既存コア技術強化のためのオープン・イノベーション 研究テーマの多様な情報源(その21)

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 1.コア技術(オープン・イノベーションの対象)

 
 コア技術(ある領域を対象に設定し、1つのコア技術は複数の要素技術群から構成される)とは自社の根幹の強みであり、今後とも自社の事業において様々な差別化製品を創出するなど、重要な強みとして利用していくものです。そのため、自社で強化すべきであり、外部技術を導入するべきではないと考え方もあるかもしれません。しかし、オープン・イノベーションにより外部から技術を導入することにより、単に新たな技術を獲得する他に、その技術を自社で利用することで、自社の技術の幅が広がり、そしてその技術に通暁するに従い、より技術を深化させ、最終的には自社のコア技術を強化することができます。
 

2.コア技術(動向を常にウォッチする体制)

 
 上記1により、、自社のコア技術を設定した後には、常にその分野の技術動向を継続的に調査する体制が必要になります。一度コア技術の分野で新たな要素技術の萌芽の動きが見られれば、対処法、すなわち自社で研究開発の対象とするのか、外部から導入するのかを決めなければなりません。その際、自社その分野の技術力以外に、対象技術の動向の確実性や時間軸も考慮して、Make or Buyの判断をしなければなりません。技術の選択肢が複数あれば、そのすべてが自社での展開が可能であっても、自社の経営資源には制約がある故、その一部は外部からもしくは外部との共同で研究開発するという方法が良いかもしれません。また、自社での対応が可能であっても、事業化の時期を考慮すると、時間を買うという意味で外部から導入という手段が適当かもしれません。
 

3.オープン・イノベーションを利用しての既存コア技術の強化の例:オリンパス

 
 オリンパスというとカメラや内視鏡など、高いレベルの精密光学技術を保有する企業として世でも有数の企業です。精密光学技術は、明確にオリンパスのコア技術です。しかし多様化する光学機器の顧客ニーズに対応するには、このコア技術分野についても継続的な強化、すなわち新たな要素技術の付加と深化が求められるようになっています。
 
 もちろんこの分野は、オリンパスの技術の本丸であり、世界でも有数の技術水準を保有していますが、その分野でオリンパスが最高のレベルに居続ける、居続けられるという保証は全くありません。なぜなら、世界中には、大学や研究機関を含め、オリンパスの何十倍、何百倍もの研究者が活動しており、コア技術を構成する要素技術において、オリンパスの独自の単独の研究開発により最先端を維持するということは、現実には不可能だからです。このような背景の下、オリンパスは全世界に対して、強化が必要な精密光学製品用の材料や加工技術、部品の技術に関するニーズを開示し、解決策の提案を募りました。
 
 その結果、合計95件の提案がインド、ブルガリア、中国など途上国を含め、世界21か国から提案が寄せられました。その...

 1.コア技術(オープン・イノベーションの対象)

 
 コア技術(ある領域を対象に設定し、1つのコア技術は複数の要素技術群から構成される)とは自社の根幹の強みであり、今後とも自社の事業において様々な差別化製品を創出するなど、重要な強みとして利用していくものです。そのため、自社で強化すべきであり、外部技術を導入するべきではないと考え方もあるかもしれません。しかし、オープン・イノベーションにより外部から技術を導入することにより、単に新たな技術を獲得する他に、その技術を自社で利用することで、自社の技術の幅が広がり、そしてその技術に通暁するに従い、より技術を深化させ、最終的には自社のコア技術を強化することができます。
 

2.コア技術(動向を常にウォッチする体制)

 
 上記1により、、自社のコア技術を設定した後には、常にその分野の技術動向を継続的に調査する体制が必要になります。一度コア技術の分野で新たな要素技術の萌芽の動きが見られれば、対処法、すなわち自社で研究開発の対象とするのか、外部から導入するのかを決めなければなりません。その際、自社その分野の技術力以外に、対象技術の動向の確実性や時間軸も考慮して、Make or Buyの判断をしなければなりません。技術の選択肢が複数あれば、そのすべてが自社での展開が可能であっても、自社の経営資源には制約がある故、その一部は外部からもしくは外部との共同で研究開発するという方法が良いかもしれません。また、自社での対応が可能であっても、事業化の時期を考慮すると、時間を買うという意味で外部から導入という手段が適当かもしれません。
 

3.オープン・イノベーションを利用しての既存コア技術の強化の例:オリンパス

 
 オリンパスというとカメラや内視鏡など、高いレベルの精密光学技術を保有する企業として世でも有数の企業です。精密光学技術は、明確にオリンパスのコア技術です。しかし多様化する光学機器の顧客ニーズに対応するには、このコア技術分野についても継続的な強化、すなわち新たな要素技術の付加と深化が求められるようになっています。
 
 もちろんこの分野は、オリンパスの技術の本丸であり、世界でも有数の技術水準を保有していますが、その分野でオリンパスが最高のレベルに居続ける、居続けられるという保証は全くありません。なぜなら、世界中には、大学や研究機関を含め、オリンパスの何十倍、何百倍もの研究者が活動しており、コア技術を構成する要素技術において、オリンパスの独自の単独の研究開発により最先端を維持するということは、現実には不可能だからです。このような背景の下、オリンパスは全世界に対して、強化が必要な精密光学製品用の材料や加工技術、部品の技術に関するニーズを開示し、解決策の提案を募りました。
 
 その結果、合計95件の提案がインド、ブルガリア、中国など途上国を含め、世界21か国から提案が寄せられました。その中には、開発が難しいと自社が断念していた技術の提案もふくまれ、結果的に5つの企業・機関と技術開発の検討を進めることとしました(出所:「諏訪暁彦のオープン・イノベーションのすすめ:日本企業にオープン・イノベーションは有効か?」(日経ビジネスオンライン 2009年3月12日)しかし、特にこの既存コア技術の強化は、既に自社が強い技術で、研究開発の担当者はその分野で高いプライドを持っています。そのため、オープン・イノベーションへの抵抗は大きいものです。根強い社内開発へのこだわりは、外部利用が難しい既存コア技術の強化につきものです。
 
 

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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