付帯設備の診断-1 クリーン化について(その72)

更新日

投稿日

クリーン化

 

付帯設備もいろいろなものがあります。これらはクリーンルームや生産設備を支える重要なものですが、ともすると忘れがちな部分です。これも正常に機能しているかをチェック、診断しておく必要があります。今回は、その一つ、エアシャワーの診断について説明します。

 

1.エアシャワーの診断着眼点

 

(1)ドアについて

  • ①自動ドア
  • ②ドアノブ
  • ③蝶番
  • ④ドアクローザー
  • ⑤エアシャワー内の清掃
  • ⑥周囲の環境全般

 

ドアに着目してもこんなにあります。ところが日ごろ頻繁に出入りしていても、不具合に気が付かないことがあります。良く観察しましょう。

 

①自動ドア

自動ドアは、手を使わずに開閉できるので採用しているところは多い。逆にどこにも触れないので、異常を感知する機会は少ない。ドアの自動開閉の駆動方式はどうなっているかを把握しておきたい。

 

センサーで感知し、チェーンで開閉させるタイプでは、滑車がレールに乗り、チェーンで扉を動かしている。その部分は覆われ、見えないので劣化していても発見しにくい。開閉のたびに、金属同士が擦れ、金属粉が発生、飛散する。そしてグリスも落下や飛散がある。長期間保守しなかったところで、開閉のたびにチェーンの錆が飛散していたという例がある。

 

またグリスが乾き、黒い粉となって飛散した例もある。こうなるとグリスの役目をしないので、金属粉も増加し、さらにはチェーンの摩耗、損傷が起きる可能性がある。この付近は汚染領域となる可能性がある。特に人や台車の通行が集中する場所で、それにより気流が発生、拡散する。この付近には製品等品質に関わるものは置かないことです。

 

また、チェーンの弛みも目視では発見しにくいことに加え、人の出入り口なので、故障すると緊急時の避難にも影響することが考えられる。定期的な点検が必要です。

 

この他、センサーの感知とドアの開閉のタイミングがずれていないかも見ておきたい。極端な例だが、クリーンルーム側が早く開いてしまい、エアシャワー内で巻き上がっている浮遊塵が、クリーンルーム内へ流れ込んでいた例もある。

 

②ドアノブの劣化

人が開閉するドアにはドアノブがある。レバータイプもあるが、多くは回転させるタイプである。これはエアシャワーに限ったことではなく、更衣室など仕切られている部屋があれば、ドアが存在する。同じ見方でチェックしたい。

 

【不具合事例の紹介】

工場巡回中に、クリーンルームのドアノブの劣化に気づいた。最初から気づいたのではなく、偶然ドアノブの下の桟(さん)に汚れを発見した。その汚れは黒いものと、キラキラ光るものだった。何だろうと近くに寄って観察していたところ、そこを通行したいというので、下がって見ていた。その作業者がドアノブを回す時にガチャガチャと音がし、何かが落ちているように見えた。

 

ドアノブを操作しながらその付近をパーティクルカウンターで測定してみた。0.1μm以上の粒径の合計が、1分間に17,000個以上確認された。ドアノブに触れてみると、ゆるみが確認できる。

 

黒い汚れは、グリスの乾いた粉、光るものは金属粉だった。グリスが乾き、その役目をしないため金属が擦れてしまったものです。他のドアノブを確認してみると、ゆるみのあるものは、程度の差はあるが発塵は多い。まったく緩んでいないものの飛散はなかった。

 

関係する現場に連絡し、各クリーン化担当が調査したところ、同様の結果だった。ドアノブは、故障がなければ半永久的に使い切ってしまうものだ。

 

なお、こんな事例もあったので、紹介しておく。

 

ドアノブが緩んでいたが、それでも不都合なく開閉できていた。ところがある時、作業者がドアを開けようとしたら、ドアノブが抜けてしまった。ドアは開かなかったという例だ。これは笑って済ますわけにはいかない。その影響を考えてみよう。

 

もし、停電などのトラブルが発生し、施設管理部門から「空調が停止し、酸素濃度が低下している。直ちに、クリーンルームから退避してください」(通常はクリーンルームを出た、クリーン廊下で待機する場合が多い)というアナウンスがあったとしても(実際にあった)、天井灯は消え非常灯だけの薄暗い中、同じ情報を持った人たち...

