先使用権 知財経営の実践(その12)

 
  
 

1. 知財の持つ価値

 
 知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営においては、常に意識しましょう。知財経営が有効となるのは、技術が自分の会社の強みとなる場合です。自社の強みを分析してみることが必要です。強みが技術にある場合は、知財戦略を考えてみましょう。
 

2. 知財経営:先使用権を確保しておく

 
 技術をノウハウとして保護していた場合は、他社が特許取得する可能性があります。この場合、自社でその技術を使用できなくなります。もし、自社でその技術を使用できなくなれば、製品や製造設備の差し止めによる廃棄をしなければならないこともあります。特許出願があることを知らないで、その技術を使用していた善意の事業者(先使用者)に酷なことです。また、産業政策上好ましくありません。
 

3. 知財経営:先使用権

 
 特許出願があることを知らないで、その技術を使用していた善意の事業者(先使用者)は、一定の条件のもとで、そのままの技術を使用することが認められます。
 
 これが、「先使用権」です。「先使用権」は当然のものとして与えられる権利ではありません。そこで、このような場合に備えてその技術を他社の特許出願前から実施あるいは実施の準備をしていたことを証明できる証拠を検討しておく(先使用権の確保)必要があります。
 
 

4. 知財経営:公証制度の利用

 
 技術をノウハウとして保護していた場合、先使用権をどのように確保しておけばよいのでしょうか。先使用権の主張が可能なように、その技術の存在を証明する手段として、公証人役場を利用することがあります。ノウハウの技術について公証制度を利用して確定日付を取得して先使用権を確保します。
 
 ノウハウの技術について、他社の特許出願前に実施していたあるいは実施の準備をしていた証拠書類を準備します。他社の特許出願の内容を知らずに発明したことの証拠を準備します。これらの書類を定期的にまとめて封筒等に入れ、公証役場で確定日付をもらい所定の期間保管します。これは事実実験公正証書と言われています。
 
 事実実験公正証書は、20年間公証人役場に保存されるため、改ざんされることがありません最も証拠能力が高いものといわれています。公証役場での公証制度の利用については、行政書士など専門家に相談してみることがよいでしょう。中小企業が、ノウハウとして技術を保護するためには、発明の過程を記録しておく(ラボノート)の活用も必要です。また...
、実験設備や生産設備を内製化し、設備の発注先とは秘密保持契約を結びことも必要です〔3〕
 
 次回に続きます。
 
【参考文献】
〔1〕特許庁「中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006」(H19.3)
〔2〕「戦略的な知的財産管理に向けて{知財戦略事例集」(2007.4特許庁)
〔3〕先使用権制度の活用と実践(特許庁)
 
◆関連解説『技術マネジメントとは』

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