特許情報の見える化と解析で何が出来るのか

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知的財産マネジメント

♦提案可能な特許情報の見える化事例

 パテントマップソフトの使用などに代表される特許情報の見える化は、業界の技術情報とその動向を理解する上で非常に有用な方法です。しかし、過去の状況を把握しただけで、次に何をすべきかの提案が出来ないと、その効果は半減してしまいます。

 見える化の主な目的は、誰でも簡単に情報を共有でき、かつ課題を見つけやすくすることです。そして、その課題の方向性が次の提案、言い換えれば、次に何をすべきかを見つける重要な手掛かりになってきます。特許情報の見える化事例では、次の8点の提案が可能です。

(1) 業界、競合や顧客の方向性

 業界のトレンドが何であるか、競合がどの様な武器(技術)で顧客にアプローチしているのか。そして、顧客の興味ある方向(課題)は何であるかなどを把握でき、それらの状況を総合的に勘案して、次の方向性を提案できます。

(2) 研究開発段階(黎明期)での方向性

 各社の研究開発段階においては、まだ絞り込むべき市場が決まっていない場合もあります。ただし、業界のトップクラスを走る企業や大学の研究開発は、狙うべきターゲットの情報を持っている場合が多く、それを解析することで次の成長段階の進路を読み取ることが可能です。

(3) 特許からみる各社固有の手順、癖やパターン

 化学系の企業の場合、特許明細書中で重要な位置を占めるのが、実施例です。この実施例を解析することで、発明者や会社の癖、パターンを読み取ることができ、次にどのような実験を行ってくるのか予想できる場合があります。解析による先回りの発明によって特許出願を先行させ、他社の特許網構築に楔(くさび)を打つ事が可能です。

(4) 外国出願による重要投資技術

 出願されている特許が外国出願したファミリーを持つ場合、その特許は出願人にとってビジネス上重要なものである場合が多いといえます。外国出願は国内出願に比べてかなり費用がかかるため、一種の投資に相当します。そうした費用をかけてまで、その発明を外国で出願する理由がみえてきます。

(5) 各社間の繋がり

 企業同士、あるいは大学と企業が共同出願している場合、そこにはオープン戦略としての事業戦略が表れます。研究開発の結果としての共同出願内容が、どのような意図を目的としたものなのかを知ることで、狙うべき次の一手を予測することが可能です。

(6) 各社の得意分野(強み)

 各社にはコア技術(群)といわれるものがあり、その技術をどのように生かして市場展開していくのかを見ることが可能です。この解析は、前述した共同研究の際には不足分を補完するためだけでなく、M&Aの際には、候補者を選定する指標にもなります。

(7) 重要特許、基本特許

 業界に影響を与える支配的な他社特許がどれなのかなどを被引用特許の解析によって抽出することが可能です。これによって...

知的財産マネジメント

♦提案可能な特許情報の見える化事例

 パテントマップソフトの使用などに代表される特許情報の見える化は、業界の技術情報とその動向を理解する上で非常に有用な方法です。しかし、過去の状況を把握しただけで、次に何をすべきかの提案が出来ないと、その効果は半減してしまいます。

 見える化の主な目的は、誰でも簡単に情報を共有でき、かつ課題を見つけやすくすることです。そして、その課題の方向性が次の提案、言い換えれば、次に何をすべきかを見つける重要な手掛かりになってきます。特許情報の見える化事例では、次の8点の提案が可能です。

(1) 業界、競合や顧客の方向性

 業界のトレンドが何であるか、競合がどの様な武器(技術)で顧客にアプローチしているのか。そして、顧客の興味ある方向(課題)は何であるかなどを把握でき、それらの状況を総合的に勘案して、次の方向性を提案できます。

(2) 研究開発段階(黎明期)での方向性

 各社の研究開発段階においては、まだ絞り込むべき市場が決まっていない場合もあります。ただし、業界のトップクラスを走る企業や大学の研究開発は、狙うべきターゲットの情報を持っている場合が多く、それを解析することで次の成長段階の進路を読み取ることが可能です。

(3) 特許からみる各社固有の手順、癖やパターン

 化学系の企業の場合、特許明細書中で重要な位置を占めるのが、実施例です。この実施例を解析することで、発明者や会社の癖、パターンを読み取ることができ、次にどのような実験を行ってくるのか予想できる場合があります。解析による先回りの発明によって特許出願を先行させ、他社の特許網構築に楔(くさび)を打つ事が可能です。

(4) 外国出願による重要投資技術

 出願されている特許が外国出願したファミリーを持つ場合、その特許は出願人にとってビジネス上重要なものである場合が多いといえます。外国出願は国内出願に比べてかなり費用がかかるため、一種の投資に相当します。そうした費用をかけてまで、その発明を外国で出願する理由がみえてきます。

(5) 各社間の繋がり

 企業同士、あるいは大学と企業が共同出願している場合、そこにはオープン戦略としての事業戦略が表れます。研究開発の結果としての共同出願内容が、どのような意図を目的としたものなのかを知ることで、狙うべき次の一手を予測することが可能です。

(6) 各社の得意分野(強み)

 各社にはコア技術(群)といわれるものがあり、その技術をどのように生かして市場展開していくのかを見ることが可能です。この解析は、前述した共同研究の際には不足分を補完するためだけでなく、M&Aの際には、候補者を選定する指標にもなります。

(7) 重要特許、基本特許

 業界に影響を与える支配的な他社特許がどれなのかなどを被引用特許の解析によって抽出することが可能です。これによって、企業が次のアクションをする際のリスク排除の対象となります。その特許を潰すのか、買うのか、回避するのかなどの戦略の指標となります。また、自社の持つ特許が基本かつ重要である場合は、その特許をベースにしてどのように特許網の構築を図っていくかを考えることになります。

(8) 特許と自社製品との紐付

 自社特許と製品群との関連性を見える化することで、製品の特許権による保護状態が明確となります。特許情報は技術者のみならず、営業マンが営業する際のツールとしても幅広く特許情報解析は活用できます。

 

 【出典】八角様 HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

八角 克夫

化学技術・知的財産・情報の3つの柱のプロとして、お客様の課題解決や将来へ向けての提案をしていきたいと考えております。

化学技術・知的財産・情報の3つの柱のプロとして、お客様の課題解決や将来へ向けての提案をしていきたいと考えております。


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