CS経営(その8)現場力を上げるには

◆なぜ、分業課・モジュール化は人間性を阻害するのか

 
 
CSM
 

3. 分業化、専門化が行き着く先

 乗用車の専門メーカーで、一生バンパーの研究を続ける人、一生バックミラーの技術の向上を追求する人など、限られた分野の専門家を育成する取り組みがあります。こうして1メーカーの中に延べ数百人、数千人、時には数万人といった単位の設計担当者が、それぞれの個別の設計に取り組むといった方法を採用する企業もあります。これは何を意味しているのでしょうか。
 
 たとえば、商品化するために要する部材・部品点数は、乗用車の場合、約2万点、航空機の場合は約300万点といわれている。だから一つひとつの部品に関する専門家を育成するとしたら、乱暴にいえば、個別の部品単位の設計だけでもそれだけの人数が必要になってしまうのです。しかも設計担当者が、誠実に、特化された分野における絞り込み、掘り下げ、研究を行なうという「独立性」を目指すと、設計品質・設計品質管理・設計品質保証・デザイン品質を追求する担当者・専門家がさらに増えることになってしまいます。
 
 ここで問題になることがあります。各担当者が他の専門化された設計について全く関わっていなければ、自分の担当が他の担当部門の仕事とどのように関わり、どのように影響を及ぼすのかがわからないということです。知らない者同士が設計した部品を接合し、組み合わせ、統合したとしたら、それぞれが単にくっついているだけで、部分にその特性があればあるほど各部品同士の接合、整合、統合において接点分だけ何らかの間が空くことになるでしょう。
 
 違和感のない使い勝手、温もり感、安心感、素直になじめる気持ち、いざという突発的な場合の安全・安心に関する融合した機能、利用者と心が通じ合うコミュニケーションが担保されているかどうかは不明です。なぜこのようなことを指摘するのかというと、これらが突発的な問題発生時の課題だからです。問題が発生するのは、単に部品の集まりだからです。弱い部分にしわ寄せがきて、そこが破壊、崩壊することはよくあることです。
 
 つまり全体の融合を図るコーディネーター、プロモーター、コミュニケーター、プロデューサーなどの存在がない限り、日本人が持つ「八百万の神」すなわち、木にも岩にも建物にも、箸にも茶碗にも神が宿るといった概念が融合しなくなり、単なる部材・部品がボルドーナット・接着剤・溶接でくっついた形だけの製品にしかならないからです。この場合の問題は、個と個、個と全体、全体と個の関係にあります。
 
  
CSM
  

4. 現場力を上げるには「融合」しかない:私たちは物事の5%しか知らない

 それでは「融合」をどのように理解するかですが、アトランダムにキーワードを挙げると以下のようになります。協調性、自由性、人間性、柔軟性、理解力、公平性、顧客志向、関連性、環境性、知恵、文化、普遍性、超越、客観力、概念把握力、適応力、汎用性、推察、阿吽の呼吸、気づき、気くばり、気づかい、臨機応変、機転を利かす、察知力、糊代、整合力、統合力、オーバーラッピングカ(集合知、感覚知など)
 
 バードービジネスースクールのジェラルドーザルトマン教授によると、物事を意思決定する際には、95%の明確に知覚していない要素が大きく関わっていて、知覚していて、それで意思決定したと思っていてもそれはわずかに5%だという。また、今から約36年前に85歳で亡くなったハンガリーー出身の物理化学者、社会科学者、哲学者であるマイケルーポランニーが唱えた「暗黙知」「境界条件・境界制御」、その後の「感覚的秩序」などは広くさまざまな分野の論理的展開の基盤になっています。
 
 IT、インターネットの普及が急ピッチに進行する中で、そうした分野と人間性・人間力との線引きが曖昧になってきましたが、いくら人工知能が進んだとしても、少なくとも道具として人間がどこまで使いこなせるかの問題として捉えておきたいのです。私見ですが、最終的には人と人との世界においては、人間の尊厳からしても「人間のロボット化」が幸せだとは思えません。
 
 次回は、5. 現場力を上げるには「融合」しかない:「技術第一主義」だけでは成果は上がらない。から解説を進めます。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

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