クリーン化

 

付帯設備もいろいろなものがあります。これらはクリーンルームや生産設備を支える重要なものですが、ともすると忘れがちな部分です。これも正常に機能しているかをチェック、診断しておく必要があります。今回は、その一つ、エアシャワーの診断について説明します。

 

1.エアシャワーの診断着眼点

 

(1)ドアについて

  • ①自動ドア
  • ②ドアノブ
  • ③蝶番
  • ④ドアクローザー
  • ⑤エアシャワー内の清掃
  • ⑥周囲の環境全般

 

ドアに着目してもこんなにあります。ところが日ごろ頻繁に出入りしていても、不具合に気が付かないことがあります。良く観察しましょう。

 

①自動ドア

自動ドアは、手を使わずに開閉できるので採用しているところは多い。逆にどこにも触れないので、異常を感知する機会は少ない。ドアの自動開閉の駆動方式はどうなっているかを把握しておきたい。

 

センサーで感知し、チェーンで開閉させるタイプでは、滑車がレールに乗り、チェーンで扉を動かしている。その部分は覆われ、見えないので劣化していても発見しにくい。開閉のたびに、金属同士が擦れ、金属粉が発生、飛散する。そしてグリスも落下や飛散がある。長期間保守しなかったところで、開閉のたびにチェーンの錆が飛散していたという例がある。

 

またグリスが乾き、黒い粉となって飛散した例もある。こうなるとグリスの役目をしないので、金属粉も増加し、さらにはチェーンの摩耗、損傷が起きる可能性がある。この付近は汚染領域となる可能性がある。特に人や台車の通行が集中する場所で、それにより気流が発生、拡散する。この付近には製品等品質に関わるものは置かないことです。

 

また、チェーンの弛みも目視では発見しにくいことに加え、人の出入り口なので、故障すると緊急時の避難にも影響することが考えられる。定期的な点検が必要です。

 

この他、センサーの感知とドアの開閉のタイミングがずれていないかも見ておきたい。極端な例だが、クリーンルーム側が早く開いてしまい、エアシャワー内で巻き上がっている浮遊塵が、クリーンルーム内へ流れ込んでいた例もある。

 

②ドアノブの劣化

人が開閉するドアにはドアノブがある。レバータイプもあるが、多くは回転させるタイプである。これはエアシャワーに限ったことではなく、更衣室など仕切られている部屋があれば、ドアが存在する。同じ見方でチェックしたい。

 

【不具合事例の紹介】

工場巡回中に、クリーンルームのドアノブの劣化に気づいた。最初から気づいたのではなく、偶然ドアノブの下の桟(さん)に汚れを発見した。その汚れは黒いものと、キラキラ光るものだった。何だろうと近くに寄って観察していたところ、そこを通行したいというので、下がって見ていた。その作業者がドアノブを回す時にガチャガチャと音がし、何かが落ちているように見えた。

 

ドアノブを操作しながらその付近をパーティクルカウンターで測定してみた。0.1μm以上の粒径の合計が、1分間に17,000個以上確認された。ドアノブに触れてみると、ゆるみが確認できる。

 

黒い汚れは、グリスの乾いた粉、光るものは金属粉だった。グリスが乾き、その役目をしないため金属が擦れてしまったものです。他のドアノブを確認してみると、ゆるみのあるものは、程度の差はあるが発塵は多い。まったく緩んでいないものの飛散はなかった。

 

関係する現場に連絡し、各クリーン化担当が調査したところ、同様の結果だった。ドアノブは、故障がなければ半永久的に使い切ってしまうものだ。

 

