クリーン化教育は経営者、管理監督者から

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 クリーン化「経営者・管理監督者からクリーン化教育を開始する」とは、その意味するところを体験事例から解説します。
 

1.教育の階層別順序

 私にはこんな苦い経験があります。クリーン化活動に本格的に着手しはじめた、もう30年以上も前のことです。当時、現場を毎日巡回し、納得が出来なければ休日にも出社、徹底的な清掃と、絞り込んだ現場の観察をしていました。
 
 特に、「昔からこう言われている」という事象などは、本当なのかと疑い、実験とデータ確認をして検証しました。休日は交代勤務の作業者以外が不在のため、冷静に納得出来るまで集中して仕事が出来ます。その過程でクリーン化の重要さを実感することが日々増大しました。
 
 そこで、クリーン化の理解やその重要さを広く訴えようと、品質情報や各種資料を集め、手作りの教科書で広報教育を始めました。社内クリーン化教育を立ち上げた頃です。事前にすべての製造課長に説明し、また各職場の管理者である作業長(職長)にも協力や了解を得ました。良いことだと快い反応だったので、この根回しで味方が出来たと思い込んでいました。
 
 ところが受講者を募集すると、管理監督者は一人も来ず、新入社員などの若手ばかりが研修に集まりました。職場の若手が研修を受講後、教育の実践として、職場の不具合を改善し始めると、その職場の課長や作業長が後から来て、「これをすると歩留まりが良くなるのか」、「これをすると品質向上に繋がるのか」と、改めて質問をするのでした。一方、若手は受講したばかりでそう問われると即座に説明ができません。説明できないことはやらないということになってしまいます。職場への細かな根回しが不足でした。
 
 管理職はクリーン化は歩留まり向上活動だとの先入観があるので、そこを問う行動をしてしまうのです。自分がやってみて徐々にクリーン化の大切さを実感し、試行錯誤しながら身につけて行でくのが理想ですが、これでは現場の改善を止めてしまい、意欲を削いでしまうようなものです。
 

2.上層部から着手する理由

 管理監督者には、クリーン化は歩留まり向上活動だとの表面的な認識はあっても、具体的に何をどうするかということを深くは考えていません。歩留まり向上活動だという先入観からすぐに成果を求めてしまうのです。
 
 若手に対して、教育ではどんな話がされたのかを知らずに、また確認することもなく、色々質問してしまったり、持論を展開し教育内容とズレが生ずることで、若手がやろうとしたことが否定されたり、考え方に食い違いが出てきます。
 
 上層部がこういう状態だと上手く行きません。このことを教訓として、以降、教育実施時は、どこでも管理監督者から先に研修を受講してもらうようにしてきました。同じ研修でも管理監督者向けの内容として、一般者よりも先に受講してもらうことが重要です。そうすることで、両者の教育内容が一致し、活動自体に理解が得られます。
 

3.上層部の支援

 それから数年後、思いがけないことが起こりました。依頼された企業や社内の拠点では社長や役員が、そして本社機能の中でも役員が聴講してくれることが出て来ました。
 
 中でも感激したのは、私の赴任先の当時の社長が聴講してくれたことです。それだけでも感激しましたが、暫くしてもう一度聞きたいと言って受講してくれたことがありました。その時の感動は今でも覚えています。この社長はその後、社内、工場の巡回時の着眼点が出来たと言って良く巡回していました。安全も含め不具合を発見すると、私にも連絡があったり相談されることも多々ありました。こうなると段々工場も綺麗になり微小災害も減ってきます。
 
 こういう活動は直ぐに成果が出ないので、上層部の支援や、時には先頭に立って旗振りをしてもらうことで、活動の衰退を防ぐことが出来ます。この継続でクリーン化は経営に直結するということの理解が深まり、品質問題の市場流出防止、或いは安全確保の重要さなど多面的にその効果を見ることが出来ました。しかも先入観や昔からの聞き伝えを押し付けるのではなく、具体的に考え指導できると好評でした。
 
 ひとたび事故、災害が発生すると相当の費用が発生するので経営を圧迫します。また度々事故が起きると、労働災害の観点で会社の信頼性も損なわれます。トップが受講してくれると、現場には直接関係ないと思っていた部門の管理職も聴講してくれるようになり、それが下位の社員にまで広がります。このようなことで裾が広がり、社内での幅広い普及に繋がります。クリーン化活動も支援や理解を得られやり易いです。営業も売りのポイントとして紹介できます。
 
 今後クリーン化教育検討の企業では、上層部から着手することをお勧めします。理解者や味方が増え現場活動の支援にも繋がります。クリーン化は企業の業績に直結すると言われるように、利益追求の手段ですから、現場だけがやればよいという考えが払拭されます。
 

4.クリーン化を通じた人財育成

 繰り返しになりますが、クリーン化の...
 クリーン化「経営者・管理監督者からクリーン化教育を開始する」とは、その意味するところを体験事例から解説します。
 

1.教育の階層別順序

 私にはこんな苦い経験があります。クリーン化活動に本格的に着手しはじめた、もう30年以上も前のことです。当時、現場を毎日巡回し、納得が出来なければ休日にも出社、徹底的な清掃と、絞り込んだ現場の観察をしていました。
 
