CSは一過性のブームではない CS経営(その11)

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 前回のサービスの現場崩壊(その10)に続いて解説します。
 

◆本物の顧客満足の話をしよう

1. そもそも顧客満足(CS)とは何か:CSは一過性のブームではない

「この時期にCSなんて甘っちょろいことを本気で思っているのか」
「CS・サービス向上にはコストがかかるから、今どきのテーマじゃない」
「企業理念? それよりは目先の売上・利益が重要!」
「CSは現場の取り組み。メーカー本社、サービス業本部は取り組まない活動だ」
「CSのブームはとっくに去った。今は何といってもコストダウン、コストカット」
「成果主義の時代にCS? 馬鹿なことを言ってんじゃないよ!」
「CSとは現場のエチケットーマナー向上活動のこと。マネジメントとの関係はない」
「CSの上位ランクがCSR、CSVだ」
 
 企業・組織内で日常的に語られている台詞の数々です。今さらあえていうほどのことではないのですが、商売の根本は「顧客」にあり、本質は、「業績=顧客の支持率」達成にあります。すなわち、すべての基盤にあるのは「顧客」「個客」です。購入するか、しないか、どの商品、サービスを選ぶか、どの企業、お店を選ぶかの意思決定は顧客にあり、企業・組織にはないのです。また、次のような言葉も聞こえてきます。
 
 「売上、利益等の業績は企業が創造している」
 「売上が上がらないのは営業担当者が稼いでこないからだ」
 「白い猫でも黒い猫でも鼠を捕る猫(よく稼ぐ)が良い猫だ」
 「コストダウンの目的は、株主と企業の利益向上のため」
 「すべての経費は企業が払っている。給料は社長が払っている」
 「M&Aは企業規模拡大、コストダウン、売上規模の向上のため」
 
 これらも先ほどと同様に本来はすべて顧客にその基があります。お客様の満足を得ずに成り立つ企業は世界中に一社も存在しないのです。どのような巨大企業であってもです。「CSのブームはとっくに去った」「成果主義の時代にCS?」「今さら顧客満足?」というのは、実際にはCSの本質を理解していない意見といえるでしょう。CSという表現を使用するかしないかにかかわらず、CSの本質は現在も、これからも、ビジネスの必須要素です。
 
  CSM
 
 CSは本来CSMを意味しています。CS(顧客満足)、CSM(CSを中核にした企業・全社・全組織の経済活動)のことです。ただし、CSはビジネス用語であり、日常生活において子供の躾に「おまえはCS度が不足している」などとは言わないでしょう。ビジネスとなると、大切なことは売上、利益を得ることとなりますが、これは「顧客満足」、顧客に対する「幸せ提供」によって得るものです。
 
 ちなみに、企業の水道光熱費、備品什器、家賃、商品・サービスの原材料などの諸経費はすべて顧客が支払ってくれているのです。給料だって顧客が払ってくれている。社長が支払っているわけではないのです。
 
 顧客が当該企業に関わる商品・サービスの購入をしなければ、世界中のどの企業も、どんな大企業だって成り立たないのです。あなたが働く企業も例外ではないはずです。もう少しいうと、業績が低迷ないしは下降線をたどっているのは、顧客が購入しない、お金を払ってくれないからで、景気が悪い、業界が振るわないせいではないのです。
 
 その証拠に同じ環境に身を置き、同じ業界に存在しながら大きな業績をあげている企業がありますが、それはその企業の商品・サービスを顧客が購入しているからです。逆に「こんな会社、こんなお店、こんな商品、こんなサービスに誰がお金を払って購入するものか!」と、多くの顧客が思った企業は業績が振るわず、衰退、消滅の途をたどることになるのです。
 
 つまり、同業他社で売上、利益を確保し、成長している企業があるのは、顧客がお金を払って商品・サービスを頻繁に、しかも長期間継続して購入しているからであり、それは「業績=顧客の支持率」を達成している証拠でもあるのです。ただし、デジタルの分野で数字を動かして稼いでいる業務は、投機的な思惑が主流なので、必ずしも多くの顧客が商品・サービスを評価して購...
 
