日本ものづくり体質への提言

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 筆者は海外、特に東南アジアのものづくり現場を頻繁に指導して来ました。また、個人的には、趣味としての陸上競技でも、アジア大会などに出かけ、選手だけでなく、街中に飛び出し、一般市民の方とも接触する機会を積極的作って来ました。そのたびごとに感じるのは、アジアの人達が急激に伸びていると言うことです。 非常に勉強熱心で、国によっては、日本に追いつけ、追い越せと言うところも多いです。

 こんなこともありました。東南アジアの拠点などから、企業体質の向上、従業員の質・レベルの向上等を目的に呼ばれた例です。行って見ると、呼ばれるところほど工場は綺麗に管理されていて、日本のものづくり現場に見せてやりたいと思うほど感動する場合もあります。

 しかもそれに満足せず、さらに上を目指そうと言う挑戦する意欲、向上心がすごいところです。

 そこで、「綺麗に管理されています。私も勉強になりました」と言って帰って来るわけには行きません。なぜなら、出張費や指導費用は先方が払っているからです。「貴方の勉強の為に呼んだのではありません。それなら費用返して下さい」と言われてしまいますから、さらに高いレベルの指導をすることになります。するとまた一生懸命に勉強しますので、更に成長します。

 こうなると日本と逆転をした、日本が遅れを取っている。あるいはその差が益々広がると言う危機感を感じるわけです。昔は、現地で選抜され、日本に派遣されると箔が付いた訳ですが、最近では、日本に勉強に派遣されて来ても、日本のレベルはそんなに高くないとか、勉強になることが少ないと言う感想を聞かれることも出て来ました。

 そろそろ私たちが日本に指導に行く時代が来ましたね、とも言われることがあります。その日本は、危機意識が薄いと感じていますし、いまだに東南アジアを上から目線で見ています。このことに早く気づき、改めないといけないですね。現場改善のお手伝いをしながら、こんな危機感も伝えています。

 これらのやり取りの間に入って感じることは、日本のものづくりの工場が、東南アジアに移って行く、いわゆる国内空洞化が加速していると言うこと。それに伴い、日本に古くからあったものづくりの心、精神までもが、一緒に行ってしまったのではないか、消滅してしまったのではないかと思う時もあります。

 つまり、日本のものづくり現場では、“心の空洞化”も始まっていると感じています。現場改善のお手伝いをさせていただきながら、このことにも歯止めをしたいと考えています。

  現在、アベノミクス、オリンピック景気等と日本の経済は上向きはじめています。しかし、各企業のものづくり現場の体質が強くなったわけではありません。景気が悪くなると、クリーン化活動、QCサークル活動、TPM活動など様々な現場の活動が制限されるケースが多いようです。特に、成果主義が強調されるところでは、その傾向があります。

 これらの活動は、本来は、企業の利益をどう追求するかと言う共通した活動であり、現場の体質強化には必要ですが、地味に地道にやる活動であり、成果がすぐに見えない故に制限される訳です。これにはTOP層の理解・支援が重要になって来ます。

 現在は景気が上向きになって来ていますから、企業もこれからゆとりが出て来ると思います。この機会を捉え、現場の体質をもう一度見直し、強化して行きたいものです。アベノミクスやオリンピック景気と言う薬が切れても、元気な会社であり続けるために。

 

 さて、今までの経験から得た沢山の事例も盛り込み、昨年11月に、“日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!”と言う題で出版した本の中に、前述したものづくりへの思いを込めました。副題は、...

 

 筆者は海外、特に東南アジアのものづくり現場を頻繁に指導して来ました。また、個人的には、趣味としての陸上競技でも、アジア大会などに出かけ、選手だけでなく、街中に飛び出し、一般市民の方とも接触する機会を積極的作って来ました。そのたびごとに感じるのは、アジアの人達が急激に伸びていると言うことです。 非常に勉強熱心で、国によっては、日本に追いつけ、追い越せと言うところも多いです。

 こんなこともありました。東南アジアの拠点などから、企業体質の向上、従業員の質・レベルの向上等を目的に呼ばれた例です。行って見ると、呼ばれるところほど工場は綺麗に管理されていて、日本のものづくり現場に見せてやりたいと思うほど感動する場合もあります。

 しかもそれに満足せず、さらに上を目指そうと言う挑戦する意欲、向上心がすごいところです。

 そこで、「綺麗に管理されています。私も勉強になりました」と言って帰って来るわけには行きません。なぜなら、出張費や指導費用は先方が払っているからです。「貴方の勉強の為に呼んだのではありません。それなら費用返して下さい」と言われてしまいますから、さらに高いレベルの指導をすることになります。するとまた一生懸命に勉強しますので、更に成長します。

 こうなると日本と逆転をした、日本が遅れを取っている。あるいはその差が益々広がると言う危機感を感じるわけです。昔は、現地で選抜され、日本に派遣されると箔が付いた訳ですが、最近では、日本に勉強に派遣されて来ても、日本のレベルはそんなに高くないとか、勉強になることが少ないと言う感想を聞かれることも出て来ました。

 そろそろ私たちが日本に指導に行く時代が来ましたね、とも言われることがあります。その日本は、危機意識が薄いと感じていますし、いまだに東南アジアを上から目線で見ています。このことに早く気づき、改めないといけないですね。現場改善のお手伝いをしながら、こんな危機感も伝えています。

 これらのやり取りの間に入って感じることは、日本のものづくりの工場が、東南アジアに移って行く、いわゆる国内空洞化が加速していると言うこと。それに伴い、日本に古くからあったものづくりの心、精神までもが、一緒に行ってしまったのではないか、消滅してしまったのではないかと思う時もあります。

 つまり、日本のものづくり現場では、“心の空洞化”も始まっていると感じています。現場改善のお手伝いをさせていただきながら、このことにも歯止めをしたいと考えています。

  現在、アベノミクス、オリンピック景気等と日本の経済は上向きはじめています。しかし、各企業のものづくり現場の体質が強くなったわけではありません。景気が悪くなると、クリーン化活動、QCサークル活動、TPM活動など様々な現場の活動が制限されるケースが多いようです。特に、成果主義が強調されるところでは、その傾向があります。

 これらの活動は、本来は、企業の利益をどう追求するかと言う共通した活動であり、現場の体質強化には必要ですが、地味に地道にやる活動であり、成果がすぐに見えない故に制限される訳です。これにはTOP層の理解・支援が重要になって来ます。

 現在は景気が上向きになって来ていますから、企業もこれからゆとりが出て来ると思います。この機会を捉え、現場の体質をもう一度見直し、強化して行きたいものです。アベノミクスやオリンピック景気と言う薬が切れても、元気な会社であり続けるために。

 

 さて、今までの経験から得た沢山の事例も盛り込み、昨年11月に、“日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!”と言う題で出版した本の中に、前述したものづくりへの思いを込めました。副題は、“生き残りをかけ、強い体質のものづくり現場を作ろう”です。この本は、経営者の方では、ビジネス書としてお読みいただいている方もいらっしゃいます。

 また、管理監督者やクリーン化担当だけでなく、技術、品質部門の方、あるいはものづくり現場の事が理解し易いので、大学の理工系の方、そして人財育成の部分もありますので、教育者と言う立場の方にもお読みいただきたいと思い、平易な表現で、しかも事例を沢山盛り込みました。ご参考になれば幸いです。

 私のたった一つの思いは、日本のものづくり企業の体質を強くしたい そしてその活動に関わっていたいです。ものづくり企業の現場体質の改善、強化のお手伝いができるなら、日本の国内、どこへでも出かけて行く所存です。お気軽にお声掛けください。

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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