紹介で次から次へと新規顧客が来店 CS経営(その30)

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◆なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか

 
 CSM
 

3. 利用者からの紹介で次から次へと新規顧客が来店:株式会社アンジュ

(3) 「サービスを受けるプロ」であるお客様の愚痴、不満に耳を傾ける

 1日の反省会は全員で行なう日々の活動ですが、一人ひとりのスタッフもお客様の一挙手一投足に目を向け、耳をすまし、お客様の心の動き、気配を察知できるよう努めています。スタッフのレベルを上げるため、先に挙げた「エチケットーマナー検定」「顧客満足、初級・中級検定」「気の実アカデミーの『気づき』『気くばり』『気づかい』の3つの。気と『臨機応変』『機転を利かす』の2つの資質を身につけるプログラムの受講」「実践的・クレーム対応研修」などにも積極的にトライし、理論と実践を積み重ねています。
 
 顧客は常に変化し、その変化もまた多岐にわたっており、日々、スタッフ自身が自らのスキルをブラッシュアップしなければ、時代の流れに追いつけないからです。ほとんどの顧客は常に変化し、前進しているので、うっかりすると顧客が先に行ってしまうのが恐ろしいと感じているからこその取り組みになっています。
 
 近年、美容業界に限らず、顧客は、以前に比べて、多くの情報、知識、教養を身につけています。そういった意味で、顧客は「サービスを受けるプロ」です。たとえば、飲食店でいえば、顧客は、日本はおろか世界各所の店を体験しています。体験件数、料理等の味において「体験のプロ」であり「食べるプロ」なのですが、店で働く人の多くは「提供するプロ」であっても、「顧客のプロ」状態には遠く及ばないのです。そのため、「顧客のプ口」に学ぶという姿勢が重要になってきます。どのような店にすべきか、どのような料理にすべきか、その答えは顧客が持っているからです。
 
 理・美容サロンにおいても、「提供するプロ」は、数々のサービスをいくつもの店舗において五感で体験している「サービスを受けるプロ」である顧客には敵わないのです。そのため、「提供するプロ」は「サービスを受けるプロ」に教えを請うべきなのです。
 
 他にも、1年に1回、顧客全体の変化を数値で知るために、「不満足度調査」を導入し、マイナス要素をより善くする「改善」、良い要素をさらに伸ばす「改良」、そして、「当社で初めて」「業界で初」「日本で初めて」「世界で最初」といった取り組みである「革新」を図り、常に顧客が求めるものは何か、顧客より先にキャッチすべく前進してきたのです。
 

(4) もはや80点では生き残れない

 理容店(床屋)は毎年すさまじい勢いで衰退、消滅の方向に進んできました。その主たる理由は、店を経営する経営者の高齢化、後継者不足、美容院に移行する人たちの増加、少子・高齢化による顧客数の減少、新しいビジネスモデル(10分1000円カットのみなど)の参入による低価格化などです。
 
 残念ながら、技術さえ磨けば顧客が増えるという錯覚を持ち続けてきたことも要因の一つといえるでしょう。顧客を人間として捉えずに、髪の処理を目的とした「処理型作業」と理解してしまい、「魅力的な顧客の創造が仕事」と考えてこなかったことも災いしているといえるでしょう。
 
 顧客から見た場合、技術レベルでの突出した改革・革新はほとんどあり得ず、これは、メーカーなどにも共通する「顧客の求めとのズレ」の代表例です。顧客が本当に求めている要素は、「技術レベル」そのものだけではなく、「満足」「幸せ感」「おもてなしの心」です。
 
 「不満足度調査」の結果を見れば明らかですが、目に余る劣悪な企業というのは現在、ほとんど存在していないのです。コモディティ化の影響もあり、平均点は80点くらいです。学校の試験の結果であれば上出来であるが、ビジネスの場合、他社と同じでは勝つことは難しいのです。すなわち、80点は世間相場であり、少しも自慢できる点数ではないのです。
 
 そして、残念なことに、床屋と呼ばれている理容店の点数は、美容サロンと比較しても、低レベルとなっています。世間相場と比較してもかなり点数が低いという状況です。
 
 Sleeping Barber Problemという言葉があります。「居眠り床屋問題」というやゆであり、「限られた人数の顧客が来店したあとは時間が空くので居眠りしている」という企業姿勢の負の要素を表現しています。
 
 一方、アンジュでは、日常活動の中で、先に記したように、スタッフ一人ひとりが全身全霊を傾けて、「一体、顧客は何を無意識のうちに求めているのだろうか」という気持ちで働いています。そういった気持ちが、たとえば、「夫と一緒に来たいけど男性はダメよね」「娘も一緒に行きたいって言っているけど、エステやネイルはやってないわよね」という声を聞いてすぐに実現するというフットワークの軽さにつながり、顧客に支持されるのです。
 
