プロジェクトリーダーの心得とは CS経営(その71)

投稿日

 
  CS
 

◆プロジェクトリーダーの心得:革新と融合、全ては顧客満足のために

1. そのプロジェクトは何を目指しているか

(1) なぜ、いつも結果が曖昧なのか

 読者の方々には、この連載で紹介した事例をもとに、ぜひ、本当の「顧客満足」実現を目指して下さい。その際、重要なのはプロジェクトを推進する力です。プロジェクトを引っ張るリーダーが必要です。ここではエピローグとして、プロジェクトリーダーについて触れてこの連載を締めくくります。
 
 プロジェクトを組んだはいいが、中途半端なままでうやむやになる。そんな経験のある方は多いのではないでしょうか。
 
 もちろん、レポート、提案書・企画書は必要ですが、それは文字による成果物に過ぎないのです。本当に大切なのは、その先の「実行」と「結果」です。実行と結果が伴わないプロジェクトは、単なるセレモニー、つじつま合わせとなり、「しゃんしゃん」という手拍子でなんとなく終わりを告げ、一杯やって解散です。そこから「革新」「融合」は生まれることがないのです。
 
 意外なことと思う方もいると思いますが、海外の場合、「全体最適」を良しとするケースが多く、その場合、結果についてはチーム全員で責任を負うことになります。
 
 一方、日本の場合は「個別最適」を良しとするチームが多く、その場合、個人個人が責任を負うことになります。
 
 どちらもメリット、デメリットがあり、本来はその双方のバランスが大切なのです。では、どのように「個別最適」と「全体最適」のバランスをとればいいのでしょうか。ここからは、成果を生むプロジェクトの要点について説明します。その際、組織には「目的」「リーダー」「境界線」「階層」「役割分担」があることを念頭に置いて読み進めて下さい。
 

(2) タテ、ヨコ、ナナメのプロジェクトチーム

 タテ軸とは、部門・部署ごとのプロジェクトチーム、そして、部門ごとのトップダウン体制を意味します。すなわち、営業、設計、開発、工場など個々の部門・部署内に編成した課題に取り組むチームのことです。
 
 張り切って冒険して、うまくいかなかったとき、会社からマイナス評価を受けるのは、部門長、リーダーです。リーダーはそれを嫌がります。また、チームを構成するメンバーも同様の意識を持つため、結果として、まあまあの結果を生む「改善レベル」に落ち着くことになるのです。改善レベルというのは、問題が発生してから取り組む後追い型、対処療法、マイナス要素を少し良くする取り組みなどを指します。つまり、穴埋め、修復、補修の類いです。これでは普通レベルであり、新たな価値は生まれないでしょう。
 
 ヨコ軸とは、企業・組織内において、別の部門・部署と共に取り組む「組織横断的プロジェクトチーム」のことを指します。この取り組みはいくつもの部門・部署との関連の中で課題に取り組むだけに、より顧客のニーズに近い形での解決が可能となります。これで、「改善」よりワンランク上の「改良レベル」の結果を生むことになるのです。
 
 では、ナナメ軸とは何でしょうか。それは、「立場を超えたチーム編成」のことです。ナナメ軸の場合、現場の担当者、中間管理者、上級管理者などが共に取り組むことになります。たいていの場合、その課題に一番詳しい人物がチームリーダーとなります。すなわち、現場担当者がリーダーになり、中間管理者がそれを支え...
 
  CS
 

◆プロジェクトリーダーの心得:革新と融合、全ては顧客満足のために

1. そのプロジェクトは何を目指しているか

(1) なぜ、いつも結果が曖昧なのか

 読者の方々には、この連載で紹介した事例をもとに、ぜひ、本当の「顧客満足」実現を目指して下さい。その際、重要なのはプロジェクトを推進する力です。プロジェクトを引っ張るリーダーが必要です。ここではエピローグとして、プロジェクトリーダーについて触れてこの連載を締めくくります。
 
 プロジェクトを組んだはいいが、中途半端なままでうやむやになる。そんな経験のある方は多いのではないでしょうか。
 
 もちろん、レポート、提案書・企画書は必要ですが、それは文字による成果物に過ぎないのです。本当に大切なのは、その先の「実行」と「結果」です。実行と結果が伴わないプロジェクトは、単なるセレモニー、つじつま合わせとなり、「しゃんしゃん」という手拍子でなんとなく終わりを告げ、一杯やって解散です。そこから「革新」「融合」は生まれることがないのです。
 
