既存の重要顧客を分野軸で見る 研究テーマの多様な情報源(その6)

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 別稿で、既存の重要顧客について、時間軸を長くして見るという件を掲載しました。今回は分野軸で議論します。

 既存の重要顧客といえども、営業的な視点でしか付き合いできていない場合は多いのではないでしょうか?また、仮に顧客と深い関係を維持していると言っても、先方からの要求でそうなっているだけで(B2B製品の場合)、こちらから主体的にその顧客をより理解するという働きかけをしている企業は大変少なくないでしょうか?

 もちろん最終的に継続的な受注を目的とはするのですが、その目的に向けて革新的なテーマを創出するためにサプライヤーが自ら主体的に多面的に、顧客との関係性を活用するという姿勢が大変重要です。また、サプライヤーにとってその点は、未活用な意義の大きな経営資源ということもできます。分野軸でのコアのメッセージは、顧客をより広い視点で見ようというものです。

 重要な顧客といっても、通常は顧客の購買窓口や、せいぜい直接の要求元とコンタクトをしているにすぎません。目先の案件の情報を収集するという面では、それでもある程度は間に合いますが、顧客の情報を今後のテーマ創出に生かそうと思えば、それだけでは不十分です。

 他にも「既存の重要な顧客」の中や回りには、様々な関係者がいます。例えば、自社は顧客が顧客の製品に組み込む部品を提供しているとします。その場合直接の要求部門は顧客の設計部門ですから、そことは当然コンタクトを持ちます。しかし、将来のテーマの情報を収集しようと思えば、もっと川上の研究開発部門とコミュニケーションをとることが重要です。また、顧客製品を実際に作るのは生産部門ですので、生産部門は設計部門とは異なるニーズを持っているかもしれません。また顧客の製品が実際にフィールドに出た後にサポートを担当するサービス部門は、さらに別のニーズを持っているでしょう。

 そんなことは、本来顧客の設計部門の仕事であり、一サプライヤーが首を突っ込むべきでないという意見があるかもしれません。しかし、それは間違っています。通常組織は、自部門の都合を最優先するように機能します。したがって、顧客の設計部門が他部門のニーズを全て把握しているということは、現実にはありません。その点は自社のことを考えてもわかるでしょう。むしろ、しがらみのない外部の客観的な目で見た方が良いのです。

 そして顧客に関わる情報は、顧客の中だけにあるとは限りません。例えばB2B製品の場合には、顧客の先には必ず顧客の顧客がいます。顧客が顧客の顧客のことを全てわかっているということはありません。この点についても、一部品のサプライ...

 別稿で、既存の重要顧客について、時間軸を長くして見るという件を掲載しました。今回は分野軸で議論します。

 既存の重要顧客といえども、営業的な視点でしか付き合いできていない場合は多いのではないでしょうか?また、仮に顧客と深い関係を維持していると言っても、先方からの要求でそうなっているだけで(B2B製品の場合)、こちらから主体的にその顧客をより理解するという働きかけをしている企業は大変少なくないでしょうか?

 もちろん最終的に継続的な受注を目的とはするのですが、その目的に向けて革新的なテーマを創出するためにサプライヤーが自ら主体的に多面的に、顧客との関係性を活用するという姿勢が大変重要です。また、サプライヤーにとってその点は、未活用な意義の大きな経営資源ということもできます。分野軸でのコアのメッセージは、顧客をより広い視点で見ようというものです。

 重要な顧客といっても、通常は顧客の購買窓口や、せいぜい直接の要求元とコンタクトをしているにすぎません。目先の案件の情報を収集するという面では、それでもある程度は間に合いますが、顧客の情報を今後のテーマ創出に生かそうと思えば、それだけでは不十分です。

 他にも「既存の重要な顧客」の中や回りには、様々な関係者がいます。例えば、自社は顧客が顧客の製品に組み込む部品を提供しているとします。その場合直接の要求部門は顧客の設計部門ですから、そことは当然コンタクトを持ちます。しかし、将来のテーマの情報を収集しようと思えば、もっと川上の研究開発部門とコミュニケーションをとることが重要です。また、顧客製品を実際に作るのは生産部門ですので、生産部門は設計部門とは異なるニーズを持っているかもしれません。また顧客の製品が実際にフィールドに出た後にサポートを担当するサービス部門は、さらに別のニーズを持っているでしょう。

 そんなことは、本来顧客の設計部門の仕事であり、一サプライヤーが首を突っ込むべきでないという意見があるかもしれません。しかし、それは間違っています。通常組織は、自部門の都合を最優先するように機能します。したがって、顧客の設計部門が他部門のニーズを全て把握しているということは、現実にはありません。その点は自社のことを考えてもわかるでしょう。むしろ、しがらみのない外部の客観的な目で見た方が良いのです。

 そして顧客に関わる情報は、顧客の中だけにあるとは限りません。例えばB2B製品の場合には、顧客の先には必ず顧客の顧客がいます。顧客が顧客の顧客のことを全てわかっているということはありません。この点についても、一部品のサプライヤーが顧客の顧客のニーズなど把握しようがないと考えるかもしれません。しかしこの考えも誤りで、十分可能です。例えば、自転車部品メーカーのシマノは自転車メーカーではなく、顧客の顧客である自転車のユーザーに目を向け、自社製品である自転車部品を開発しています。

 さらに顧客は他の部品も、当然他の部品メーカーから購入しています。自社にとってもこれらの部品(補完部品)やそのサプライヤーについて知っておくことで、例えば、その補完部品の機能を組み込んだ部品を自社が提供し、それにより全体の占有スペースを小さくできる、組み立て工数を削減するという効果を提案できる可能性もあります。

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


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