業)が強かった。それが見事に半導体に置き換わったと」とうことを言っているようです。ちなみに、水晶デバイスは産業の塩といわれます。

 上図の点線から下、水面下の説明をします。

 

 田植え後は、毎日田んぼの水の見回りが必要です。これはクリーン化では、巡回や定期観測にあたります。また、頻繁な草取りも必要です。野菜作りもそうですが、相当手が掛かります。反面雑草は放っておいてもどんどん成長します。

 余談ですが、同じほ乳類といっても、人間は生まれた時は、母乳を与えるなど手を掛けなければ成長しません。ところが、他のほ乳類は、生まれたての赤ちゃんでも、お腹がすけば自分でお乳を探します。野菜も手を掛けなければ上手く育ちませんが、同じ植物でも雑草は放っておいてもたくましく育ちます。

 その結果、稲よりも早く成長するので、草に栄養を取られ、日陰になってしまうこともあります。この時期、“田の草取り”と言う重労働の作業が続きます。田んぼは石ころがあったり、土壌が悪いと稲の発育が遅れます。石を排除したり、土壌改善をしていく。これも重要な仕事です。

 この水面下の仕事はクリーン化の部分にあたります。

 水面より上は、会社組織と同じで、比較的日が当たる部分ですが、水面下の仕事、その苦労はあまり知られていません。でもこの部分は手を抜くと良い品質が得られません。地味ですが地道にコツコツ継続していく仕事です。

 クリーン化でいうと現場の活動部分です。ベースを強固にするには、この部分を強化するということです。特に、成果主義が要求される時代、表面だけが評価され、...

 

 

1、クリーン化のイメージ

 「クリーン化」という言葉は、限られた分野で使われます。一般にはイメージし難いと思いますので、下図で会社組織と米づくりを対比させて説明します。図中、下部の点線は水面とします。

 

クリーン化


 それでは、新たなお米を開発し、生産、販売に至るまでを考えてみましょう。

 市場がどんなお米を望んでいるかを把握するのは、会社組織では営業の担当になります。その顧客の要望に沿うものを開発、設計するのは開発、設計部門。それを製品化し命名(商標登録)します。最近では沢山の銘柄が出回っています。

 少子化や日本食離れの影響で、昔のように沢山作れば良いというものではなく、市場の要求に応えていくことが求められてきた結果です。また、営業の情報や注文を受けた顧客への納期を確保することも必要です。

 これは、DOT(デリバリーオンタイム)、JIT(ジャストインタイム)などという言葉がありますが、いわゆる納期を意識したものづくりです。分担は生産管理部門です。これを実際に作る場合、田植えと稲刈りの時期は特に忙しくなります。

 そこで、田植え機、稲刈り機の調達が必要になります。個人が所有すると高額な設備投資になるので、その時だけ調達することが多いようです。この担当は、会社組織では生産技術部門に該当するでしょうか。

 

 また、一時的に人手も必要になります。人を集めたり、費用手配をすることは総務、人事経理部門になります。

 その地方の気象条件なども加味し開発されます。例えば寒冷地なら、水温はどうなのか加味し、品種の開発をするわけです。その水の温度はどう管理するか、これは設計、技術部門の担当です。

 寒冷地では、冷たい水を直接田に入れず、田んぼの土手に水路を作り、供給される水はそこを一回りさせてから田んぼに入れる「回し水」など、わずかですが水温を上げる手法も稲作の知恵としてありました。

 田植え後はどんな病気が発生しそうなのか、それに適した消毒を技術部門が条件を決めます。ここでいう技術部門は、実際の場面では、JAが情報提供や指導をしていると思います。夏頃には田んぼの水は枯らします。これも技術部門が条件を決め指示します。このように、稲作もものづくり企業も対比させてみるとそっくり同じ感じがします。

 

2、クリーン化の担当部分

 昔、半導体が出て来たころは、“ICは産業の米”と表現されました。これまでの説明では、米作り対半導体製造という対比が出てしまいます。この“ICは産業の米”本来の意味は「昔、日本では鉄(の産業)が強かった。それが見事に半導体に置き換わったと」とうことを言っているようです。ちなみに、水晶デバイスは産業の塩といわれます。

 上図の点線から下、水面下の説明をします。

 

 田植え後は、毎日田んぼの水の見回りが必要です。これはクリーン化では、巡回や定期観測にあたります。また、頻繁な草取りも必要です。野菜作りもそうですが、相当手が掛かります。反面雑草は放っておいてもどんどん成長します。

 余談ですが、同じほ乳類といっても、人間は生まれた時は、母乳を与えるなど手を掛けなければ成長しません。ところが、他のほ乳類は、生まれたての赤ちゃんでも、お腹がすけば自分でお乳を探します。野菜も手を掛けなければ上手く育ちませんが、同じ植物でも雑草は放っておいてもたくましく育ちます。

 その結果、稲よりも早く成長するので、草に栄養を取られ、日陰になってしまうこともあります。この時期、“田の草取り”と言う重労働の作業が続きます。田んぼは石ころがあったり、土壌が悪いと稲の発育が遅れます。石を排除したり、土壌改善をしていく。これも重要な仕事です。

 この水面下の仕事はクリーン化の部分にあたります。

 水面より上は、会社組織と同じで、比較的日が当たる部分ですが、水面下の仕事、その苦労はあまり知られていません。でもこの部分は手を抜くと良い品質が得られません。地味ですが地道にコツコツ継続していく仕事です。

 クリーン化でいうと現場の活動部分です。ベースを強固にするには、この部分を強化するということです。特に、成果主義が要求される時代、表面だけが評価され、水面下の努力には日が当たらないのが現実ではないでしょうか。ところが、収穫の時期には、その差が出てきます。

 

3、私の思い

 私はこの“日が当たらない部分”に日を当てたいと考えています。どんなに良い設計ができたとしても、それを具現化するのは現場だからです。その現場を大切にしたい。ここに日を当ててこそ、人が輝き、そしてクリーン化活動などが活発に行われ、ものづくり基盤の強化、ひいては企業経営に繋がってくると考えています。

 先ほどの絵の水面下とは、縁の下の力持ちと言われる部分です。ここが貧弱では、頭でっかちとなってしまいます。そうなると、水面から出ている上の部分は支えきれませんね。クリーン化を通してですが、会社を構成するそれぞれの部門が機能しているかどうか今一度見直したいですね。

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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