 これが、冒頭で列記したような多種多様なサービスを展開している背景です。今までとかく「シャンプー担当」「カット担当」といった分業化、業種にこだわり、特化してきたことが、かえって顧客の離反を招いていたのです。顧客は、できれば一人の担当者にシャンプー、カット、仕上がりまで、シームレスの状態でやってほしいと思っているのです。しかし経営側、店側は効率化を図るために分業化したということです。
 
 そこにズレが存在するのです。ズレから生じる隙間が顧客の定着率の低さを生むのです。その点、アンジュは違う。「アンジュに行けばすべてが融合していて何でもできる」「一家でアンジュに行くのが楽しみ」「帰りに家族揃ってアンジュのエスプリアン(イタリー料理店)&ポルシェ(バー)に行こう!」となるのです。
 
 これはまさしく「ニュー・ビジネスモデル」であり、「ライフスタイルーサービス」であり、しかも簡単に真似のできない顧客の潜在ニーズに洽った付加価値創造の発展形態です。多様なプログラム、メニューを展開するには、各種のプログラム、メニューを全員が理解している必要があります。しかも、一人ひとりがいくつかの別の分野の仕事ができる「多能工」であり、関連する分野に関して豊富な知識を持つ優れた「職人」でなければならないのです。
 
 職工は一つの与えられた部分の作業者であり、職人は、一つの専門分野を持ち、そこに関連する周辺分野に取り組む資質も...
 

◆なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか

 
 CSM
 

3. 利用者からの紹介で次から次へと新規顧客が来店:株式会社アンジュ

(3) 「サービスを受けるプロ」であるお客様の愚痴、不満に耳を傾ける

 1日の反省会は全員で行なう日々の活動ですが、一人ひとりのスタッフもお客様の一挙手一投足に目を向け、耳をすまし、お客様の心の動き、気配を察知できるよう努めています。スタッフのレベルを上げるため、先に挙げた「エチケットーマナー検定」「顧客満足、初級・中級検定」「気の実アカデミーの『気づき』『気くばり』『気づかい』の3つの。気と『臨機応変』『機転を利かす』の2つの資質を身につけるプログラムの受講」「実践的・クレーム対応研修」などにも積極的にトライし、理論と実践を積み重ねています。
 
 顧客は常に変化し、その変化もまた多岐にわたっており、日々、スタッフ自身が自らのスキルをブラッシュアップしなければ、時代の流れに追いつけないからです。ほとんどの顧客は常に変化し、前進しているので、うっかりすると顧客が先に行ってしまうのが恐ろしいと感じているからこその取り組みになっています。
 
 近年、美容業界に限らず、顧客は、以前に比べて、多くの情報、知識、教養を身につけています。そういった意味で、顧客は「サービスを受けるプロ」です。たとえば、飲食店でいえば、顧客は、日本はおろか世界各所の店を体験しています。体験件数、料理等の味において「体験のプロ」であり「食べるプロ」なのですが、店で働く人の多くは「提供するプロ」であっても、「顧客のプロ」状態には遠く及ばないのです。そのため、「顧客のプ口」に学ぶという姿勢が重要になってきます。どのような店にすべきか、どのような料理にすべきか、その答えは顧客が持っているからです。
 
 理・美容サロンにおいても、「提供するプロ」は、数々のサービスをいくつもの店舗において五感で体験している「サービスを受けるプロ」である顧客には敵わないのです。そのため、「提供するプロ」は「サービスを受けるプロ」に教えを請うべきなのです。
 
 他にも、1年に1回、顧客全体の変化を数値で知るために、「不満足度調査」を導入し、マイナス要素をより善くする「改善」、良い要素をさらに伸ばす「改良」、そして、「当社で初めて」「業界で初」「日本で初めて」「世界で最初」といった取り組みである「革新」を図り、常に顧客が求めるものは何か、顧客より先にキャッチすべく前進してきたのです。
 

(4) もはや80点では生き残れない

 理容店(床屋)は毎年すさまじい勢いで衰退、消滅の方向に進んできました。その主たる理由は、店を経営する経営者の高齢化、後継者不足、美容院に移行する人たちの増加、少子・高齢化による顧客数の減少、新しいビジネスモデル(10分1000円カットのみなど)の参入による低価格化などです。
 
