オープンイノベーションの戦略性 研究テーマの多様な情報源(その16)

更新日

投稿日

 

オープンイノベーション戦略

 

1.オープンイノベーションが実行されない理由

 前回のその15続いて、解説します。米企業では、オープンイノベーションという概念は既に重要な手法として、すくなくともその重要性は経営の中で認識されている感があります。しかし、日本企業ではまだまだ、オープンイノベーションに市民権が与えられたとは言えません。もちろん大企業の一部には、オープンイノベーションの専任部隊を置く等の動きが数年前から見られますが、現実に企業の活動に貢献しているかというと、まだ掛け声だけに終わっているということが多いようです。

 なぜ日本企業において、オープンイノベーションが積極的に推進されないのでしょう?私は、明確な事業戦略・技術戦略の不在が大きな理由ではないかと思っています。信頼に足る戦略の不在は、日本企業において昔からの大きな課題であり、多くの企業の問題は、元を質せば戦略の不在という課題にあることは多いものです。しかし私自身、原因を安易に戦略の不在に求めることには大きな抵抗感があります。なぜなら、それを言うと他にもやるべきことがあるのに、戦略不在を理由にして思考停止になるという傾向が強いからです。しかし、ことオープンイノベーションが機能しない理由に関しては、この信頼に足る戦略の不在を挙げざるを得ません。
  

2.なぜ事業戦略の不在が原因なのか?

 ここで言う事業戦略は、事業ドメイン、すなわち自社が対象とする事業領域のことを意味しています。オープンイノベーションはオープンに(広く)、世界中の企業・研究機関・個人を対象にコミュニケーションしていこうという活動ですから、自社の対象とする事業ドメインが明確になっていなければ、対象の数は増大します。そうすると効果的なコミュニケーションを行おうと思えば、大きな時間、人員とコストが掛ります。オープンイノベーションは、外部に何か面白い技術やアイデアがあれば利用する、という消極的な活動ではありません。積極的に外部にアイデアや技術を求め、その結果最終的には収益に貢献するというものです。そのためには、オープンイノベーション活動の対象事業や製品領域を明らかにし、それらについて明確に焦点を当てた質的にも高度な活動が必要とされます。
  

3.技術戦略がオープンイノベーションの実行に必要とされる理由

 同様に、効果的なオープンイノベーションのためには、技術戦略、すなわち自社のコア技術の明確化が欠かせません。コア技術とは、将来に向けて、自社の事業・製品の差別化の拠り所とする技術です。そこには次の2つの理由があります。

(1)自社のコア技術を梃子に、オープンイノベーションを推進する

 オープンイノベーションは、自社にある何かと外部にある何かを組み合わせてイノベーションを起こそうとするものです。多くの場合、自社にある何かはコア技術...

 

オープンイノベーション戦略

 

1.オープンイノベーションが実行されない理由

 前回のその15続いて、解説します。米企業では、オープンイノベーションという概念は既に重要な手法として、すくなくともその重要性は経営の中で認識されている感があります。しかし、日本企業ではまだまだ、オープンイノベーションに市民権が与えられたとは言えません。もちろん大企業の一部には、オープンイノベーションの専任部隊を置く等の動きが数年前から見られますが、現実に企業の活動に貢献しているかというと、まだ掛け声だけに終わっているということが多いようです。

 なぜ日本企業において、オープンイノベーションが積極的に推進されないのでしょう?私は、明確な事業戦略・技術戦略の不在が大きな理由ではないかと思っています。信頼に足る戦略の不在は、日本企業において昔からの大きな課題であり、多くの企業の問題は、元を質せば戦略の不在という課題にあることは多いものです。しかし私自身、原因を安易に戦略の不在に求めることには大きな抵抗感があります。なぜなら、それを言うと他にもやるべきことがあるのに、戦略不在を理由にして思考停止になるという傾向が強いからです。しかし、ことオープンイノベーションが機能しない理由に関しては、この信頼に足る戦略の不在を挙げざるを得ません。
  

2.なぜ事業戦略の不在が原因なのか?