 特に、「昔からこう言われている」という事象などは、本当なのかと疑い、実験とデータ確認をして検証しました。休日は交代勤務の作業者以外が不在のため、冷静に納得出来るまで集中して仕事が出来ます。その過程でクリーン化の重要さを実感することが日々増大しました。
 
 そこで、クリーン化の理解やその重要さを広く訴えようと、品質情報や各種資料を集め、手作りの教科書で広報教育を始めました。社内クリーン化教育を立ち上げた頃です。事前にすべての製造課長に説明し、また各職場の管理者である作業長(職長)にも協力や了解を得ました。良いことだと快い反応だったので、この根回しで味方が出来たと思い込んでいました。
 
 ところが受講者を募集すると、管理監督者は一人も来ず、新入社員などの若手ばかりが研修に集まりました。職場の若手が研修を受講後、教育の実践として、職場の不具合を改善し始めると、その職場の課長や作業長が後から来て、「これをすると歩留まりが良くなるのか」、「これをすると品質向上に繋がるのか」と、改めて質問をするのでした。一方、若手は受講したばかりでそう問われると即座に説明ができません。説明できないことはやらないということになってしまいます。職場への細かな根回しが不足でした。
 
 管理職はクリーン化は歩留まり向上活動だとの先入観があるので、そこを問う行動をしてしまうのです。自分がやってみて徐々にクリーン化の大切さを実感し、試行錯誤しながら身につけて行でくのが理想ですが、これでは現場の改善を止めてしまい、意欲を削いでしまうようなものです。
 

2.上層部から着手する理由

 管理監督者には、クリーン化は歩留まり向上活動だとの表面的な認識はあっても、具体的に何をどうするかということを深くは考えていません。歩留まり向上活動だという先入観からすぐに成果を求めてしまうのです。
 
 若手に対して、教育ではどんな話がされたのかを知らずに、また確認することもなく、色々質問してしまったり、持論を展開し教育内容とズレが生ずることで、若手がやろうとしたことが否定されたり、考え方に食い違いが出てきます。
 
 上層部がこういう状態だと上手く行きません。このことを教訓として、以降、教育実施時は、どこでも管理監督者から先に研修を受講してもらうようにしてきました。同じ研修でも管理監督者向けの内容として、一般者よりも先に受講してもらうことが重要です。そうすることで、両者の教育内容が一致し、活動自体に理解が得られます。
 

3.上層部の支援

 それから数年後、思いがけないことが起こりました。依頼された企業や社内の拠点では社長や役員が、そして本社機能の中でも役員が聴講してくれることが出て来ました。
 
 中でも感激したのは、私の赴任先の当時の社長が聴講してくれたことです。それだけでも感激しましたが、暫くしてもう一度聞きたいと言って受講してくれたことがありました。その時の感動は今でも覚えています。この社長はその後、社内、工場の巡回時の着眼点が出来たと言って良く巡回していました。安全も含め不具合を発見すると、私にも連絡があったり相談されることも多々ありました。こうなると段々工場も綺麗になり微小災害も減ってきます。
 
 こういう活動は直ぐに成果が出ないので、上層部の支援や、時には先頭に立って旗振りをしてもらうことで、活動の衰退を防ぐことが出来ます。この継続でクリーン化は経営に直結するということの理解が深まり、品質問題の市場流出防止、或いは安全確保の重要さなど多面的にその効果を見ることが出来ました。しかも先入観や昔からの聞き伝えを押し付けるのではなく、具体的に考え指導できると好評でした。
 
 ひとたび事故、災害が発生すると相当の費用が発生するので経営を圧迫します。また度々事故が起きると、労働災害の観点で会社の信頼性も損なわれます。トップが受講してくれると、現場には直接関係ないと思っていた部門の管理職も聴講してくれるようになり、それが下位の社員にまで広がります。このようなことで裾が広がり、社内での幅広い普及に繋がります。クリーン化活動も支援や理解を得られやり易いです。営業も売りのポイントとして紹介できます。
 
 今後クリーン化教育検討の企業では、上層部から着手することをお勧めします。理解者や味方が増え現場活動の支援にも繋がります。クリーン化は企業の業績に直結すると言われるように、利益追求の手段ですから、現場だけがやればよいという考えが払拭されます。
 

4.クリーン化を通じた人財育成

 繰り返しになりますが、クリーン化の成果、効果は一朝一夕には得られないので、上層部の方も成果をすぐに要求するのではなく、長い目で育てて下さい。そのためには上層部の支援も重要です。
 
 在職中は、国内、海外および取引先様のクリーン化教育や現場指導も数え切れないほど実施してきました。現場で拾った事例も内容に含め、生きた教育の場になるよう努めてきました。教育終了時アンケートを記入してもらい、その声を集め軌道修正したり、その企業、職種の身近な事例を多く紹介するなど充実を図ってきました。身近な例を紹介することで、人ごとではなく自分の問題として捉えるようになります。
 
 アンケートは講師の評価でもありますが、参考にすべき点も多いので単に教育をするという一方向でなく、両者の学ぶ場になります。充実した教育にするには、絶えず工夫、改善し新鮮さを維持することが大切です。これで効率的な浸透ができるだけでなく、自らの勉強の場になります。教えるという上から目線ではなく、自分も学ばせてもらい、そこで自分の思いを伝えられることは最高の喜びです。
 

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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