 残念ながら、技術さえ磨けば顧客が増えるという錯覚を持ち続けてきたことも要因の一つといえるでしょう。顧客を人間として捉えずに、髪の処理を目的とした「処理型作業」と理解してしまい、「魅力的な顧客の創造が仕事」と考えてこなかったことも災いしているといえるでしょう。
 
 顧客から見た場合、技術レベルでの突出した改革・革新はほとんどあり得ず、これは、メーカーなどにも共通する「顧客の求めとのズレ」の代表例です。顧客が本当に求めている要素は、「技術レベル」そのものだけではなく、「満足」「幸せ感」「おもてなしの心」です。
 
 「不満足度調査」の結果を見れば明らかですが、目に余る劣悪な企業というのは現在、ほとんど存在していないのです。コモディティ化の影響もあり、平均点は80点くらいです。学校の試験の結果であれば上出来であるが、ビジネスの場合、他社と同じでは勝つことは難しいのです。すなわち、80点は世間相場であり、少しも自慢できる点数ではないのです。
 
 そして、残念なことに、床屋と呼ばれている理容店の点数は、美容サロンと比較しても、低レベルとなっています。世間相場と比較してもかなり点数が低いという状況です。
 
 Sleeping Barber Problemという言葉があります。「居眠り床屋問題」というやゆであり、「限られた人数の顧客が来店したあとは時間が空くので居眠りしている」という企業姿勢の負の要素を表現しています。
 
 一方、アンジュでは、日常活動の中で、先に記したように、スタッフ一人ひとりが全身全霊を傾けて、「一体、顧客は何を無意識のうちに求めているのだろうか」という気持ちで働いています。そういった気持ちが、たとえば、「夫と一緒に来たいけど男性はダメよね」「娘も一緒に行きたいって言っているけど、エステやネイルはやってないわよね」という声を聞いてすぐに実現するというフットワークの軽さにつながり、顧客に支持されるのです。
 
 これが、冒頭で列記したような多種多様なサービスを展開している背景です。今までとかく「シャンプー担当」「カット担当」といった分業化、業種にこだわり、特化してきたことが、かえって顧客の離反を招いていたのです。顧客は、できれば一人の担当者にシャンプー、カット、仕上がりまで、シームレスの状態でやってほしいと思っているのです。しかし経営側、店側は効率化を図るために分業化したということです。
 
 そこにズレが存在するのです。ズレから生じる隙間が顧客の定着率の低さを生むのです。その点、アンジュは違う。「アンジュに行けばすべてが融合していて何でもできる」「一家でアンジュに行くのが楽しみ」「帰りに家族揃ってアンジュのエスプリアン(イタリー料理店)&ポルシェ(バー)に行こう!」となるのです。
 
 これはまさしく「ニュー・ビジネスモデル」であり、「ライフスタイルーサービス」であり、しかも簡単に真似のできない顧客の潜在ニーズに洽った付加価値創造の発展形態です。多様なプログラム、メニューを展開するには、各種のプログラム、メニューを全員が理解している必要があります。しかも、一人ひとりがいくつかの別の分野の仕事ができる「多能工」であり、関連する分野に関して豊富な知識を持つ優れた「職人」でなければならないのです。
 
 職工は一つの与えられた部分の作業者であり、職人は、一つの専門分野を持ち、そこに関連する周辺分野に取り組む資質も持っていることを意味しています。だからアンジュの場合は職人という表現を使用したのです。これこそが「メイクオーバー」であり、「融合」であり「糊代」を意味するのです。メイクオーバーとは、たとえばネイル(爪のお化粧)と、フェイシャル(顔のマッサージ)、美容とヘアスタイル、ウィッグとアイブロウ(眉)といったさまざまな組み合わせにより、印象がガラリと変わり、新たな顧客の魅力を創造するような変身をいうのです。多種多様なサービスを展開するというニュー・ビジネスモデルを構築することで、アンジュは自分自身の印象をガラリと変え、新たな魅力を創造した。まさしく「メイクオーバー」「変身」を遂げたのです。
 
 アンジュは、浦和駅東口店約300坪の全館施設の中は、すべてモノもサービスもフロアーごと、そしてそれらが全館で統合され、融合され、それぞれの分野を融合するための糊代に「日本流おもてなし」「気づき」「気くばり」「気づかい」に加え、「臨機応変」と「機転を利かす」により、そこで仕事をするスタッフは多能工として仕事の糊代役を果たし、ボーダレス化、シームレスの機能を担っているのです。だから地域の人々は、アンジュといえば「美の総合サロン」と捉えているのです。「あ、あのアンジュね」の一言がそれを表している。◯◯店という業種ではないのです。
 
 次回は、(4) お客様が喜び、その姿を見たスタッフも笑顔になる。から解説を続けます。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。


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