コストダウンに注力が及ぼす行き着く先とは CS経営(その15)

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前回のその14に続いて解説します。

◆本物の顧客満足の話をしよう

5.「不満足度調査」の実力 : ロスコストを撃て

 主として製品の不具合や顧客の不評を買うサービスで企業ブランドを失い、業績に多大な負の影響を及ぼしている例は多いのです。
 
 広告に惹かれて商品・サービスを購人した顧客が「口ほどにもない」「何だこの実態は!」「まるで顧客のことを考えてない……」とがっかりし、怒っています。
 
 顧客には「期待」→「経過」→「結果」の意識変化があります。期待以上の宣伝を行なうと、「大きな期待はずれを招く」ことになるのです。これではまるで逆効果です。
 
 たとえば、「新技術により製造した画期的な製品」という過度なレベルの広告・宣伝につられて顧客が購人したとしても、製品に不具合が発生したり、サービス面がまるでなっていなかったときには、マイナスのロコミが、広く、そして、強く伝播することになるのです。
 
 結果、見えないところで潜在顧客を失う。これでは、既存顧客、継続購入顧客も次回の購入を躊躇してしまうだろう。
 
 これは想像の話ではなく、実際にいくつもの製造業が「製造・発売即トラブル発生」の構図を抱えており、顧客を失い続けているというのが実態である。
 
 また、サービスと称して、消費者を一過性の低価格で誘い、その後継続購入が伴うと、また価格を上げるといった顧客をもてあそぶようなやり方をしている企業に対して、当然、顧客は腹を立てるのです。その後、プロの広告会社が広告によって魅力ある誘いをしても、顧客は二度と購入することはないでしょう。すなわち、皮肉なことに、売った分だけ顧客を失う活動に精を出している企業が存在するのです。
 
  CSM
 
 「子供が集めたくなる玩具」をシリーズで発表し、それで自社の商品を継続購入させるやり方。たとえば、子供向けの食品にこれを導入すると、子供たちはその食品がほしいわけではなく、玩具がほしくて親にねだります。親はジャンクフードは食べさせたくないが、玩具を集めた自慢話の輪に入れないと子供がかわいそうだから……といって仕方なく購入するようなやり方です。
 
 一度何かあったときには、親として子供をもてあそんだことを絶対に許さないでしょう。ましてや、その玩具を子供がなめたときに害のある物質を含んでいたり、けがをするようなことがあれば、怒り心頭です。事実、こんな会社が身近に存在するでしょう。
 
 ともあれコストを下げるために、そのような玩具を人件費の安い国で製造したなら、何らかのトラブルを引き起こす可能性は高いのです。結果、ちょっとしたコストダウンでは間に合わないほどの多大な金銭的損害を受けるのです。
 
 顧客が下す企業に対する罰です。たとえば新聞やTVなどのマスコミを通じての謝罪広告は、緊急の枠取りのためにとてつもない金額を要します。リコールで不良品を回収する、乗用車や機械などは無料修理を実施する、サービス担当者と称する修理・点検担当者は寝る間もなくその後追い作業に翻弄される。その作業の間は、サービスの本質である事前の点検などがおろそかになる。新製品発売即トラブルの繰り返しの構図が生まれるのです。
 
 これが継続するとサービス担当者のやる気が失せ、同様に営業担当者はお詫び行脚に明け暮れるのです。その間はいわゆる営業活動はストップしたまま。とくに営業パーソンは自分が大切なご縁を育んできた顧客に対して「当社の製品は発売即トラブルの連続だから、新製品が発売されたあと、しばらく様子を見てから売ろう」という心理に陥るのです。すると営業成績は上がらなくなります。
 
 まさに「悪魔のサイクル」に陥った状況といえます。自ら招く、後追い型のマイナスのコストが「ロスコスト」なのです。いずれにせよ、トップ層が命じ...
前回のその14に続いて解説します。