 ここで言う事業戦略は、事業ドメイン、すなわち自社が対象とする事業領域のことを意味しています。オープンイノベーションはオープンに(広く)、世界中の企業・研究機関・個人を対象にコミュニケーションしていこうという活動ですから、自社の対象とする事業ドメインが明確になっていなければ、対象の数は増大します。そうすると効果的なコミュニケーションを行おうと思えば、大きな時間、人員とコストが掛ります。オープンイノベーションは、外部に何か面白い技術やアイデアがあれば利用する、という消極的な活動ではありません。積極的に外部にアイデアや技術を求め、その結果最終的には収益に貢献するというものです。そのためには、オープンイノベーション活動の対象事業や製品領域を明らかにし、それらについて明確に焦点を当てた質的にも高度な活動が必要とされます。
  

3.技術戦略がオープンイノベーションの実行に必要とされる理由

 同様に、効果的なオープンイノベーションのためには、技術戦略、すなわち自社のコア技術の明確化が欠かせません。コア技術とは、将来に向けて、自社の事業・製品の差別化の拠り所とする技術です。そこには次の2つの理由があります。

(1)自社のコア技術を梃子に、オープンイノベーションを推進する

 オープンイノベーションは、自社にある何かと外部にある何かを組み合わせてイノベーションを起こそうとするものです。多くの場合、自社にある何かはコア技術です。だヵら、自社のコア技術を明確にする必要があるのです。例えば、3Mのカスタマーテクニカルセンターは、自社の技術(3Mのプラットフォーム技術)を外部に開示して、新たなテーマの可能性を探るための場です。

(2)コア技術の明確化により強化対象技術を明らかにする

 コア技術は未来に向けて強化・活用する技術です。つまり単に使うだけでなく、継続的な強化が必要です。通常コア技術は複数の要素技術から構成され、必ずしも全ての要素技術が自社に揃っている訳ではありません。自社にない場合にはオープンイノベーションを活用して、強化するということも可能です。この点からも自社のコア技術の明確化が必要なのです。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術はリスト化しておく 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その11)

        「技術戦略」および開発テーマを決定するための準備において、コア技術の決定が必要です。 &n...

        「技術戦略」および開発テーマを決定するための準備において、コア技術の決定が必要です。 &n...


商品開発はGive・Give・Give 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その68)

1、返報性の原理  今回は返報性の原理についてです。返報性の原理とは、人間の持つ心理の一つです。  人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返し...

1、返報性の原理  今回は返報性の原理についてです。返報性の原理とは、人間の持つ心理の一つです。  人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返し...


真の「デザイン」は、「設計」の概念!

1. デザイン重視の背景  例えば携帯電話の開発で、アップル、韓国LG電子、NEC、ソニーなどが、デザインを最優先する戦略をとり始めています。競合各社の...

1. デザイン重視の背景  例えば携帯電話の開発で、アップル、韓国LG電子、NEC、ソニーなどが、デザインを最優先する戦略をとり始めています。競合各社の...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
技術資源の有効活用: 事例紹介 (その2)

 TRM(Technology Resources Management)事例その2は、建築物の防食事業を営む企業の取り組みをご紹介いたします。   ...

 TRM(Technology Resources Management)事例その2は、建築物の防食事業を営む企業の取り組みをご紹介いたします。   ...


‐操作性改善‐ ‐修理情報活用‐  製品・技術開発力強化策の事例(その1)

1.機械の操作性の改善  自社の機械を購入してくれた顧客を訪問し、操作性について苦情を聞くことを中心に営業活動をしている機械メ-カがあります。多品種...

1.機械の操作性の改善  自社の機械を購入してくれた顧客を訪問し、操作性について苦情を聞くことを中心に営業活動をしている機械メ-カがあります。多品種...


R&Dの価値創造力を高めるシンプルツール、iMapとは、

 技術経営とは、「企業の経営資源である技術を経営戦略の中核に位置づけ、顧客価値の創造へ向けて、その獲得・強化・活用を戦略的に行うことにより、継続的な企業の...

 技術経営とは、「企業の経営資源である技術を経営戦略の中核に位置づけ、顧客価値の創造へ向けて、その獲得・強化・活用を戦略的に行うことにより、継続的な企業の...