 前回のサービスの現場崩壊(その10)に続いて解説します。
 

◆本物の顧客満足の話をしよう

1. そもそも顧客満足(CS)とは何か:CSは一過性のブームではない

「この時期にCSなんて甘っちょろいことを本気で思っているのか」
「CS・サービス向上にはコストがかかるから、今どきのテーマじゃない」
「企業理念? それよりは目先の売上・利益が重要!」
「CSは現場の取り組み。メーカー本社、サービス業本部は取り組まない活動だ」
「CSのブームはとっくに去った。今は何といってもコストダウン、コストカット」
「成果主義の時代にCS? 馬鹿なことを言ってんじゃないよ!」
「CSとは現場のエチケットーマナー向上活動のこと。マネジメントとの関係はない」
「CSの上位ランクがCSR、CSVだ」
 
 企業・組織内で日常的に語られている台詞の数々です。今さらあえていうほどのことではないのですが、商売の根本は「顧客」にあり、本質は、「業績=顧客の支持率」達成にあります。すなわち、すべての基盤にあるのは「顧客」「個客」です。購入するか、しないか、どの商品、サービスを選ぶか、どの企業、お店を選ぶかの意思決定は顧客にあり、企業・組織にはないのです。また、次のような言葉も聞こえてきます。
 
 「売上、利益等の業績は企業が創造している」
 「売上が上がらないのは営業担当者が稼いでこないからだ」
 「白い猫でも黒い猫でも鼠を捕る猫(よく稼ぐ)が良い猫だ」
 「コストダウンの目的は、株主と企業の利益向上のため」
 「すべての経費は企業が払っている。給料は社長が払っている」
 「M&Aは企業規模拡大、コストダウン、売上規模の向上のため」
 
 これらも先ほどと同様に本来はすべて顧客にその基があります。お客様の満足を得ずに成り立つ企業は世界中に一社も存在しないのです。どのような巨大企業であってもです。「CSのブームはとっくに去った」「成果主義の時代にCS?」「今さら顧客満足?」というのは、実際にはCSの本質を理解していない意見といえるでしょう。CSという表現を使用するかしないかにかかわらず、CSの本質は現在も、これからも、ビジネスの必須要素です。
 
  CSM
 
 CSは本来CSMを意味しています。CS(顧客満足)、CSM(CSを中核にした企業・全社・全組織の経済活動)のことです。ただし、CSはビジネス用語であり、日常生活において子供の躾に「おまえはCS度が不足している」などとは言わないでしょう。ビジネスとなると、大切なことは売上、利益を得ることとなりますが、これは「顧客満足」、顧客に対する「幸せ提供」によって得るものです。
 
 ちなみに、企業の水道光熱費、備品什器、家賃、商品・サービスの原材料などの諸経費はすべて顧客が支払ってくれているのです。給料だって顧客が払ってくれている。社長が支払っているわけではないのです。
 
 顧客が当該企業に関わる商品・サービスの購入をしなければ、世界中のどの企業も、どんな大企業だって成り立たないのです。あなたが働く企業も例外ではないはずです。もう少しいうと、業績が低迷ないしは下降線をたどっているのは、顧客が購入しない、お金を払ってくれないからで、景気が悪い、業界が振るわないせいではないのです。
 
 その証拠に同じ環境に身を置き、同じ業界に存在しながら大きな業績をあげている企業がありますが、それはその企業の商品・サービスを顧客が購入しているからです。逆に「こんな会社、こんなお店、こんな商品、こんなサービスに誰がお金を払って購入するものか!」と、多くの顧客が思った企業は業績が振るわず、衰退、消滅の途をたどることになるのです。
 
 つまり、同業他社で売上、利益を確保し、成長している企業があるのは、顧客がお金を払って商品・サービスを頻繁に、しかも長期間継続して購入しているからであり、それは「業績=顧客の支持率」を達成している証拠でもあるのです。ただし、デジタルの分野で数字を動かして稼いでいる業務は、投機的な思惑が主流なので、必ずしも多くの顧客が商品・サービスを評価して購入しているということにはならないが、それでも、やはり評判の良くない企業は選ばないのが道理です。たとえば、株式の売買について見ると、顧客の意思が反映していることになるから、やはりCSと無関係ではないのです。
 
 私はCS・サービスなどの専門家だが、本当に顧客を大切にしているか、トップを筆頭に組織を挙げて心からそういった気持ちで取り組んでいるかどうかが重要だと、さまざまな観点からそれを伝えているのです。口先だけのCSやサービスを唱えているだけで、好業績をあげている企業はほとんど見当たらない。たとえあったとしても一過性の好業績です。どの企業を選ぶか、どの商品にするか、どの店舗に行くか、買うか、買わないか、お金を払うか、払わないかを決めるのはすべて顧客なのです。
 
 次回は、市場が縮小するときこそ、顧客を見よ、から解説を進めます。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。


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