 意外なことと思う方もいると思いますが、海外の場合、「全体最適」を良しとするケースが多く、その場合、結果についてはチーム全員で責任を負うことになります。
 
 一方、日本の場合は「個別最適」を良しとするチームが多く、その場合、個人個人が責任を負うことになります。
 
 どちらもメリット、デメリットがあり、本来はその双方のバランスが大切なのです。では、どのように「個別最適」と「全体最適」のバランスをとればいいのでしょうか。ここからは、成果を生むプロジェクトの要点について説明します。その際、組織には「目的」「リーダー」「境界線」「階層」「役割分担」があることを念頭に置いて読み進めて下さい。
 

(2) タテ、ヨコ、ナナメのプロジェクトチーム

 タテ軸とは、部門・部署ごとのプロジェクトチーム、そして、部門ごとのトップダウン体制を意味します。すなわち、営業、設計、開発、工場など個々の部門・部署内に編成した課題に取り組むチームのことです。
 
 張り切って冒険して、うまくいかなかったとき、会社からマイナス評価を受けるのは、部門長、リーダーです。リーダーはそれを嫌がります。また、チームを構成するメンバーも同様の意識を持つため、結果として、まあまあの結果を生む「改善レベル」に落ち着くことになるのです。改善レベルというのは、問題が発生してから取り組む後追い型、対処療法、マイナス要素を少し良くする取り組みなどを指します。つまり、穴埋め、修復、補修の類いです。これでは普通レベルであり、新たな価値は生まれないでしょう。
 
 ヨコ軸とは、企業・組織内において、別の部門・部署と共に取り組む「組織横断的プロジェクトチーム」のことを指します。この取り組みはいくつもの部門・部署との関連の中で課題に取り組むだけに、より顧客のニーズに近い形での解決が可能となります。これで、「改善」よりワンランク上の「改良レベル」の結果を生むことになるのです。
 
 では、ナナメ軸とは何でしょうか。それは、「立場を超えたチーム編成」のことです。ナナメ軸の場合、現場の担当者、中間管理者、上級管理者などが共に取り組むことになります。たいていの場合、その課題に一番詳しい人物がチームリーダーとなります。すなわち、現場担当者がリーダーになり、中間管理者がそれを支え、さらにトップ層がサポートを行なうというスタイルです。ナナメ軸のプロジェクトでは、中・長期的な戦略に関わる「革新」的な要素がテーマとなることが多いのです。
 

(3) 他企業・組織とのプロジェクトチーム

 社外の企業・組織(産官学)とのプロジェクトチームの存在も重要です。社外の場合、組織内に比べて、相互の配慮や相互協力がより必要となるでしょう。自己主張しすぎると前には進まなくなるうえに、異分野・異業種・異業態の持つ特性が相乗効果を生まなくなる可能性すらあります。とくに、プロジェクトチームのリーダーは大きな責任が伴うだけに人格を含め相当な力量が求められます。
 
 次回に続きます。
 
【出典】武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
    筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。


「サービスマネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
コストダウンとロスコスト CS経営(その1)

◆なぜ、日本の現場で問題が多発しているのか 1. 「コストダウン」がもたらす惨事  食品の異物混入、食品偽装、食品衛生管理の手抜き、消費・賞味...

◆なぜ、日本の現場で問題が多発しているのか 1. 「コストダウン」がもたらす惨事  食品の異物混入、食品偽装、食品衛生管理の手抜き、消費・賞味...


不満顧客の存在 クレーム対応とは(その2)

       1. 顧客が腹を立てている   (2) ジョン・グッドマンの法則  ...

       1. 顧客が腹を立てている   (2) ジョン・グッドマンの法則  ...


「顧客満足度」の調査 顧客の声から顧客の価値へ(その5)

【顧客の声から顧客の価値へ、連載記事へのリンク】  ボイス・オブ・カスタマー  目的やゴールを達成するためのプロセス &nb...

【顧客の声から顧客の価値へ、連載記事へのリンク】  ボイス・オブ・カスタマー  目的やゴールを達成するためのプロセス &nb...


「サービスマネジメント一般」の活用事例

もっと見る
当たり前だけでは顧客満足は得られない お客様の満足を得る(その2)

◆ 物流の顧客満足度を知る  物流の顧客満足の観点では一般消費者からは幸か不幸かそれほどの期待値を抱かれているとはいえないのではないでしょうか。何故...

◆ 物流の顧客満足度を知る  物流の顧客満足の観点では一般消費者からは幸か不幸かそれほどの期待値を抱かれているとはいえないのではないでしょうか。何故...


顧客満足度ゼロとは お客様の満足を得る(その1)

◆ 物流の顧客満足度を知る  物流はあらゆる経済活動と関わりさまざまなお客様に貢献しています。では関係するお客様に対して満足のいく物流サービスを提供...

◆ 物流の顧客満足度を知る  物流はあらゆる経済活動と関わりさまざまなお客様に貢献しています。では関係するお客様に対して満足のいく物流サービスを提供...