◆本物の顧客満足の話をしよう

5.「不満足度調査」の実力 : ロスコストを撃て

 主として製品の不具合や顧客の不評を買うサービスで企業ブランドを失い、業績に多大な負の影響を及ぼしている例は多いのです。
 
 広告に惹かれて商品・サービスを購人した顧客が「口ほどにもない」「何だこの実態は!」「まるで顧客のことを考えてない……」とがっかりし、怒っています。
 
 顧客には「期待」→「経過」→「結果」の意識変化があります。期待以上の宣伝を行なうと、「大きな期待はずれを招く」ことになるのです。これではまるで逆効果です。
 
 たとえば、「新技術により製造した画期的な製品」という過度なレベルの広告・宣伝につられて顧客が購人したとしても、製品に不具合が発生したり、サービス面がまるでなっていなかったときには、マイナスのロコミが、広く、そして、強く伝播することになるのです。
 
 結果、見えないところで潜在顧客を失う。これでは、既存顧客、継続購入顧客も次回の購入を躊躇してしまうだろう。
 
 これは想像の話ではなく、実際にいくつもの製造業が「製造・発売即トラブル発生」の構図を抱えており、顧客を失い続けているというのが実態である。
 
 また、サービスと称して、消費者を一過性の低価格で誘い、その後継続購入が伴うと、また価格を上げるといった顧客をもてあそぶようなやり方をしている企業に対して、当然、顧客は腹を立てるのです。その後、プロの広告会社が広告によって魅力ある誘いをしても、顧客は二度と購入することはないでしょう。すなわち、皮肉なことに、売った分だけ顧客を失う活動に精を出している企業が存在するのです。
 
  CSM
 
 「子供が集めたくなる玩具」をシリーズで発表し、それで自社の商品を継続購入させるやり方。たとえば、子供向けの食品にこれを導入すると、子供たちはその食品がほしいわけではなく、玩具がほしくて親にねだります。親はジャンクフードは食べさせたくないが、玩具を集めた自慢話の輪に入れないと子供がかわいそうだから……といって仕方なく購入するようなやり方です。
 
 一度何かあったときには、親として子供をもてあそんだことを絶対に許さないでしょう。ましてや、その玩具を子供がなめたときに害のある物質を含んでいたり、けがをするようなことがあれば、怒り心頭です。事実、こんな会社が身近に存在するでしょう。
 
 ともあれコストを下げるために、そのような玩具を人件費の安い国で製造したなら、何らかのトラブルを引き起こす可能性は高いのです。結果、ちょっとしたコストダウンでは間に合わないほどの多大な金銭的損害を受けるのです。
 
 顧客が下す企業に対する罰です。たとえば新聞やTVなどのマスコミを通じての謝罪広告は、緊急の枠取りのためにとてつもない金額を要します。リコールで不良品を回収する、乗用車や機械などは無料修理を実施する、サービス担当者と称する修理・点検担当者は寝る間もなくその後追い作業に翻弄される。その作業の間は、サービスの本質である事前の点検などがおろそかになる。新製品発売即トラブルの繰り返しの構図が生まれるのです。
 
 これが継続するとサービス担当者のやる気が失せ、同様に営業担当者はお詫び行脚に明け暮れるのです。その間はいわゆる営業活動はストップしたまま。とくに営業パーソンは自分が大切なご縁を育んできた顧客に対して「当社の製品は発売即トラブルの連続だから、新製品が発売されたあと、しばらく様子を見てから売ろう」という心理に陥るのです。すると営業成績は上がらなくなります。
 
 まさに「悪魔のサイクル」に陥った状況といえます。自ら招く、後追い型のマイナスのコストが「ロスコスト」なのです。いずれにせよ、トップ層が命じた「コストダウンに注力せよ」といった指示命令が及ぼす当然の行き着く先が「ロスコスト」なのです。本来のリーダーは次のように指示命令をすべきなのです。
 
●「コストを下げて、品質向上を達成しなさい」
●「スピードアップを図って、きめ細かく」
●「効率化を図って付加価値を創造しなさい」
 
 そして、本来のコストダウンは、次のようであるべきです。
 
●「知恵」と「工夫」と「技術力」によるものである
●「顧客にとっても、企業にとっても価値あるコスト」、これを「コスト品質」という
●「コスト品質」を基盤にして「魅力品質」を創造する(この「魅力品質」なる表現は積水化学工業が取り組んでいるテーマである)
 
 次回も、5.「不満足度調査」の実力:ロスコストを撃ての解説を続けます。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載 
 

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この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。


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