なお、こんな事例もあったので、紹介しておく。

 

ドアノブが緩んでいたが、それでも不都合なく開閉できていた。ところがある時、作業者がドアを開けようとしたら、ドアノブが抜けてしまった。ドアは開かなかったという例だ。これは笑って済ますわけにはいかない。その影響を考えてみよう。

 

もし、停電などのトラブルが発生し、施設管理部門から「空調が停止し、酸素濃度が低下している。直ちに、クリーンルームから退避してください」(通常はクリーンルームを出た、クリーン廊下で待機する場合が多い)というアナウンスがあったとしても(実際にあった)、天井灯は消え非常灯だけの薄暗い中、同じ情報を持った人たちが同時にそのドアに殺到しても、ドアは開かない。そしてドアの前に人が滞留する。

 

後ろの人は何が起こっているのかわからない。そしてドアの前で転倒するなどの二次災害が起きるかもしれない。暗い中での混乱状況を想像してみよう。いつ、どこで、何が起きるかわからないのが事故災害である。後悔しないよう、また発生時の被害を最小限にするため、先を考え、手を打つことが必要になる。安全側に倒すということが大切だ。その場の問題だとして済まさないことだ。

 

安全第一と言うが、掛け声だけでなく、どこから始めるのかで、様々な損失に差が出る。ドアノブが緩むという例は、自宅でも確認できるかも知れません。身近なものにも着眼してみましょう。蝶番について以降は、次回にします。続く

 

 

◆関連解説『環境マネジメント』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め...


「クリーン化技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
現場診断・指導について(その3) クリーン化について(その63)

  前回の現場診断・指導について(その2)に続いて、解説します。これまで、現場の監査や診断について説明してきました。これらの機会は人財育成...

  前回の現場診断・指導について(その2)に続いて、解説します。これまで、現場の監査や診断について説明してきました。これらの機会は人財育成...


クリーン化の効果を考える(第2回) クリーン化について(その12)

  ♦ 適正在庫の考え方を昔の洗濯機に例えると…  クリーン化活動を進めるうえで、クリーン化の成果、効果が欲し...

  ♦ 適正在庫の考え方を昔の洗濯機に例えると…  クリーン化活動を進めるうえで、クリーン化の成果、効果が欲し...


クリーン化活動を通じた人財育成(その1)

1.企業の体質改善、基盤強化の核は人財育成     クリーン化をあまり重要視していない企業も多いのかも知れませんが、継続的なクリーン化活動か...

1.企業の体質改善、基盤強化の核は人財育成     クリーン化をあまり重要視していない企業も多いのかも知れませんが、継続的なクリーン化活動か...


「クリーン化技術」の活用事例

もっと見る
クリーン化:防塵衣の腰紐締めていますか

1. クリーン化:防塵衣の構造、設計思想  クリーンルームの中でのゴミの最大の発生源、汚染源は人です。人から発生するゴミをクリーンルーム内に撒き散ら...

1. クリーン化:防塵衣の構造、設計思想  クリーンルームの中でのゴミの最大の発生源、汚染源は人です。人から発生するゴミをクリーンルーム内に撒き散ら...


クリーンルームで、なぜ防塵衣を着用するのか

 クリーンルームに入る時には防塵衣(クリーンスーツ)を着用します。この時、管理監督者からも、きちんととか、ちゃんと着ましょう。ということが強調され、そう言...

 クリーンルームに入る時には防塵衣(クリーンスーツ)を着用します。この時、管理監督者からも、きちんととか、ちゃんと着ましょう。ということが強調され、そう言...


クリーンルームのレイアウトを考える

 クリーンルーム内には、設備、作業台など色々なものを設置するので、予めレイアウト設計をします。高い清浄度を必要としないクリーンルームは、物の流し方、つまり...

 クリーンルーム内には、設備、作業台など色々なものを設置するので、予めレイアウト設計をします。高い清浄度を必要としないクリーンルームは、物の流し方、つまり...